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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
一章・「赫炎の魔女」
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いざ、亜人国へ!


 













「はぁ。 浮気したらいけませんよ」


「だからアレは浮気じゃないって……」


「なら、沙織ちゃんに話してもいいですよね。 なんせ、何にもやましいことがないんですから」


「済みません俺が間違っていました」


 こうして土下座するのも何度目だろう。

 俺の浮気(誤解)が発覚してから月彦はずっとこの調子だ。

 なんだろう。 

 何というか、浮気現場を発見された男の気分を味わっているようだ。


 クソォ!

 どうして俺がこんなにも理不尽な目に……!

 そう運命を罵っても月彦の長々とした説教は終わらない。


「そもそもですね。 沙織ちゃんは今は忘れていますけど、先輩の――」


「オッケー。 分かった分かった。 ちょっと落ち着こうか」


「もっと反省してくださいよ! ネトラレとか絶対沙織ちゃん悲しみますよ!」


「それで悲しんでくれるほどまだ好感度積んでねぇよ! というか、ネトラレなんて言葉誰から聞いたんだよ!?」


 くっ……!

 このままでは、出発まで、否、最悪飛行中も永遠に説教地獄を味わうことになりそうだぞこれッッ!

 流石にそれは勘弁な。


 俺は何とか話を誤魔化そうとする。


「そういえばさぁ、ライオンちゃん大丈夫なの? あれ幹部との戦闘で結構消費したろ?」


「話を変えない! ちなみに、ギルディウスは健在ですよ。 仮にもレイドボスですからね」


 どこか誇らしげにそう宣言する。

 ちなみに、俺の「戒杖刀」の材料となったのがライオンちゃんだ。

 言っておくが殺してはいない。

 そんなことをしていたら、ギルディウス話題にすら姿見せなくなるからな。

 

 使ったのはあくまで角だ。

 あの角にはありとあらゆる魔力を反転させる能力が付与されていた。

 「戒杖刀」の刀身はその角を利用して錬成されてきた。

 ちなみに、もう一本の太刀は別のレイドモンスターから奪った。


 アレは……最初のリスクがヤバいからあんまり使いたくないなー。


「――『傲慢』。 勝てますか」


「――――」

 

 神妙な顔で月彦がそう問う。

 その瞳の奥には堪え切れない恐怖が張り付いている。

 確かに、アレは怖いよなー。

 あんな化け物に寄り添うなのだ星人がちょっと頭のネジ外れているだけで。


 いや……。

 あれは、ちょっと違うな。

 多分、見た感じどこにでもいるちょっと戦闘狂な常識人。

 やっぱ、それなりの付き合いがあったのかねぇ。


「ちょ、何現世から消えてるんですか」


「あっ。 悪い悪い。 ちょっとな」


「――――」


 しかし、『傲慢』の勝算かぁ……

 かつて何度も何度も人族を恐怖のどん底へ追いやった次代の『英雄』。

 あの似非エルフの助力もあれば、まぁ、ギリギリいけるかなぁ。 

 本音を言うならルシファルス家の魔術を継承した奴の一人や二人は欲しかったんだけどなー。


 まぁ、そんな我儘言ってられないか。

 

「――百パーセント、とは言えねぇよ。 あれは明らかに人の領分を遥かに超越した存在だ。 そうそう勝てるはずがねぇ」


「――――」


「だけど、紙一重の可能性と、ちょっとばかりの奇跡が偶然にも重なれば――勝てる」


「……ま、先輩ならそう言いますよね」


「慰めて欲しかったか?」


 だとすたら女々しいことだ。

 

「――いいえ。 さっきの言葉が欲しかったです」


「そうかい」


 まったく、こいつもとんだ物好きだな。

 呆れと、一片の歓喜が溢れ、俺は何とかそれが言葉にならないように溜息を吐いた。

















――魔力が荒れ狂う。

 

 常人離れ――否、人間離れした圧倒的な魔力の奔流が竜巻を形成する。

 だが、これでさえあくまで余波に過ぎなかったのだ。

 次の瞬間竜巻がまるでシャボン玉が弾けるように吹き飛んだ。


 そして――船が、宙を舞う。


 大船は空中を自由自在に――それこそ、水中を魚が優雅に泳ぐように――跳び舞い、やがて猛烈な勢いで雲を突き抜けた。

 やがて並ぶ建物によって遮られていた地平線がハッキリと見える距離となっていった。


「――綺麗だな」


「少なくとも、飛行機でも見られない絶景であることは、確かですね。 料金でも払いましょうかね」


「? なんで金を払うんだ?」


「人語を解せないモンキーには分からん理由だよ」


「ウォラァ!」


「甘いっ!」


 フワッハッハ!

 その程度の拳、見切ったわ!

 

「はぁ……本当に落ち着きがないですね」


「しょうがねぇだろ。 だって日本人だし」


「日本人に責任を押し付けないでくださいよ!」


 だが断る。


 雲を突き抜けた大船は、今この瞬間も泳ぐような滑らかさで、しかし、なおかつジェットコースターが亀に思えるほどの速度で空を駆ける。

 この大船こそがアメリア家の発明品が一つ、『竜艇船』だ。


 文字通り技術は主に竜、というかぶっちゃけ『老竜』を参考にしており、起動には莫大な魔力が必要とされている。

 ちなみに、『竜艇船』を起動したのは何を隠そうアメリア家当主自身だ。

 魔力ってのは何もしなくても蓄えられるのが普通だ。


 まぁ、どっかの誰かさんみたいな例外もいるんだけどね!

 アレのことはあんまり考えたくないなー。

 

 閑話休題。


 そんなわけで、ルイーズさんの蓄えられた魔力はどんどん肥大化していき、今ではあの『賢者』すらも凌駕しているそうだ。

 故に、このような装置を起動するのはお茶の子さいさいであるらしい。

 

「――――」


 そして、月彦や安吾と雑談して時間を浪費すること数時間。


「……? 何だ?」


 平坦な地平線の向こう側に、塔のようなモノが見えた気がした。

 やがて塔との距離はどんどん縮まり――その全容が見えてきた。

 

「大樹……?」


 それは、一本の幹だった。

 だが、異常なのはそのサイズだ。

 その背丈は既に東京タワー、いや、比べることさえ無意味なほど高く、当然横幅も凄まじくなっている。


「亜人国に着いたぞ――!」


 その声は、戦争の火花が散るキッカケとなって木霊していった。

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