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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
一章・「赫炎の魔女」
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急報


 まふまふしゃん、テレビ出るんだって!

 永久保存は任された(・∀・)!








 ――刹那、一同に様々な感情が跳び舞った。


 不理解、焦燥、驚愕――

 そして、その混乱に最も早く立ち直ったのはこの男である。


「――そう、か」


 重苦しい顔で少年――ルイーズ・アメリアはそう頷いた。

 確かに、驚愕はある。

 だが、それはあくまで些事に過ぎない。

 この程度のアクシデント、数百年も生きていたら日常茶飯事となり果てるのだろうか。


 少なくとも、まだたがたが数十年しか生きていない青二才には理解できんな。

 そういう俺もそこまで驚愕に打ちのめされていない。

 多分、その理由は初老の少年と同じだろう。


「――何時か来るとは思ってはいたが、よもやこのタイミングとは」


「おや? アメリア殿は左程驚いていないようですね」


「ほざけ。 ヴィルスト、貴様も同じだろう」


「ん、分かります?」


「ハッ」


 とぼけるおっさんをルーズは鼻で笑う。

 ちなみに、俺やおっさん以外にも約二名表面上はそこまで驚いていない奴がいる。

 人間不信騎士様とレイドさんだ。

 この二人について、俺が知っている情報は本当に少ない。


 まだ数週間は同じ屋敷で過ごしてきたレイドさんならわかるが、完全に初対面である騎士のことはちょっとよくわからん。

 後で調べてみますか。


「……難儀なことですわね」


「あぁ。 全くだ。 神はよく私たちへ試練を与えがたる」


 おっ。

 アレストイヤお嬢も復活したみたいだ。

 うん、だからね。


「そろそろ現世に戻れ姫さん」


「ハッ! 私は何を!?」


 まるで魂が抜けたようにフリーズするシルファーへ俺はチョップをもってなんとか正気を保たせる。

 まぁ、この場合現実逃避も楽だったかもね。


「――ま、そんな感慨に浸っている時間すらもないわけよ。 全く、世の中世知辛いなー。 もうちょっと俺と沙織に優しくすればいいいのに」


「ちょちょちょ! どうしてそんなに落ち着いているんですか!? 亜人国が堕とされたどうなるか、わかっていますよね!?」


「無論、だ」


 確かに、問題はそこだよな。

 俺はここ数週間、シルファールームで途方もない時間をこの国の歴史書などを読み耽ることよって浪費していた。

 

 だからこそ、部外者だがそれなりに現状を把握できるはずだ。

 

「――皆様の懸念通り、此度の襲撃の問題点は「その後」ですわ。 もし、亜人国が堕とされでもしたら……」


「この王国の民草が餓死寸前になる、ですよね」


「えぇ。 ルシファルス殿の仰る通りです」


「――――」


 この王国、実は食料自給率クソ低いんだよなー。

 それこそ、日本かよ!

 って突っ込みたくなる程度に。

 

 今現在王国と魔人族たちは絶賛戦争中。

 国家の存亡が関わってくるこの戦。

 当然ながらこれを手抜きするのは愚策だわな。

 だが、それ故の弊害が同時に発生してしまう。

 

 戦争により大手多数の国民が戦場へと駆り出された。

 ならば、誰が畑を耕す?

 つまること、人手不足。

 シンプルだからこそ、これが厄介なんだよねー。


 理由は全然違うけど、境遇は日本に似てるな。

  

 まぁ、そんなわけで現在王国は食糧不足が深刻化している訳よ。

 このまんまじゃ戦う以前に兵士が餓死する。

 だからこそ、偶然か必然か、王国は輸入に頼ったのだ。 

 その依存先の一つが、亜人国である。


「それが滅びたら、まさかの餓死バットエンドがお待ちかねかー」


「……随分と、内情に詳しいのですね魔人族たちは」


「まぁな」


 だが、これによりより嫌疑は高まってきた。

 ――内通者の存在への確信を得る材料となったわけだな。


「さて――どうする?」


 当然、問題は山積みである。


 亜人国にはその名の通り「亜人」たちが住み着いている。

 猫耳族、犬耳族、竜人族、鬼人族……

 これは本当の意味で「人種のサラダホウル」よな。

 

 亜人族たちの大きな特徴は、ズバリその身体能力の高さだ。


 もちろん、種族によって程度の差異は存在するが、それでも亜人族最弱の筋力を持つ猫耳族の身体能力は並みいる兵士を遥かに凌駕している。

 「最弱」ですらこれだ。

 他にもバリエーション豊かな化け物が勢揃い。


「……ぶっちゃけ負けるの魔人族じゃありません?」


「……いいや」


 それは、あくまで数十年昔の話だ。

 もし時代が少しばかり遅かったらもうちょっと楽観視できたんだけどな。

 まぁ、あの頃の魔人族じゃあこんな無茶はしないよな。


 だが――、


「――今は、『傲慢』が居る」


「あっ」


「――――」


 そう、そうなんだよなぁ。

 

 『賢者』のメィリですら殺し損ねた『英雄』の息子だ。

 しかもその実力はお墨付きときた。

 それこそ、あの『英雄』ですら霞んで見える程に。


「奴なら、滅ぼしかねんぞ」


「……さすがに、認めざるを得ないですね」


 これには流石のルイーズを頭を抱えていた。

 

「――私たち「四血族」らが総力を挙げて死守すればなんとか間に合うのかもしれない。 だが、それは……」


「それも、彼らの思う壺ですね」


「えぇ。 全くだ」


 うん、同意見だ。

 魔人族たちの進行を阻止するべく「四血族」を派遣したとする。

 そうなると誰が困るか。

 当然ながら、この国そのものである。


「防衛の要である私たちが抜けたその暇に、魔人族らが一斉に王国へ戦火を広げる可能性もあるからな」


「……「内通者」、ですかぁ」


「つくづく、面倒な輩じゃのう」


「……一体、どうすれば」


 全くもってその通り。 

 守らねば飢え、守れば滅ぶ。

 なんとも嫌らしい手管だな。


 だからこそ――俺はこの状況を打破できうる男を呼こんだ。


 不意に、扉が開かれる。



「――なら、強くてカッコいい俺たち騎士に任せてみるのはどうだ?」



 騎士団長――ガバルドは、そう言い放ち不敵にほほ笑んだ――、




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