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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
一章・「赫炎の魔女」
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紫電の矢














 うへぇ……。

 どんなチートを使ったらあんな風になるんだよ……?

 ん?

 もしかして、あのサファアとかいう神獣が関与しているんじゃね?


 ……有り得なくはないな。

 後で合流した時聞いてみるか。


「先輩、攻撃とかされないんですか?」


「ん? あぁ、大丈夫大丈夫。 あのおっさん団長はアレでも立派な野郎だからな。 そこら辺、ちゃんとやってくれてるだろ」


「そうだと良いんですが……」


「それ、フラグ」


 その思考回路は不味いぞ!

 運命の神様が理不尽極まりないクソ展開を用意しちゃうから!

 

「――? なんだこの魔力の流れ」


 巨大な大樹の頂上に、なにやら魔力が渦巻いている。 

 …………。

 御免、逃げていい?

 だだだ、大丈夫だよな!


 幾らなんでも見方を攻撃したりは……


 刹那、一本の紫電が降ってきた。


「クソガアアアアアアアアアアアア‼」


 どうしてだよ!?

 どうして運命の神様はこういうことを平然とできちゃうの!?

 俺はそう神様を罵倒しながら、背中に預けた戒杖刀の刀身を鞘から露出させる。

 アレは魔力の流れからして何らかの魔法・魔術によって構築されたモノ。


 なら、これで十分反射できる!


「――〈乱反射〉ッ!」


「――――」


 刹那、猛烈な勢いで鮮やかな刀身とまるで雷のようにスパークを続ける紫電の弓矢が轟音と共に激突する。


(おいおい……嘘だろ!? 押し返せない……!)


 戒杖刀が魔法・魔術を反転させる条件は二つ。

 一つは軌道を修正したい魔力に触れること、そして二つ目はその魔法・魔術を物理的に吹き飛ばすことだ。

 前者の条件を満たしているので威力は激減しているはず。


(だというのに何故俺が吹き飛ばされそうになる!?)

 

 答えは単純明快。

 つまり、それだけ素の勢いが凄まじいということだ。

 クソっ、あんまり魔力は消費したくなかったけど――!

 力が足りない。

 ならば、魂の奥底から捻りだせばいい!


「――――ッッ‼」


 刹那、拮抗していた勢いに変化が生じる。

 大量の魔力を両腕に流し込んだことにより、俺の筋力は人間離れとなり、そして遂に紫電の矢の軌道を反転させることに成功した。

 そして時間差で魔力の大量消費によるペナルティーが襲い掛かる。


「あー。 クソっ」


「先輩――!」


 俺は俺自身の勢いによって猛烈な勢いで吹き飛んでしまった。

 なんとか倦怠感が酷い体を酷使し、そして『竜艇船』の部位の一つにしがみ付き、なんとか地面落下ルートを免れた。

 しかし、攻撃がこれで終わりだとは限らない。


 まだ、まだ次がある。

 

 レイドさんなら、ある程度は防ぎきれると思うが、それでも細かい余波を未然に防ぐことは至難の業だろう。

 ここはその余波すらも反射可能な俺が頑張らなければならない場面だ。

 

「クソっ。 もうちょっと休ませろよっ」


 俺はそう悪態を吐きながら次撃へと対応できるように身構える。 

 俺の魔力は多いと言ったら嘘になる。

 なんせ、俺あんまり魔術全般の適正ないしね。

 全く、ガイアスが羨ましい。


 さっきの攻防で魔力の二割は使っちまった。

 つまり、俺が反転させ未曽有の被害を防ぐことができるのはあとたった四回。

 勝算は、ある。

 俺の魔力が尽きるまでの間、レイドさんや月彦が制圧すれば何とか勝利だ。


「――そう意気込むな」


「……ガバルド、お前は妙に落ち着いているな」


「当然。 なんせ、三回目だからな。 しっかしあの矢をお前が弾き返すとはな。 あの耳長野郎、ちょっとショック受けてそう」


「知り合いか?」


「ちょっとな」


 もうさぁ、本当にあんた主人公かよ!

 因縁はあればあるほど主人公株が上がっていくのが定石よ。

 それをこのおっさんは……!


「安心しろ。 あの耳長は基本的にアレを弾いた奴は好待遇でもてなす。 試練は終わったらしいぞ」


「はぁ。 また俺の知らん知識をいけしゃあと」


「悪いな」


「謝罪が嫌味にしかなってねぇよ!」


 そんな虚しい言葉がめいめいに響いた。















 そして、紫電の弓矢が迫りくる。


 その速度は衰えるどころか時間が経過するごとにどんどん光の速さへと近づき、加速して男へと襲い掛かる。

 通常なら落命を許容してしまうような場面。

 ――が、彼は生憎「普通」ではなかった。


 思わず女性――それも年若い――と聞き間違えてしまうようなハスキーボイスが響き渡る。

 その声には微塵にも恐怖を感じさせなかった。

 そして男はシンプルな弓を構え――撃ち抜く。

 

「――〈紫電の弓矢〉」

 

 刹那――男へと迫りくる矢が、猛烈な勢いで裂けた。

 男が放った矢は空高くを水平に舞い――消え失せる。

 原理は単純明快。

 襲い掛かる矢を同程度の威力の矢によって相殺し、破壊したのだ。


 まさに針の穴を通すような神業。

 そんな神業を平然と成した男の額には、堪え切れない笑みが浮かんでいた。

 あぁ、これほど気分が高揚したのはいつぶりか。

 あの魔力の質。


 彼は基本的に身体強化以外に魔力を使用しない。

 つまり――別人。


「くはっ」


 彼以外に、自分の矢を弾き返す者が現れた。


「――今はただ、それが嬉しい」




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