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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
七章・「約定の大地」
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Regicide


 久しぶりの投稿です。


 外伝的な?


 あ、それと今日新作投稿しました。 

 それなりの自信作なので、是非ご一読ください。

  

 木漏れ日に、目が眩む。


 スピカという()()の瞳をそれまで満たしていた暗闇は、まるで夢のように掻き消え、やがてはその輪郭さえも思い出せなくなって。

 

「――アキラ様」


 そして、また今日もその名を――。



 □



 遡ること、惨劇の日の一ケ月前。


「……郷愁、ですかねぇ」


 四肢を途方もない倦怠感が支配する。

 パジャマ姿のまま、だらしなく屈折した。平素は張り詰めていた気迫も、今この瞬間だけは年相応のそれとなる……のかな。


 鏡ではしたないぼくの姿を目の当たりにしたことなんてないから正直定かじゃないけど、どうでもいいね、うん。

 

 しかし、何とも懐かしい夢を見た。

 

(そういえば、まだあの日から精々一ケ月しか経っていないんだね)


 あの日。

 孤独なぼくという少女が、あの方に魅入ってしまった、ある種の生誕日だ。瞼を閉じればあの至福に満たされた一時が色鮮やかに蘇った。


「あなたも、そうですか? ――「賢者」」


「……その名で呼ばないでくれる?」


「これは失敬」


 おどける仕草を、一見すると年端もいかない少女……ライムさんはぼくの自室を適当に徘徊しながら不愉快げに顔をしかめる。

 

 珍しいな。

 ライムさんは平時寡黙……というか、無頓着な人柄だ。彼女アキラ様以外に一切の興味感心を示さない。


 それはアキラ様の右腕的なぼくに対しても一貫していた。

 少なくとも、今日日までは。


「らしくないですね、ライムさん。……まあ、心境は理解できますが」


「はんっ。あんたには到底分かりやしないわよ、私の気持ちなんて……」


「…………」


 口では強気だが、力なく項垂れるその挙動は雄弁だ。

 一か月前に知り合った程度の仲だが、この子もアキラ様に負けず劣らず拗らせていることは明白だね。


 思わず微苦笑するぼくを、彼女はキッと睥睨する。


「ちょっと、なによその目」


「おっと。戯れはこれくらいにしときましょうか」


 この少女の場合、極端に不機嫌になれば、大真面目にここら一帯は更地になりそうなので、そうなる前に本題を切り込もうか。

 

「ライムさん。アキラ様の護衛は、どうしました?」


「……っ」


 ライムさんは本人の要望もあってアキラ様の警護を担っている。

 四六時中、それこそ仲睦まじいことに布団も一緒という徹底ぶりだ。小心者なぼくには到底できない豪胆さである。


 閑話休題。

 前述の通り、平素ライムさんはアキラ様の護身を務めている。だが、その下命が振り解かれる盤面は相応に存在する。


 たとえば件の事変の際に単独行動を敢行したり、時折ぼくとタッグを組むことも有る。


 そして、気難しく傍若無人なライムさんへ命令を下せる人物はこの世にたった一人しか居ない。


「……お兄ちゃんが、離れろって」


「やはり、ですか……」


「やっぱりって……あんた、お兄ちゃんに何があったのか知ってるの!?」


「まあまあ。そう急かさないで下さい」


 露骨に動揺するライムさんを諫め、ぼくは神妙な顔色で事の成り行きを語る。


「ライムさん。事変の終盤、アキラ様が一体全体、誰奴と会敵したか、記憶にありますか?」


「……ルイン」


「ええ。「厄龍」とか囃し立てられていたあの男です。神出鬼没な彼の純然な力量は、データが微少過ぎるが故に断定はできませんが……おそらく、当時のアキラ様ならば太刀打ちさえできない手合いであったと思います」


「何故?」


「彼は輪廻システムを掌握しています。ぼくたちがこうして魔術を行使できるのは輪廻システムが巡っているに他なりません」


 輪廻システムについて、ぼくが知り得ている情報は数少ない。


 業腹なことだが、精々魔術が魔術として稼働している主要因である程度しか獲得できていない。

 だが、それでもルインがそれを手中に収めているという確信は持てる。


 アキラ様の魔術は強力無比だな、されどそれは輪廻システムに依存した代物。起動するのも停止させるのも自由自在なルイン相手にはひどく無力だ。

  

「……ねぇ。そもそもの話、ルインはどうしてこんな迂遠な手順を踏んだの? その輪廻システムとやらを使えば、なんだってできるじゃない」


「それに関してはなんとも。アキラ様ならまだ知っているかもしれませんが……」


 あの状態だ。聞き出すことは至難の業だろう

 口が利けただけでも、まだマシだったのかもしれないね、ライムさん。

 

「……話を戻しますよ。ともかく、今重要なのはアキラ様が隔絶した「厄龍」から如何なる手段を以て生存したのか、です」


「お兄ちゃんなら、普通に生き延びれそうだけど……」


「まあ、気持ちは分かりますよ。……ですが、生身では無理でしょうね」


「……」


「あの方単独では到底それは成し得ません。ならば、こう考えるのはどうでしょうか。――アキラ様は、()()()()()


「っ!」


 如何して?

 単純で明解な話だ。そうすることで、ルインになんらかの利潤が生じるのだ。


「これらは推測の域を遺脱しませんが……アキラ様が豹変したのは、ルインとの接触が起因しているかと」


「……成程ねぇ」


 納得し首肯する反面、彼女の顔色は依然優れない。

 

「あくまでも、これは幾多もの可能性の、その一端でしかないです。信じるか否かはあなた次第です」


「……気に留めておくわ」


「それは、重畳。……ですが、これはあくまでも大前提。これから相談すべきは、これからのについてです」


「――――」


 戦場のような、そんな緊迫感が身を包んだ。

 

「ライムさん、単刀直入に問いますが……今のアキラ様、どう思われます?」


「……とんだ、変わり様だったわ。元々お兄ちゃんは怜悧な人柄だったけど、今はそれ以上だわ。悪魔とさえ、いえる」


「あの調子ならば、沙織さんも平然と殺害しそうですね」


「……ええ」


 沙織という少女は、ライムさんにとって天敵のような存在だ。そんな彼女さえも無力であると、そう明言され、消沈するライムさん。

 罪悪感が沸き上がるが、何とかそれを堪えた。


「それが、アキラ様が切願するのならばぼくたちは地獄の果てだろうとその背中を追い続ける義務がある。だが、もはや今のアキラ様はアキラ様じゃない」


「……まさかっ」


「ええ。そのまさかですよ」


 これ以上、悪辣な輩に主の御身を欲しいままにさせて、ぼくたちは胸を張って誇れるだろうか。


 否。


 断じて、否。


「変えましょう、共に。この不埒な現状を」


「……あなた、本気!? それじゃあまるで、まるで……」


 肩を震わせ狼狽するライムさんへ、ぼくは彼女と目を逸らすこともなく、腹を括って啖呵を切った。



「ぼくは、アキラ様を殺します」




 Qなんでライムちゃんこんな簡単なこと分からなかったの?


 Aアキラ君しばらく失踪してたからです

  ライムちゃんは数日間の空白の間になにかあったのかと思案していたので

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