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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
五章・「モノペウス・ザ・ネーロ」
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「アハッ」


「――ッッ‼」


 水晶龍はらしくもこちらへと雄たけびを上げながら特攻とする。


 やっぱりな。

 言うに及ばないが、こいつが恐ろしい程に挑発に弱い。

 それは無闇矢鱈な矜持が起因か。


 まあ、そのルーツなんて心底どうでもいい。


 それを把握したとして、俺の役割なんてほとんど差異が生じることはないのだから。


「――――」


 水晶龍は猛烈な勢いを血を踏み締め、進みゆく――ことは、叶わない。


 なにせ、そもそも踏み締める大地が消失しているのだからな。


「――!?」


「残念残念。――じゃあ、死ね」


 俺はあらかじめ構築していた『蒼海』の術式を解放することにより、空洞に自由落下に従い落下していった水晶龍へ猛攻を加える。

 

「――――」


「もうちょっと同胞は構えよ、ゾンビ」


 が、腐食龍はそんなこと知ったことではないとばかりにリズムカルな仕草によりこちらへと急迫そしている。

 だが――その動作は、推し量れない程でもない。


 故に、結果は必然。


「――『起動』」


「――――」


 そして、音もなく俺へと人間離れした脚力で接近していった腐食龍は、前触れなく振り落とされた鉄拳により沈むことになった。

 否、鉄拳ではない。


 正確には、廃墟の一室が頭上より壁の垣根を超え、落下していったのだ。


 その衝撃に、さしも腐食龍であろうがたたら踏む。


 無論、それを俺が逃がす筈がない。


「――疾っ」


「――ッ」


 どうせ亡霊の類なんだから斬撃は意味をなさないのだ。

 ならばと俺は猛烈な勢いで腐食龍へと飛び跳ね、そのフラスコ内の液体を盛大にぶちまけていった。

 

 それと同時に木霊するのは苦悶に満ち足りな声音。


「!!!!!????」


「やっぱ、これは効くか」

 

 俺はそう嘆息しながらも、反撃を危惧しバックステップ。


「――ッッ‼」


「早いね、お前」


 が、それを見計らったかのように突如として廃墟を構築する床が蠢動し、直後には大量の破片と共に床が砕け散る。

 無論、その器物損害罪の主犯はどこぞの頑固者で。


「貴様――‼」


「はいはい。というか、ホントにパターン皆無だね」


 ちょっと声が上ずった以外に差異ないじゃんか。


 そうツッコみながらも、俺はまるで背中に目でもあるかのような的確さで振るわれていった斬撃の一切を捌く。

 腐食龍の戦線復帰はまだ先だ。


 今はこいつの相手でもするか。

 

 そう俺は嘆息しながら、本格的に水晶龍へと向き直り、そのまま軽やかに跳ね、同時に藍色の刀身を振り落とす。


「ぐぅぅぅぅっ‼」


「――――」


 その一閃には俺がそれまで温存していた魔力がふんだんに併用されており、それ故にその重さは先刻の比ではない。


「ほいっさっ」


「――ッ!」


 俺は軽やかな手並みで廃墟を舞台にし、まるで踊り舞うようにして水晶龍と剣を交え、鎬を削っていく。

 そして水晶龍の痛烈な横薙ぎ一閃が披露される――直前、彼が唐突にバランスを崩す。


 よくよく目を凝らしてみると、水晶龍の足元には強固な岩盤が枷となりしっかりと絡まりついており、どうやらそれに引っかかってしまったようだ。

 無論、それを俺が見逃す筈もなく。


「ふんっ」


「――ぁがっ!」


 狙い定めたのは水晶龍の胴体部分。

 一文字の裂傷が深々と刻まれたのと同時刻に鮮血が虚空を踊り舞っていき、その一滴が偶然にも頬にこびりついた。


















 苦悶に頬を歪ます水晶龍へ、


「――『龍穿』」


「――ッ! クッ……ソッ‼」


 極限にまで圧縮していった水滴の弾丸がその強固な肉体を抉っていこうと猛烈な勢いで飛翔していった。

 そして、苦痛に喘ぐ水晶龍にそれを回避する術はない。


 故に、結果は必然。


「――ぁ」


「脳天を撃ち抜かれた人って、そういえばどんな気分なのかな?」


 風穴が開かれていった水晶龍の額から鮮血と共に得体の知れぬ気色の悪いゲル状の物質が溢れ出していった。

 どうせ脳の一部とかだろう。


「――――」


 と、追撃を加えようとする俺に対して、それまで過剰に反応していた水晶龍は棒立ちのままである。


(ああ、そういうことね)

 

 おそらく、再生自体は既に始動している。

 が、脳という人体における最重要な器官を治癒するのはそれなりに繊細な作業が必要としてしまい、それ故にこうも遅滞してしまっているのだろう。


 これは存外僥倖。


「――だったんだがなあ」


「――――」


 が、こちらが常時張っていた気配察知包に、なにやら強烈な気配が無許可に侵入していったようである。

 俺は舌打ちを零しながら、『羅刹』で振るわれた斬撃を逸らしつつ、悪態を吐く。


「おいおい、再生速過ぎだろうが」


「――――」


 無論、刺客は先刻沙織直々に付与してくれたその聖水を存分にぶっかけられ、戦線復帰は厳しいと判断されていた腐食龍である。

 が、所々焼き爛れたような部分が見受けられるな。


 余程聖水が効いたのか。


 やはり、その動きもどこか精彩を欠いているようである。

 

 まあ、だからこそ再度聖水を飛散させることは警戒の度合いが高すぎて必然的にちょっと、否、かなり厳しいような。

 

 ならば。


「――『起動』」


「――――」


 どうせこいつはただただ即死魔術を多用しやがる、いわば、モノカルチャー経済的な状態の野郎だ。

 芸達者に比べるとどうしても見劣りしてしまうきらいがあるな。


 というワケで、俺の対応も乱雑になってしまい、廃墟を構成していた巨大な岩盤が存外に猛威を振るう。

 無論、こいつは死骸だ。


 それ故に物理ダメージは無効だろう。

 だが、数瞬程度時間を稼ぐことくらいは叶うはず。


――水晶龍へ止めを刺すために要する、時間を。


「――『龍虹晶』ッッ‼」


「ふーん」


 と、蚊帳の外であった水晶龍は大地へ触れあい――直後に天地変異の前触れと見紛う程に大地が蠢動する。

 成程……下に忍び込ませたか。


 十中八九、こいつの魔術が『水晶の形状、速力、軌道云々を操作する』というモノ。


 今回も地面の奥深くに水晶を忍ばせたのだろう。


 しかも、今回はほとんど魔術を感じられないな。

 比率としては、魔力1:他9という塩梅だろう。

 後者が大部分を占めている以上、俺の『羅刹』は効果を及ばないだろう。


 だが――否。だからこそ。


「おいおい……この程度の弾幕で俺を仕留めきれるとでも?」


「……!」


 だが、魔力に頼らない分、必然的にその速力は低減するよなあ。


 故に、最小限の魔力でも十二分に回避することが叶い、魔力は基本的に節約したい勢である俺からしてみれば願ったりかなったりな戦局である。

 

 着実に自らへと接近する俺へと、水晶龍は無闇矢鱈に猛攻を浴びせようとするが……無論、ほとんど無意味。

 冷静さを欠いた状態なんて納豆菌の無い納豆レベルである。


 俺は軽やかにこちらへと飛来する水晶の一切合切を潜り抜け、水晶龍の懐に潜り込み、いざその刀身を振るおうとしたその時――、


「――残念だったな」


「――――」


 水晶龍はおおむろにその顎門を開き、口元に未知のエネルギーを集束させていく。


(不味いな……)


 あえて繊細さを欠いた状態を演じていたのは、俺に絶好の好機であると、そう勘違いさせるたけか。

 そして、こいつが放とうとするのは『ブレス』。


 その実、『ブレス』は魔術とほぼほぼ無関係であり、純粋に火袋という特殊な臓腑により成立しているのだ。

 故に、『羅刹』は無意味。


 魔力で耐久を強化するか?

 否、奴もこの千載一遇の好機にむざむざ妥協なんて愚行をする筈もないだろう。

 十中八九、こちらの身体強化さえも上回る一撃をお見舞いしようとする。


 だが、このタイミングで俺に一体全体何が――、


「――『ブレス』」


 俺へと殺到するのは余波のみで肌が焼き爛れてしまいそうな爆炎だ。


 それに包み込まれてしまえば、幾ら俺とはいえども、容易く灰塵に帰すだろうな。


「術式改変――」


 俺へ口元に愉悦故の嘲笑を浮かべながら、


「――『天衣無縫』」


 その声音を、紡いでいった。、




 余談ですが、アキラ君はこの廃墟自体を一種のアーティファクトにしております。

 

 本当は本編で語るはずだったのですが、どうにもそれが無理そうなので、このような形式で解説させてもらいます。


 色々と付与していますから、地面からガッチリホールドしたりとか、そういうカンジの小手先技ならだいたい可能ですよ。


 ちなみに、製作者はヴィルストさんではなくライムちゃんです。

 

 ここら辺には色々と事情がありますが……それはまた別の話ですね。



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