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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
一章・「赫炎の魔女」
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蛇足『傲慢』と執事


 遂に買ってしまった呪術。

 というか、起動なんとか編もやるんだ。 

 話数的に大丈夫なのかな……







――そこは、荒れ果てた大地に堂々と鎮座していた。


 その城を構成するブロックの一つ一つは、売れば誰もが欲してやまない金銀財宝を嫌になる程金貨が手に入るである。

 当然、この城の概要を考慮するとそのような不埒者は現れないだろうが。


 そして、舞台は巨大な城の最上階である。

 

「――ふむ。 やはり、この城の雰囲気はなれねぇな」


「我慢するのだ、レギ」


「そうは言ってもよォ。 どうも、この雰囲気は性に合わねぇよ」


「それに関しては同感であるな」


 カツカツ、と二つの足音が響き渡る。


 一人は黒髪の大男だ。

 その身体は限界にまで修練されており、研ぎ澄まされた刃を思わせるような戦意と威圧感を無意識的に醸し出している。

 

 もう一人はその大男の腰ほどの背丈しかない少女だ。

 鮮やかな紫苑色の長髪を乱雑に纏めている。

 その瞳は猫のように丸かった。

 二人は仲睦まじい様子でスタスタと城の廊下を歩く。


「――おや、お早い到着ですね」


「よォヨセル。 久方ぶりだな」


「えぇ。 数か月ぶりですね。 しかし、元来寝坊し会議に遅れる貴方が何故こんな時間帯に?」


「おいおい、容赦ねぇな」


「そういう性ですから」


「ガッハッハ。 違いねぇ」


 包み隠さない問いについ苦笑いを隠しきれない。


 大男とヨセルとは数十年の付き合いだ。

 あくまでも一介の執事と騎士団団長。 

 彼らが交わることはないだろうと誰もが思っていた。

 だが不意に二人は出会い、そして今に至っている。


「――ちょっと、諸事情があってな」


 大男はそう目を細める。


 そのナイフのように鋭い瞳に映る感情は多種多様である。

 怒り、悲哀、困惑、後悔。

 それを何一つ語弊なく理解したヨセルは、だからこそ何も問わない。

 今の彼に何を言っても無駄だと分かっているから。

 

 なら、せめて自己満足だとしても。


「――無理、しないでください」


「――――」


「それと、メイル嬢もレギウルスさんが無茶し過ぎないように私の代わりに見張っておいてくださいよ?」


「もちろんなのだ」


「……これはこれでちょっと恥ずかしいな、オイ」


 だが、それでも大男――レギウルスにはヨセルが己のことを心から懸念していることは分かっていた。

 だからこそ、レギウルスは笑顔を返す。


「誰に言ってんだよ。 俺が本気だすことなんて、それこそあの〈老龍〉が復活でもしない限りあり得ねぇよ」


「……そうですよね、『傲慢の英雄』」


「俺にはちょっとばかり分不相応な異名だと思うんだけどな」


「少なくとも、僕は貴方のことを認めていますよ?」


「そいつは結構結構」


 ガッハッハ、と快活に笑いながらレギウルスは扉を開け、ヨセルに踵を返す。


(……無茶かぁ)


 レギウルスは目を細くしながら心中でそう呟く。


 本当は、今すぐにでもレイスを追いかけてあの真相を暴き出したかった。

 だが、メイルやヨセルのような存在のおかげでなんとか踏ん張っているのが現状である。

 

 ――いつ、それが決壊するか分からない。

 もし、ヨセルの懸念通りのことが起こったのならば。

 自分は彼の言葉を守り切れるだろうか。

 正直、これといって自身が無かった。


 でも、その弱みを周囲に見せることはできない。

 小さな綻びは決定的な亀裂を招く。

 そのことをレギウルスは知っているから、自分を何とか覆い隠す。


――無理に笑みを浮かべたレギウルスの横顔を、心配そうにメイルの丸い瞳が満つ見つめていた。















「――ん? 一番乗りじゃねぇのか」


「おや、レギウルス殿ではないか。 このような時間帯に何用だ?」


「会議だよかーいーぎ。 ったく、どいつもこいつも俺のことを何だと思っていやがるんだよ、全く」


「自業自得って言葉を知らないのかい?」


「盛大な皮肉ありがとよ。 首捥ぎ取ろうか?」


「私は別に君を揶揄したつもりはないよ。 ただ、事実を告げたまでだ」


「そうかい」


 うんざりしたようにレギウルスは目の前でニヤニヤと笑みを浮かべる好青年――に見せかけた悪魔を一瞥する。

 自分がこの立場へなったのはもう数えるのも馬鹿らしい程昔の話だ。

 当然、彼ともそれなりに面識はある。


 だがとてもじゃないがヨセルへと抱くような好印象はとてもじゃないが思い浮かぶことができなかった。

 それもこれも、彼の醜悪さを理解しているからであろう。

 何となしに「チッ」と舌打ちすると、何故か腹部に苦痛が。


「仮にもレギも団長なのだ。 礼儀作法を学び返すのだ」


「す、スンマセンでした……」


 苦痛に悶絶しながらレギウルスは自分を見下ろすメイルを明らかに睥睨しながらも何とか謝罪する。

  

 その光景を青年――カエサル・ガーレズは、「尻に敷かれるとはまさにこのことだな」、と冷静に分析しならも微笑ましそうに目を細める。

 

「レギ……団長に代わって謝罪するのだ」


「大丈夫、もう慣れてるから」


「そうであるか。 カエサル殿は誰かさんと違って寛容であるな」


「その誰かさんって俺のことですか!? 俺のことですね本当にありがとうございましたぁああ!!」


「騒がしいのだ」


「ぐほっ」


 再び鳩尾に苦痛が。


 あくまでメイルは副団長、つまりレギウルスの部下ではあるがそんなこともお構いなしに殴打が炸裂した。

 あの人外の身体能力で有名な『傲慢』の肉壁すらもいとも容易く貫くメイルの筋力に戦慄しつつ、カエサルは二人の痴話喧嘩を眺めていた。



 

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