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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
一章・「赫炎の魔女」
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揃う四血族


 包帯男のモチーフは言うまでもなくろろうのラスボス(?)の油発火ヒャッハー野郎です。 











「――全員揃ったようだな」


 

 そして現れたのは体中に包帯を巻いた男だった。

 包帯により肌から年齢を推定することはできないが、声からして少なくとも二十代後半程度であることは分かる。

 

 肌を包み隠した包帯の上には赤縁のローブを纏っている。

 その風貌からしても明らかに敵役的キャラである。

 もしや王城へやってきた襲撃者なのではないだろうかという、突拍子もない考えがつい浮かんでしまう。


 だが、そのことにこの場の誰もが驚かない。

 ということは、こいつが最後の四家族か。


「ヤァ、久しいなヴィルスト君」


「えぇ。 そうですね」


「――――」


 俺はちらりと横眼で「四血族」たちを見る。


 アレストイヤはどこか不愉快そうに顔をしかめ、年長者であるはずのルイーズですらも露骨に顔をしかめている。

 どうやら嫌われ者だね!

 仲良くなれそうである。


 もちろん、おっさんはその悪感情を笑顔の底に隠す。 

 そこら辺は流石貴族と言ったところか。

 だが、どうしても目の奥の嫌悪感は隠しきれていない。

 一体何があったのやら。


「はぁ。 そう露骨にガッカリいないでくださいよぉ。 嘘偽りでもいいから、ヴィルストのように笑顔で振るまえよなぁ。 全く、本当に嫌だなぁ」


「――――」


 一貫性のない言動でそう警告する包帯男。

 彼が放つ空気はどんな聖人君子ですらも嫌悪し侮蔑してしまうような傲慢さを無遠慮に放っている。


 情緒不安定なのかしらん。

 にしても、ちょっと会議の面子の気持ちが分かる気がする。

 確かにこの人はちょっと嫌だよね……

 やっとテンプレ貴族と出会えた気がする。


「で、この人誰?」


「……レアスト・メシア殿。 メシア家の現当主です」


「マジか」


 メシア家って、初代国王の賢臣メイシア・メシアの家計じゃないですかぁあああああああああああああ。

 メイシア家が齎した功績は凄まじい。

  

 かつて戦乱の世だったこの国を、一つに纏め上げた王の政策のおよそ七割をメイシアが考えだしたという。

 本当に立派な人だったらしい。 

 そして代々受け継がれた当主らはその手腕を発揮し王国の安泰へ貢献しているらしい。


「――ですが、彼は特にこれといった功績を収めておらず、ただ現状を維持しているだけらしいですよ。 真相は定かではありませんが」


「うわぁ」


 普通にダメ貴族じゃんか。

 だというのこのやたら尊大な態度。

 あぁ成程、確かにこれは嫌われるよな。

 例えるなら結果が伴っていない厨二病を見ているかのような気分である。


 痛い、痛すぎる!

 俺は特に厨二病を発症したことはないが、それでも月彦の発症経験なら誠に残念なことにあるのだ。

 「俺の封印されし左腕……!」と呟く月彦を俺は見たくなかった。


 そして包帯男は別のペクトルで痛すぎる。

 それでも尚許されるだけの権力を持って居るからなお厄介である。

 結論、厨二病乙。


「……貴族って、真面な奴いないのかな」


「…………なんか、済みません」


 何故か、謝られた。















「――さて、準備は整いましたか?」


「問題ないですわ」


「同意する。 儂も同じだ」


「ハァ。 僕も同じだよ。 でも、どうして僕がこんなゴミ共に足取りを合わせないといけないのかな? 到底理解できん」


「……………きっしょ」


 あ、今レイドさん暴言吐いた!

 分かるけど、分かるけど!

 ここ、今そのきっしょい張本人がいるから!

 厨二病に悪口を聞かれたらどうなるか、分かったものじゃない!


 まぁ、そんな小さなトラブルが起こった以外には特にこれといったイレギュラーもなく、会議は本題へと向かっていた。

 俺は出された紅茶を飲みながら書類に目を走らせる。


「――へぇ」


 『亡霊鬼の宴』、ね。

 存在自体は分かっていたけど妙に奇天烈な組織名である。

 ちょっとばかりネーミングセンス、終わってると思うの。


「見ての通り、内通者――否、その表現ではやや語弊がある、正確には、その組織だ。 『亡霊鬼の宴』の目的自体はまだ調査不足で不明だが、内通者としての役割を果たしてしまっていることは確定している」


「――――」


 全員がそっと包帯男――レアストを目にやる。

 

 なんせ、この場で最も信頼がないのは何を隠そうレアスト・メシアその人だからね。

 俺ではないことに驚きを隠しきれない。

 いや、騎士だけは俺を胡乱気な眼差しで見つめているようだ。

 ちょっと心外である。


 確かに裏で色々暗躍してたりするんだけどな。


「首謀者は不明。 儂の方で首謀者らしき人物と接触したが、それもブラフだろうな。 おそらく、何重にも同じようにベールが展開されておる。 どれだけ首謀者を暴き出そうとしたところで見つかるのは偽物ばかり」


「――――」


「儂が調べられた情報はこの程度じゃな。 言っておくが、流石に情報源は秘密だぞ? そこまで教える筋合いはないからな」


「えぇ。 その点異論はないです。 貴重な情報提供感謝してもし切れません」

 

「そうか」


「――――」


 そして、会議は進む。



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