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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
一章・「赫炎の魔女」
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『竜艇船』













 

「――さて、大体の方針は決まったわけだが、これで問題の一切合切が、解決されたわけではない」


「……まずは、亜人国への移動手段じゃな」


「あぁ。 その通りだ」


 亜人国との距離はおよそ数百キロ。

 当然ながら人力では一か月はかかる距離である。

 というかもっと近い国と貿易しろよ!

 確かに周辺国ホント少ないし、貿易しづらしのは分かるけど!


 こういう時は普通に迷惑なのである。


 当然、問題点はそこにスポットが当てられるわけで。

 これが解決できなかったら完全に詰みだ。

 人員的にも時間的にもこの長距離を徒歩で移動するのは絶望的。

 

「――さてはて、どうする?」


 一応、万が一の時に備えて入れ知恵はしている。

 でもあんまり使いたくないんだよねー。

 そもそもルイーズあたりはガバルドに助言した存在を疑っている節があるんだし。

 警戒、ダメ、ゼッタイ!


 そんなわけでここはぶっちゃけ丸投げだ。

 当然俺が意見を出すわけにはいかないんだよねー。

 頑張れ「四血族」!

 頑張るんだ。


「御免。 ちょっと心当たりがない」


「うぼっ」


 おいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!??

 おっさん、あんたに恥や外聞はないのかよ!?

 確かにおっさんどちらかというとインドア派だよな!

 アーティストとかには興味ないか!


 ドンマイ、俺。

 どうして彼らは俺の正気度を削ってい来るのだろう。

 胃が崩壊したら絶対に裁判起こすからな。

 まぁこの世界に裁判なんてないんだけどね!


 そして――救いの手が放たれた。


「安心せい。 『竜艇船』がある」


「? 『竜艇船』?」


 聞き覚えのない単語に首を傾げるシルファー。

 ちょっと可愛いのが腹立つ。

 私語は慎めという意を込めてチョップをかましてやる。

 我ながら理不尽の極みだ。


 それはそうとありがとうルイーズ様神様仏様!

 いや、百歩譲って神様はありえなくはないけど仏様は関係ないわ。

 どうでもいいがな。

 だが、おかげで俺の胃が崩壊するという危機を未然に防いでくださった。


 今は彼が幼い命を助けるヒーロに見えてくる。

 

「『竜艇船』――龍の飛行をベースに魔力による対空飛行を可能にしたアメリア家の発明品の一つ。 その認識で間違っていませんか?」


「あぁ。 良く知ってるな」


「ありがたいですわ」


 解説ご苦労様アレストイヤさん。

 俺はそう心の中でサムアップした。


「その速度は本家である〈老竜〉ですら匹敵するほど……確かに、これならば十分間に合いますわね」


「そういうことじゃ。 最近の娘が察しが良くて助かる」


「察しが悪くて済みませんでしたね」


 ルイーズの言葉を上手く答えられなかった自分への皮肉と受け取ったのか、皮肉を皮肉をもって返すおっさん。

 うーん器が小さい。 

 でも包帯男の千倍マシだわ!


 包帯男、ドンマイ!

 でもやっぱり自業自得という悲しみよ。

 

 さて、アメリア家の発明品によって一つの懸念は杞憂となった。

 まぁ、問題は山積みなわけよ。

 そう簡単に全部解決できたら誰も苦労しないわ。


「後、済まないが、それぞれの騎士を、貸してくれないだろうか? ちょっと、戦力的に不安でしてね」


「それは……」


 あくまで、ここにいる騎士は「四血族」たちが雇ったもの。

 それを借りるには当然許可が必要だよね。

 まぁ、戦力的にちょっとばか心もとないのは事実。

 「四血族」の器が試される時だ。


「済まないが、私の騎士はそもそも不在でな。 どうも、また面倒なことに巻き込まれたらしい。 全く、自由奔放ここに極まりけりじゃな」


「ご苦労察します」


「若造に理解されてたまるものか」


「これは失礼を」


 あ、確かにそういえばルイーズさんの騎士いないね。

 任務にでも行ってるのか?

 いや、それにしてはルイーズさんの先刻の口調。

 どっか引っかかるんだよなー。


 後で要検証、か。

 難儀なモンだなー。


「私も、本来なら喜んでそちらへ向かわせたいのですが――」


「信じない、信じない。 俺はこいつから離れん。 絶対だ」


「まぁ、そういうわけです」


「……色々と大変なんだなヴァン家当主様は」


「それはもう……アッハッハ」


 今の笑みについて、深く考えないようにしよう。

 ちょっと同情しないこともない。

 なんだか残念なサラリーマンが思い浮かぶような顔である。

 強く生きろ。


「そろそろ私に休暇をくれてもいいんじゃないんですかね本当にあのクソ野郎は頭どうかしていますよねどうかしているからあんな無理極まりないスケジュールを用意するんですよね本当にくるっていがりますよね私これ以上の重課を与えないように頼んだのに次の日机の上に大量の書類が運び込まれた時の恐怖があなたなんかに分かりますかわからないですよねわかってたまるものですかあはははっはは死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」


「お嬢! お嬢!?」


 強く生きて欲しい。


 虚ろな瞳でひたすら念仏のように文句という呪詛をつぶやくアレストイヤ嬢はおいといて、いよいよ不味い状況になったな。

 最低でも数人は「四血族」は欲しい。

 やっぱり……彼が頼み綱か。


「――レイド。 大丈夫か?」


「……………………不満はあります。 ですが、異論はありません」


「そうかい。 ――なら、うちのレイドとアキラ君は連れて行っていいよ。 好きに使ってくれればいい」


「――感謝します」


「私はあくまで自分の利益を優先しただけです」


 そんなこんなで俺の同行が勝手に決定してしまったのである。 

 解せぬ。



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