提言とと
ああああああああああああああああああ!!!???
本当は詐欺って二話で留めるつもりだったけど、まふまふさん×そらるさんで歌ってみた投稿してたし、最高だから衝動で更新しちゃったんじゃ!
高音最高ッ!
イントロも本家と違ってやっぱいい!
「……詳細を」
レギウルスは、アリシアの断言に胡乱気に目を細めながらも、その奥深くを探ろうと――。
「えー、どうしよっかたなあ?」
「……は?」
と、した寸前、そんな気の抜けるような声音が鼓膜を震わせたので、必然的に目を白黒させてしまう。
この少女は、今何と。
(気のせいだよな。そうに違いない)
流石に、そんな暴虐を成すワケが――。
「――やっぱり、貴重な情報には相応の対価があって然るべきだわ」
「最後まで用語させろよ!」
「ふっふ」
アリシアさんはどこまでいってもアリシアさんでした。
そんな衝撃の事実に絶句しながらも、レギウルスは頭痛を堪えるような苦々しい顔色で確固たる事実を指摘する。
「なあ……お前、今どんな局面か、理解してるよな? してるよな?」
「もちろんっ」
「嘘だと言ってくれよ!」
確信犯であった。
レギウルスは、こうしている間にも多くの人々が焼死してしまっていること、そしてなによりそれをネタに脅迫するアリシアの欠如した倫理観に歯噛みしながらも、最大限の譲歩を指し示す。
「分かった、分かった。なら、なんでも聞いてやるよ」
「今、なんでもって……」
「限度はあるがな!」
玩具ルートは勘弁。
それこそが、ありとあらゆる感情が綯い交ぜになり、もはや自分自身さえ無条件に信頼できなくなってしまった男が即答した声音であった。
そんな辛辣な態度にやや口をとがらせるアリシア。
「えー、どうせなら、あんたの一切を掌握して、踏み躙りたいなー」
「もう女子の発現じゃない!」
この世界に可愛らしい美少女など、存在しないのか……。
「あっ」
不意に脳裏によぎったのは、触れてしまえば氷細工のように掻き消えてしまいそうな、儚くも健気な少女で――殺気!
「――今、私以外の女を考えた?」
「……ひぇ」
アリシアさん、満面の笑みだ。怖いくらいに。
不可思議なことに、その瞳には一切の光沢が存在せず、それはもう深淵が如く闇夜に染まってしまっている。
発せられるのは殺気と相違ない代物だ。
つかみどころのない彼女にしては余りにもらしくもないその豹変に、思わず頬を引き攣らせてしまうと。
「なーんてね。あんたのことを嫉妬なんてしないわよ」
「そ、そうだよな。それでいいと思うぞ」
「ええ。全く以てその通りだわ」
レギウルスの震えた返答に、聖女が如き微笑をたたえながらそう同意を示すアリシアに、何故か怖気が止まらない。
きっと、気のせいだろう。
そう、心底思いたい。
「……はあ、ほら、さっさと情報を開示しろ。こうしている間にも、また一人が出てるぞ。そこら辺、自覚しろ」
「あんたはあんたでどこか余裕ね」
「んな些事はどうでもいい。とっとと回答しろよ。一応、なんでも聞いてやんから」
「今、なんでもって……」
「言ったからさっさと言え! これ以上引き延ばすのならおいていくぞ!」
怒鳴るレギウルスにアリシア「やれやれ」と肩を竦め、そして言った。
「まあまあ。そんなことによりも、もっと根底的に解決できる最善策が存在するわ。――諸悪の根源を叩けばいいのよ」
「諸悪の根源……」
なんでもないようにアリシアはそう嘆息する。
諸悪の根源。
そのような声音を聞き、条件反射で思い浮かべるのはおよそ二つ。
「……まず一つは、この放火事件を巻き起こした主犯格。そんで、もう一つはあの得体の知れないっ魔法陣か……?」
「御名答だわ。流石に、頭の回転は速いわね」
「そりゃあな」
これでも、かつては『傲慢の英雄』だなんていう高尚な肩書だったレギウルスである。
故に、この程度の芸当は当然であり、特段胸を張るようなモノでもないし――もう、そんな資格は、無い。
「で、お前ならどっちを叩く?」
「その問いかけ自体の訂正を要求するわ。――叩く、じゃなくて叩いた、だわ」
「……おいおい、幾ら何でも仕事が早すぎるだろ」
「これでも、存外有能なので」
「ドヤ顔すんな。……じゃあ、なんで烈火は健在なんだ?」
レギウルスは非常に憎たらしいドヤ顔をするアリシアにツッコみながら、自明の理ともいえるその疑念を払拭しようとする。
見渡す限り、熱波は健在だ。
仮にアリシアがのたまう『諸悪の根源』とやらの一方を叩いたというのなら、吹き荒れる爆炎は消失して然るべきだ。
だが、現状そうなってはいない。
あるいは、アリシアはレギウルスをその程度の虚言を、信じる程の愚物と、そう過小評価し嘯いた――。
「見くびらないで」
「――――」
「私は、あんたを過小評価したりしない。――頭脳に関しては、正しく私の方が冴え渡っているから」
「……人の心情を無許可に看破すんな」
「あら。照れて」
「ない」
そうにべもなく即答するレギウルスにアリシアは「つれないわねー」と特段懲りた様子もなく呟く。
そのまま、手早く状況説明に移ろうとする。
「もう面倒くさいからさっさと言っちゃうと、私が撲滅したのは、あんたが述べたモノの前者。主犯格は容易く散らばった陣と同質の魔力を追跡すればいいだけだから、手早く補足できて、そのまま拷問したわ」
「さらっと物騒なこと仰るな……」
「別に、慣れてるからそこまで物騒じゃないと思うけど……」
「それはそれでヤベえ」
「えへへ……」
「誉めてねえよ!」
頬を染め分かりやすく照れるアリシアにレギウルスは猛然と吠えながら殊更に増大したその疑問を投げかける。
「だったら、猶更どうしてこの熱波は収まってねえんだよ……」
「いや、尋問してから分かったんだけど、陣の術式、あらかじめ魔力を蓄積するタイプだったらしいわ。それに、もはや本人の意思で止めることはできないらしい」
「……主犯格捕らえた意義が見出せねえな」
「失敬な。確かにもはや主犯格にはそこまで存在着はないんだけど、あの人の役柄は『設置』と『起動』。なんでも、この爆破の主因……あんたが言う得体の知れない陣って、私が拷問した男の魔術だったんだって。『設置』で火薬を設置して、『起動』を以て一定時間が経てば火薬に居んかするような仕掛けだったらしいわ」
「……これ以上火薬を追加されることがなくなったってことか」
レギウルスにしてもそんな魔術聞いてことはないが、一応辻褄は会うのでそこら辺の詮索はしない。
アリシアの声音に、嘘偽りが含まれていないのならば、確かにアリシアは相応の働きをしたようだ。
……それだけ、代償を考慮すると胃が痛くなるが。
「……で、次に俺たちが唾棄すべきなのは、後者――『陣』についてか」
「ええ、その通り」
消去法で今後の指針は理解できた。
だが――。
「なあ……この下町に、一体全体陣ってどんだけあるんだ?」
「……本人曰く、『百から数えるのを止めた』そう」
「嘘だろ!?」
最も穏当なパターンでさえ、あれほど微小な陣を最低でも百個は打破しなければ平穏は訪れないのだ。
そして、明らかに『陣』はもっとある。
「……クソゲーかよ」
「私もそう思うのだ」
「はあ」と淡白な溜息を吐きながら、アリシアはすっと目を細める。
「……救出の度合いは?」
「三割程度が限界だ」
そろそろ、格納庫の容量が、張り切れそうで、何気に恐怖していたりもするが、それはまた別の話。
レギウルスの物言いを聞き入れたアリシアの瞳に宿ったのは、明瞭な落胆だ。
「……妙に少ないわね」
「しょうがないだろ、俺だってスーパーマンなんかじゃねえんだ」
そのくせ、アキラやアンセルのように誰かを切り捨てることさえできないのだから、余計に滑稽に映る。
自嘲するレギウルスを仕方がないと、そう嘆息したアリシアは、一つ、ある提言をした。
「――私に、たった一つだけ数ある陣を一掃する妙案が存在するわ」




