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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
一章・「赫炎の魔女」
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初老の少年


 久章の構成に思い悩んでいたら十章の大筋が出来上がった件について。

 十章はあの男が活躍する予定です。

 










「――熟れ合いはさっさと終わらせろ、アレストイヤ」


「あら、辛辣ですの」


「当然だ。 無駄な事は、嫌いだ」


 そうアレストイヤを制したのは後ろの控えていた青年だ。

 その瞼の下には睡眠不足からなのか凄まじい隈が浮かんでおり、青年の体は枯れ枝のようにやせ細っていた。

 神経質そうな男である。


 その青年の瞳が俺を捉える。

 「……?」と怪訝そうに首を傾げる青年。


「つかぬことを伺うが、ヴィルスト殿、彼は何者なのだ?」


「あぁ、紹介が遅れた。 彼は新しい娘の護衛だ。 大船に乗ったように信頼してもらって構わないよ」


「そうですか……」


 明らかに不満がありそうで不満しかない青年。

 まぁ、そうなるよね。

 俺のような見ない顔ぶれ、そりゃあ警戒するわな。

 でも、彼の反応からしてそれなりにおっさんのことも信用しているっぽい。


 俺としてはちょっと理解できんな。

 

 変にちょっかいかけるわけにもいかず、俺を無言を貫く。

 今ここで下手に信用を失うわけにはいかないのだよ!

 

 というか今更だけの向こうの騎士も敬意とかあんまりないな。

 ただ何となく付き従っている印象である。

 まぁ、それでも一定の信頼はあるようだな。

 そうでなきゃこんな会議に呼ばれないだろうし。


 というかどうしておっさんは俺なんかを呼んだんだよ。 

 立場上逆らえないので、当然俺はそれに従うこととなった。

 ちくしょう!

 権力の暴力だパワハラだ!


 なんでも後学のためらしい。

 交渉の手管なんてとっくの昔に熟知しているっつうの。

 まぁこれは交渉じゃなくて会議なんだけどね。

 だからこそますますおっさんの意図が分からん。


「馴れ合わない、話さない、同じ空気を吸わない……行くぞ、アレストイヤ」


「了解っ」


 結局、ヴァン家の主徒は俺たちと違う通路を言ったみたいだ。

 ドライ極まりない騎士である。

 

「しっかしあれが【龍殺し】のヴァン家ね。 エロいだけが取り柄じゃねぇぶほっ」


「粗相のないように」


 いや、だって本音だからしょうがないじゃんか!

 何故そこまで俺を憎々し気に睨むシルファー。

 ちなみに、【龍殺し】っていうのは別に〈老龍〉をぶっ殺したわけじゃなく、彼らが滅ぼしたのは別の龍である。


 まぁ、どっちも大差ないんだけどね。

 これが終わったらちょっと調べ直してみますか。

 そして、俺たちは淡々と豪華絢爛な通路を歩いていった。

 
















 数分後。


「着きましたね」


「やっぱ屋敷で慣れてたけど、部屋を見つけるのに数分も掛かるなんて異常だよな」


「そうですか? もっと長い屋敷だって幾つもありますよ」


「貴族社会すげぇー」


 片や今日の日銭を稼ぐので精一杯な一般ピーポー。

 片や贅沢の限りを尽くす貴族ピーポーたち。

 うん、内戦がいつ起こってもおかしくはないな!

 江戸幕府の気持ちをとくと味わうがよい!


 そんな戯言を心中で吐き散らしながら、俺は思いっきり豪華な金縁の扉を開いた。


「――どうやら、俺たちが三番手だったみたいですね」


「おや、ルシファルス家の皆さまではありませんか。 意外と遅かったのですね」


「止めろ。 無駄に馴れ合うな」


 まず真っ先に飛び込んできたのはつい先ほどあったばかりの凸凹主徒なアレストイヤと青年のコンビである。

 一体どんな手段を使ったらここまで早く付けるのやら。

 流石に疾走なんていう小学生のようなことはしないし。


 もしや瞬間移動でもしたのやら。


「――久方ぶりだな、ヴィルスト」


「えぇ。 何年ぶりでしょうかね」


 そして暫定一位である少年――それこそ幼稚園児と見間違えてしまいそうな外見の――がフレンドリーに話しかけてきた。

 えっ。

 なにその偉そうな口調。


 あとおっさんも何敬語使っているんだよ。

 ヴァン家のお嬢様にすら使っていなかったじゃないか。


「アキラさんの困惑は分かりますよ。 私もかつてあの方を見た時は相当驚愕しましたから」


「そうかい。 じゃあ、あの幼児は一体誰なんだよ」


「……ルイーズ・アメリア。 かつてこの王国に多種多様な発明の渦を巻き起こした紛うことなき天才です。 その齢は、既に千を突破しているらしいです。 基本「四血族」に限らず貴族の当主は代々受け継がれてきましたが、アメリア家は例外中の例外です」


 シルファーがそう小声で補足する。


「なんせ、当主が不老不死なんだからな……」


 マジか……

 ならばまず間違いなくメィリと同じくこの世の理を拒絶した不死者だな。

 賢者殿と関係性があるのかないかは知らないが、稀有な存在であることは間違いないな。

 

 それと同時に納得もした。


 そんな重鎮だからこそ、おっさんは敬意を払いあのように畏まったのだ。

 確かに、言われてみるとあの少年――厳密に言うと老人――からは周囲を隔絶するような独特の雰囲気を感じる。

 年分不相応に落ち着いているしな。


「ホント、癖が凄いな「四血族」」


「……まぁ、それが許されるだけの功績がありますからね」


「被害者面して言ってるけどお前が癖強面子の筆頭だからな。 そこら辺、勘違いするなよ」


「ちょっとどういうことですか!?」


 と、その時不意に再び扉が開かれた。


「――おっ。 全員揃っているようだな」


 

 

 

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