表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
一章・「赫炎の魔女」
55/584

近衛騎士団団長













「――よぉレイドさん。 さっきぶりだな」


「――――」


「おーい、聞こえてるのかなぁ?」


「――――」


「あ、ダメだこりゃ」


 これから戦友となるんだし、ちょっとは交流でもしよかなぁって思った矢先にこれである。 

 俺は幾度もフレンドリーに真顔のレイドさんへ対話を試みるが、今のこと全敗0勝である。

 マジか。

 

 俺、もうちょっとコミュ力があるはずでは……

 まさかこの俺がこんなところで……!

 屈辱の極みッ!


「――はぁ。 この人はまた奇行を……」


「安心しろォ。 平常運転だァ」


「酷いね俺の評価! 泣いていい!?」


 これが親友に対する仕打ちか!

 何だろう、最近邪険ばっかりされてる気がする。

 気のせいであって欲しいと願う。

 流石に包帯男の境遇をこの年で体験したくないんでね!


「というか、お前らも来てたのか」


「まぁ、考えれば当然の措置じゃないですかね。 一応、ほとんど雑用ばっかりやらされている僕ですが、これでも近衛騎士団の騎士何ですよ?」


「この年でその名乗りはちょっと……」


「どういう意味ですかコラァ!」


 無論、君も覚えいるはずさ!

 さぁ、記憶の深淵に眠るその歴史を再度目の当たりにするがよい!

 悶絶する姿が目に浮かぶ。

 俺にはちょっと理解できない感情だ。


「ったく、お前も相変わらずだなァ」


「あっ、居たの」


 顔面に衝撃が。


「殴っていいか?」


「事後報告したって許さねぇからな」

 

 猿は猿で建材だったようだ。

 俺は原始人を見るような眼差しで半裸の猿を一瞥する。


「なぁ、お前ついに身も心もウッホッホーになり果てたの? 前あった時はちゃんと服着てたよな? 精神科なら名医を紹介できるぞ」


「死ねッ」


 俺は猛然と飛びかかってきた猿の拳をのらりくらりと避ける。

 フッ。  

 モンキーマスターアキラと呼びたまえ。

 原始人の攻撃パターンなんてお見通しだ!


「そういえば、月彦。 お前ら結局なにしてたの? もしかして、どっかの誰かさんみたいにプロニート生活でも……」


「僕を先輩と一緒にしないでくださいよ。 事務仕事はもちろん、最近なんて正真正銘の猿と一騎打ちしましたからね」


「成程。 安吾が暴走したんだな」


「ウラァッ!」


「むっはっは! そんななまっちゅるい拳じゃあ俺をぶっ飛ばすことなんて夢のまた夢だぞぉ? あ、そんなことも理解できないからモンキー安吾って呼称されるんだね。 失敬失敬」


「煽らないでくださいよ!」


 残念ながらガバルド直伝だ。

 ガバルド、お前はいい仕事をしたよ……!

 

「――やれやれ。 お前らは緊張感というモノを持たんか。 もしかして、そんなこともできない哀れな生物なのか?」


「本家来たーーーーー!」


 何気に俺たちをディするガバルド団長。

 うん、威厳の面影はこれぽっちも見えないね!

 こうして見るとただの中年ジジイだ。

 どうして俺はこいつを共犯者に仕立て上げたのだろう。


 















 その広場に揃った騎士は総数およそ六十名。

 騎士たちはそれぞれ白を基調とした清楚な印象を覚えるような制服(?)を着ており、団長へ恭しく跪いている。

 レイドさんも同様だ。


 俺は見様見真似でやってみたが、背後の騎士からある種の敵意を感じたことからどうやら間違っていたのだろう。

 でも気にしない。

 気にしたら負けよ。


「――さて、共に忙しない身であるが、皆がここに集まったことにまずは感謝を述べよう」


「――――」


 どうやら、ガバルドは公私を弁えているらしい。

 今のガバルドの顔はまごうことなき「表」だ。

 つまり――威厳ある最強の騎士団長。

 その姿を認識した刹那、無意識に跪づいてしまった俺がいた。


 流石は王国近衛騎士団団長。

 

「既に承知の事実だが、今現在魔人族らが亜人国へ一斉攻撃を開始しようとしている」


「――――」


「それが成されれば、我らがどうなるか。 ――何より守るべき民がどのような末路を辿るか、理解できるな?」


「――――」


 それは脅迫だった。 


 逃げるなと、怖気づくなと、戦えと。

 王国の民たちを人質にして、ガバルドはそう強要する。

 だが、この場にいる全ての者がそれを不服に感じる者はいないであろう。

 何故なら――誓ったのだから。


 剣に、心に、魂に。

 その行いが当たり前だと、そうするべきだと、それこそが騎士の姿なのだと、そうこの剣に誓ったのだから。

 ならば――選択肢は一つ。


「――戦え。 片腕が無くなっても、目玉が飛び出ようと、歩く両足が消えようと、死に腐ろうと――戦え。 それが私が出す、最初で最後の命だ」


「――――」


 そして、跪いた騎士ら全員が一糸の乱れもなく、深く、深く頭を下げた。

 その鋭い双眸には今も燃え滾る灼熱が乱舞している。

 殺せ。

 殺して、殺しつくせ。


 そうすれば、きっと誰かが救われるのだから。


「――くだらないな」


 今にも消えてしまうそうな――されど、信じられないほどハッキリと、その声が静かに響き渡った。

 その嘲弄の意思が誰が発したものなのか、今この場で理解できたのは本人ただ一人だけだった――。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ