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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
一章・「赫炎の魔女」
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交渉












 ――それは、会議開始から数時間前のこと。


「――よっ。 久しぶり団長」


「お前は俺の部下などではない」


 定番のやりとりが交わされる。


 場所は団長ことがバルトが保有する屋敷の地下室だ。

 ここなら盗聴の心配はないだろう。

 お膳立ては終わり。

 後は俺のなけなしの交渉力に結果が左右されるわけだ。


「何年だったけ。 百年以上はあってないよな?」


「お前も俺もそのような歳月を経っておらん。 おふざけは相変わらずだようだな。 まぁ、この短期間でそうそう変わるはずがない」


「わかんないよ? ほら、人ってすぐ誰かに影響されるじゃん。 良くも悪くも、ね」


「それが本題か?」


「そう急かすなよって」


 俺はそうフレンドリーにガバルドをなだめる。

 どうどう。

 さて、交渉の前哨戦にすらならない前哨戦は終わった。

 そろそろ本題に入りますか。


 こんなくだらないことでガバルドの機嫌をあまりに損ねたくないからな。


「――さて、本題だ」


「――――」


「亜人国へ、魔人族が攻め込んできてる。 それが唯一にして最大の要件だ」


「……そうか」


「おっ。 あんまり驚かないんだな」


「あぁ。 前兆はあった。 左程驚かん」


「そいつは行幸」


 ガバルド、こいつはただの脳筋団長なんかじゃない。

 ちゃんと深く思考し、それを実行できるだけの力がある。

 本当に頼もしい限りだ。


「――それで、お前はそれをどうしたい?」


「流石に、餓死バットエンドは避けたいんでな。 かといって「四血族」を動かすわけにはいかんし」


「……漁夫の利を警戒してか。 いや、「四血族」不在という空白が及ぼす影響を、考慮すると……」


「本命が攻め込んでくる可能性、だよな」


「それこそがお前が危惧する状況、か」


「そういうこと。 だから、お前に頼みにきた」


「――――」


 いいね。

 先読みしてくれる相手は断然話しやすい。

 ま、だからこそ厄介なんだけどな。


「――何を?」


「「四血族」の代わりに、俺を含めた騎士たちを、亜人国へ送りお出して欲しい。 ――騎士団長様」

 

 間髪入れず放たれた問に俺は即答する。


「――何処で、それを?」


「おっと、そいつは企業秘密だぜ? 誰にだって、人に知られたない弱みや秘密があるだろ? 俺も、お前も」


「――――」


 王国騎士。

 もはや俺ですら辿れぬ歴史の彼方により始まり、今もその足跡を残し続けてきた集団の名だ。

 その総力を「四血族」と比較すれば、明らかに騎士の方が部がある。

 それらを引き連れていけば、十分魔人族を返り討ちにできる。


 だが――、


「わからないな。 何故だ? お前はこの国を取り巻く状況に気がついているのだろう? ならば、なぜそうする」


「安心しろ。 今のところ、魔人族が王国を本格的に襲撃し血祭にあげる予兆はない。 俺が大小判を押してやるよ」


「……気になっていたのだが、お前はどうやって亜人国襲撃を予知できた? 一体、何故?」


「目には目を。 ……それが最大限のヒントだ」


「成程……答える気はない、か」


「おいおい。 俺はちゃんと答えぜ?」


「知らん」


 どんどんガバルドの評価が暴落しつつある件について。

 ちょっとショック。

 俺、ちゃんとヒントだしたのに……


「今は情報源は問わん。 だが、疑念はやはり先刻のお前の言葉に向けられる」


「ま、そうだよな」


 やっぱただの脳筋じゃないわな。

 ちょっと厄介。


「――魔人族の絶対的な主力は『傲慢』。 これに関して、異論は?」


「――――」


 沈黙は肯定の証だ。

 

「今回、『傲慢』は亜人国へ向かっている。 更には『傲慢』には劣るが、そこらの兵士なら一瞬で消し飛ばせる幹部がおよそ五名中三名参加している。 つまり――」


「魔人族は、本格的に亜人国を潰しに来る、か」


「そゆこと」


 当然、情報源は開示しません。

 そこまで俺は優しくないからな。


「――信憑性は」


「神様仏様沙織様に誓って俺は嘘偽りを吐いておりません。 もし、先刻言ったことに一つでも虚言が含まれていたら文字通り俺を焼き尽くしても構わない」


「――――」


 数秒経っても炎は現れない。

 当然だよね。

 だからこそ、答えられない質問は口をつぐんだんだから。


「――成程、理解した」


「――――」


「疑念はある。 だが――お前がその言葉に偽りはないと、体を張って照明した。 ならば、俺はその意思に答える責務がある」


「ならっ」


「あぁ。 ――詳しく聞かせろ」


 こうして、騎士団長と一端の傭兵の交渉は成功を収めたのであった。














「――ガバルド騎士団長、貴方が何故ここに?」


「ガキに入れ知恵されてな。 んで、そのガキから伝言だ。 ――「魔人族たちは、本格的に王国を攻めるつもりはない。 少なくとも、今回は」


「――!」


「そしてこの戯言の信憑性についてだ。 あいつは自分の身に誓約を課してあの言葉を言い放った。 ――嘘偽りはねぇよ。 王国騎士団長の俺がそれを宣言する」


「――――」


 その言葉に思わず瞠目するルイーズ。

 他の面々も似たり寄ったりだ。

 

「余計なことを考慮する必要はない。 ――さぁ、戦え」






 不可解な点があると思われますが、もうほとんど回答はバラしているようなモンなんで、探せばわかると思います。

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