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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
一章・「赫炎の魔女」
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警告


 まふまふさんの新曲、マジ最高っす!

 今も作業用BGNに使わせてもらってます!










 物置き場に、二人の人間が居た。

 

 俺は木箱を椅子代わりにしがらら、対面に座る中年のおっさん――王国近衛騎士団団長・ガバルドを一瞥する。

 そして労うように笑みを見せた。


「――大演説お疲れ様」


「ふっ。 ヴァン家の騒動に巻き込まれた時に無理やりやらされたあの演説には劣るさ」


「お前って本当に主人公的存在だよなぁ」


「それは褒めているのか?」


 主人公にはトラブル体質という特性がつきもの。

 今のところこのガバルドはその条件を満たしているのだ!

 でもなぁ……。

 おっさんなんだよなぁ……


 最近ではそういう作品もあるかもしれないけど、個人的にはおっさん無双はちょっとダブーなのである。

 

「今、失礼極まりない事を考えていただろう」


「あっ、分かる?」


「隠さないのだな……」


「『無貌の瞳』……そんな異能だったけ」


「……その名をどこで」


「教えましぇーん。 それに、お前のその異能にも限界があるんだろ? 現に俺の浅い思考は読めてるけど、まだ深淵には到達していない」


「――どうしてそれを」


「――忠告する」


 俺は普段より平坦な口調で淡々と告げる。


「――奥深く、その景色を見るな」


「……何故?」


「発狂して廃人になりたいのなら致し方ないけど、なるべく止めろよ? 俺のせいで団長が狂っちゃったとか、後味が悪いからさ」


「――――」


 俺の要領を得ない発言に押し黙るガバルド。

 彼の眼には俺をどんな風に見えているのだろう。

 いつか、聞いてみよっか。


「さてはて、そう緊張するなって。 俺は別にお前が発狂して欲しくないし、というかだからこそ忠告したんだからな。 それを破ったらどうなるか――未来の自分にでも聞いてみろ。 まぁ、もう話せないのかもしれないがな」


「そうか――」


「理解があって助かる」


 俺はそうにこりと微笑んだ。

 と、同時に覗き込まれいたような感覚が消えうせる。

 どうやらガバルドが異能を解除したようだ・

 聞き分けのいいおっさんは本当に助かるわー。


 というか、アレは戦士としの第六感が働いた結果ではないのか。

 まぁ、今はどちらでも良っか。


「――お前は、一体っ」


「教えてあげませーん。 俺が俺のことを赤裸々に語るのは沙織以外いないんですぅ。 己惚れないでくださいますか?」


「……軽いな」


「――――」


 チッ。

 気が付きやがったか。

 まぁ、今更気が付いてももう遅いんだけどね。

 最悪口外する前に監視にブスって刺してもらえばいいだけの話だし。


「ガバルドもまだまだ準備あるんでしょ? こんなところで寄り道してていいの? 俺は俺でちょっと用意が捗ってないから、集中させてくれん?」


「用意? それが?」


「そうそう。 大真面目な話、ね」


 手元にあるひょうたんに触れながら俺はそう告げる。

 そうしてる間にもひょうたんへ――正確には内部の水へ魔力が浸透していく。 

 ストックはもう万全だ。

 だが、相手はあの『傲慢』。


 最低限の準備だけじゃあ、ちょっとばかり不適切なんだよなぁー。

 

「――戦場で、また会おう」


「オッケーオッケー。 お互い生きてたらいいな」


 そうして、ガバルドは踵を返した。



「――分かったような口聞いてるんじゃねぇよ」

















「よー、月彦。 準備は万全かなかな?」


「何ですかその奇妙な語尾は。 センスの欠片もないですね」


「わぉ、ウチの後輩むちゃ辛辣だなぁ。 せめて可愛いーとかそういう気が利く言葉の一つや二つ言えなかったら、格好良いイケメンにモテないぞ」


「何で男にモテないといけないんですか!?」


「アッハッハ。 冗談冗談。 ――二割は」


「残りの八割が気になりますね!」

 

 このような状況の最中でも月彦のツッコミは健在だ。

 先輩としてもうちょっと緊張して欲しいと考える。

 

 ――ここは薄暗いアメリア家別荘の地下である。

 

 その地下深くに何十人もの騎士が勢揃いしている姿は少々異常だった。 

 まぉ、目的を考えると当然か。

 時刻は正午ジャスト。

 宙を舞う太陽が最も真正面から陽光を放出する時刻である。


「ったく、こんな天気がいいなら、姫さんとひなたぼっこでもしたかったぜ……うわっ、どうしたよ」


「――――」

 

 俺の対面を仁王立ちする月彦がまるで見てはいけないモノ――それこそ、幽霊でも見たかのような表情で俺をジッと刮目している。


「せ、先輩の口から沙織ちゃん以外の女性が出てきた……!? 天地変異の前触れですかね!?」


「否定はせん」


「どどどどど、どうしたんですか先輩! 頭大丈夫ですか! なんなら、最高の名医を紹介しましょう! 絶対に病気は完治しますから、気落ちしないでください!」


「酷い。 俺の後輩が余りに酷過ぎるぜ……!」


 どうしてこんな子に育ってしまったのだろうか。

 今はただそれが悲しい。


「まぁ、かくかくじかじかで仲良くなったプロニート仲間さ。 別にやましい気持ちはないし、俺の心は既に沙織の虜さ!」


「へぇー。 だったら沙織ちゃんにこのことを口外しても……」


「スンマセン、自分、マジ調子乗ってました」


 当然、土下座した。

 だってそんなことしたらアキラさん株暴落じゃん!

 ただえさえ低い俺の好感度がもっともっと低くんまってしまう。

 それを未然に防ぐためなら、俺はプライドすらも投げ捨てるだろう。


 というか投げ捨てた。




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