表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
一章・「赫炎の魔女」
50/584

――剣に誓って


 なんだがガバルドさんの設定が当初と比べ変貌している件について。

 どうしてこうなった。











 

――戦え


 ガバルドはそう強要する。

 

「――にわかには信じがたい。 そもそもあまりに判断材料が欠如している。 そこのところ、団長殿はどう説明する?」

 

 そう難色を示したのはルイーズだ。

 ガバルドは目を細めながらそれに答える。


「今はそんなことを言っていられる状況か?」


「今だからこそ、だ。 緊迫した状況で、最も求められるのは何事も冷静に受け止め、判断する力だ」


「――――」


「さぁ。 見せてみよ。 私たちを一切の例外なく納得できるだけのモノを」


「――――」


 一瞬、ガバルドは考え込むように俯く。

 そして――、


「済まん、無い」


「はっ?」


 そう情けなく言い放った。

 

 「四血族」たちはマジかよ!?

 的な視線をガバルドへ向けている。

 なんせ、確固たる証拠が言い出した本人が皆無というのだ。

 そりゃあ驚くわな。


 まぁ、正確には「呆れ」に近いのかもしれなしんだけど。


「――俺はあくまでそいつに話を聞いただけだ。 その話も重要な事柄だけしか話されていないし、ぶっちゃけ俺はほとんど知らん」


「――――はっ」


 その言葉をルイーズは嘲弄する。

 自分は無知ですと、そう恥も外聞も無く言い放ったガバルドはそれでもなお悠々と――それこそ、王のように宣言する。


「「グリューゲル大航海」、「暴食鬼殲滅作戦」……」


「――――」


 ガバルドが呪文でも唱えるように言い放ったのは、彼がこれまで成した功績であり、また足跡でもある。

 それに異を唱える者は誰も居ない。

 

「――今まで、俺は王国の剣となり、幾多もの悪党を滅ぼしてきた」


「――――」


 ガバルドはこれまで騎士団に入団して、様々な事件に挑み、解決してきた。

 だからこそ、騎士団長なんていう重鎮となったのだろう。

 故に、彼が言い放つ言葉には自然重みが生じる。

 なにより決定的なのはガバルドが纏うその圧だ。


 その威厳は、そこらの凡夫では放つことは叶わない。

 幾多もの視線を潜り抜けてきた彼だからこそその身に纏うことを許される、他と隔絶したそのプレッシャー。

 

「――――っ」


 足が、震えている。

 恐怖故ではない、それは言うならば武者震い。

 

 そして、ガバルドは己の剣を掴み取る。

 その瞳に宿る感情を疑う者はこの場に誰一人として存在しないだろう。

 

「――俺はあいつを信じる。 あいつを信じた俺をお前らが信じるかどうかは知らん。 だが――少なくとも、今俺が言った言葉に虚言が混ざっていないことは、この剣にかけて誓おう」


 それは決意であり、宣言であり、誓約であった。


「――――」


 卑怯だった。

 思わず、納得してしまいそうな、そんな危うさを孕んだ言葉だ。

 その言葉に込められた万感の思いを正確に推し量るのは不可能に思えて、でもだからこそ不思議な力を纏っていた。


「――私は、お前自身を信頼しない」


「――――」


 不意に、今まで口をつぐんでいたルイーズが口を開いた。

 その瞳はどこか清々しい色があり、ルイーズは微笑みながら言葉を紡ぐ。


「――だが、今まで貴様が成してきた数多の功績。 そしてなにより、王国のために振るわれるその刃を信じることにしよう」


「――ありがとう」


「礼など要らん。 これはあくまで私の意見に過ぎないからな」


「それでも、俺は貴方を感謝しますよ、ルイーズ・アメリア殿」


「そうかそうか。 強情なことだな」


 そう苦笑するルイーズの表情はどこか晴れやかだった。

 誰だって、他人を好きで疑ったりする訳がない。

 でも、人は平気で他社を貶める存在だ。

 だからこそ、このような気高い存在を信頼する時、一種の安堵が生まれるのだろう。


 そして、続いてヴァン家の代表が立ち上がる。


「――私も、同意見です。 貴方が振るう剣は余りに気高い。 私は、それを信頼しますわ」


「ルシファルス家も概ね同じです。 まさか、私たちが口だけで篭絡されるとは、よもやよもやだね」


「えぇ。 そうですわね」


 そして、ルシファルス家とヴァン家も同意を示す。


(――あぁ。 やっぱり、この人は「団長」なんだなぁ)


 たった一言で誰かを牽引し、導く。

 そんな彼だからこそ、こんな奇跡を巻き起こすのだ。 

 もし、仮に俺が同じ境遇だった場合言葉ではなく数字で訴えかけるだろう。

 それほど明解な回答は存在しない。


 だが――世の中にはこんな方法もある。


 ガバルドはそれを俺に教えてくれた。

 全く……俺がもし女だったら確実に惚れてたな。

 が――当然、物事に例外を付き物。

 色んな意味で例外的な存在が悠然と口を開いた。


「――全く、馬鹿々々しいですね。 剣に誓う? そんなことしてもなんもならねぇんだよ。 もうちょっと考えろよクズ。 クズはクズらしく黙ってこちらの言葉に従えばいいんだよ。 不愉快だ不愉快だ不愉快だ」


「――――」

 

 はい、言うまでもない包帯男です。

 

 ちなみに、本名は知らん。

 もしそれを知っても俺は侮蔑と嫌悪の念を込めて包帯男と彼を呼称するだろう。

 多分、シルファーも同意見だと思う。

 

 包帯男は嘲弄するように言い放つ。


「本当に無駄だ無駄だ無駄だq。 もうちょっと考えてよ。 そんなこともわからないの? 死ねば?死ねよ死ねよ死ねよ。 それが嫌なら今すぐ消えろ。 それが嫌なら死ね」


「――くだらない戯言はそれで終わりか、小童」


「なっ」


 糾弾するような視線を包帯男へ向けるルイーズ。

 

「代案も無しに感情論を振りかざすな。 今は貴様の私情など些事ですらない。 ――弁えろ、痴れ者が」


「――――‼」


 その言葉に激高した包帯男は勢いよく立ち上がる。

 だが――、


「――動くな」


「――――っ」


 そして、円卓を圧倒的な剣気が支配した。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ