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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
五章・「モノペウス・ザ・ネーロ」
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番外編・異世界の避暑 前編


 ストレス溜まったから書きました。

 

 悔いはありません。


 ちなみに、時系列的には言うに及ばず『清瀧事変』ではなく、龍艇船での一幕だと思います。、













「――夏だ」


 その一言に空気が固まったような錯覚を覚える。


 一秒、二秒後。

 そして、俺が吐いた声音の意図を漫勉なく理解した仲間たちは、


「ちょっと沙織! それはルール違反なのだ! そんな暴虐、許さないのだ!」


「べ、別にこれくらいいいじゃん! ちょっとルールを無視したって、大差ないじゃん!」


「ほう……『英雄』。お前の片手剣、存外業物だな」


「ふっ。当然だろ。なにせあのルシファルス家の当主が直々に付与したんだ。この性能で当然だろいが」


「流石、ルシファルスクオリティー……」


 まるで何事もなかったかのように俺の声音をスルーし、各々が談笑を楽しんで――、


「――って、聞けよ! というか、聞いてたろお前ら!」


 と、猛然と声を張り上げるのだが、こちらへ視線を向けた彼らの瞳には如実に「あれ? 居たの?」と言っており……


「あれ? 誰?」


「誰!? 悪化してない!?」


 どうやら俺は存在ごと忘れられたらしい。


 なんだこれ。

 新手の虐めか?


 邪推する俺へ、「また面倒なことを……」とでもいうような表情でガバルドは俺を見下ろしながら問いかける。


「……で、今度は何をやらかすのか。疫病神」


「ちょっと待って欲しい」


 疫病神ってなんだよ。疫病神って。


 そもそもの話、俺ほど品性行為な人物なんて存在しないのだ。

 唯一心当たりがあるとすれば、『傲慢の英雄』を奴隷にしたり、『英雄』に国家転覆罪の片棒を担がせたり……。


 あれ?

 もしかしって俺って、正真正銘の疫病神の類では……。


 それが必要不可欠とはいえ、流石にそれは……。


「何百面相してるんだよ。妄想でもしたか?」


「もちろん、沙織とあんなことやこんなことを……って言わせるなよ!」


「お前……マジかよ」


「ニンゲン。お前はもう沙織に二度と近寄るな」


 あっ(察し)。


 どうやら墓穴を掘ってしまったようである。


 ちなみに、俺の場合年中沙織のことばっかり思案しているので、あながちガバルドの指摘も間違ってはいなかった。


 絶対零度の視線が俺へと注がれる。


 くっ……!

 いいだろう、俺もこの期に及んで羞恥心を感じる程に初心ではない!

 そう、胸を張り高らかに宣言してやろうではないか。


「ああそうだよ! 沙織にむらむらしてました! 何か文句でも!?」


「セクハラって言葉知ってるか?」


「…………」


 日本ならば張り手をされてもなんら可笑しくはない変態発言である。


 ちなみに、俺にそんな宣言をされてしまった沙織というと……。


「えっ……。恥ずかしいけど、ちょっと嬉しい……」


「それでいいのだ!? 本当にそれでいいいのだ!?」


 なんだろう、俺を愛しの沙織が受け入れてくれたというのに、この釈然としない感情は。


 いやね?

 別に許容されることに拒否感はないし、歓喜はある。

 だけど……あの沙織だよ?


 純粋無垢の代名詞たる、沙織だよ?


 そんな沙織がこんな感性に……。


 誰が悪い。俺か。俺なのか……。


「……どうしたアキラ。やけにしょんぼりして」


「いや……ちょっとね」


「お、おう……」


 なんだろう、この煮え切らない感情は。

















 と、そんな俺を見かねたのか、ガバルドは「はあ……」とお馴染みの溜息を吐きながら、こちらを一瞥する。


「……で? 夏がどうした?」


「どうしたって……お前、それだけで連想できないのか……? 頭の病院にかけつけたらどうなのかな?」


「素直でよろしい。そんなお前には焼き鳥の気分を味わってもらうか」


「手伝うぞ、『英雄』(満面の笑み)」


「助かる、『傲慢の英雄』」


 何故こいつらは何食わぬ顔で殺人計画を暴露してしまっているのだろうか。


 図太いのか、もしくは嫌がらせなのか。

 いずれにせよ、俺の取るべき行動に差異は無いな。


「ライムちゃん。雑巾を用意してくれないかな? それはもう、たくさん。――だって、たくさん飛び散るからね」


「任されたわ」


 もはや、何が飛散するのかを述べる必要もない。


 良い笑顔で了承をしていった我が妹(笑)に頬を引き攣らせながら、沙織がおずおずと問いかけてくる。


「……ねえねえアキラ。今って確か地球で秋だったよね」


「まあ、そうだな」


 猛暑日に沙織(本体)との再会を果たして、早くも二か月もの月日が経過している。


 既に燦然と煌めく太陽は全盛期を過ぎ去っており、今やひらひらと紅葉が舞い踊る季節となっていたりもする。

 そんな丁度心地の良い季節に、どうして夏なんかとを……。


 そういうことらしい。


 確かに、当然の疑問だなと俺へ思い直しながら、ちらりと水晶ごしに外の景観を一瞥しながら言及する。


「いやさ、この世界の気候って滅茶苦茶だよな? ちょっと外行ってみ? 誇張抜きに干からびるぞ」


「ああ……そういうことね」


 この世界――というか、王国は極端に気候が狂っており、それは季節風や偏西風もクソもないちぐはぐなモノだ。

 唐突に砂嵐が生じるのは日常茶判事。


 酷い時には一年中王国が氷点下に包まれたこともあるらしい。

 そして、今現在もこの国独特の気候が存分に猛威を振るっている。


「なんかさ、もう砂漠か! って突っ込みたくなるほどの暑かったんだよな、外。――と、いうわけで!」


 これにて大前提の説明は済ませた。

 そろそろ、いい加減本題に入ろうか。


「俺、とっても異世界の避暑に興味があるんだよね」


「ああ……なんだかもう展開が読めたぞ」


 心底面倒くさそうな顔をするガバルドを流水が如き手並みで蹴とばしながら、俺は高らかに断言する。


「――異世界の避暑を、体験したい!」


 と、馬鹿正直に知的好奇心を満たそうとする俺へガバルドは怜悧な眼差しを向け……


「いや、そもそもこの龍艇船冷房機能が完備してるだろうが」


「ニンゲン……お前、そんなことにも気づかなかったのか。本当に、顔面を含めて残念なのだ。特に、顔面が……」


「おい止めろメイル! アキラだって、好きでこんな不細工になったんじゃないぞ!」


「素直なお前らには紐無しバンジージャンプを体験してもらおうか」


 こいつら、なんで普段はヒャッハーしてる癖に、こんなに現実的かつ的確なんだよ……意味が分からん。 

 と、憤慨をあらわにする俺へと、沙織が頬を赤らめながら、


「ひ、紐無しって……アキラ、変態!」


「メイル。沙織に教育に施したお前には、是非とも報謝をしなければな。具体的には深夜、一人でテラスで来てくれ。そこで夜景でも見てろ。――背後から近づく気配にさえも、気が付かない程にな!」


「あ、アキラ……。浮気……?」


 おや、沙織さんが優しく俺の掌を握り……あれ、なんらか次第に握力が増大して、骨髄が押し潰されて……


「痛い痛い痛い痛い! ちょ、壊れちゃう! 俺、壊れちゃう!」


「そ、そんなえっちぃこと言ったって無駄っ!」


「エロいか!? 今のエロかったか!?」


 どちらにせよ、メイルの死刑は決定済みである。


 レギウルスはそんな俺らに呆れ果てながら嘆息する。


「……お前らは相も変わらず仲いいな。でも、そもそも避暑なんて言っても、魔人国は存外寒冷な国だぞ?」


「うぐっ」


 そういえば、そうだったな。

 魔人国はありとあらゆる気団が押しとおる王国とは異なり、ほぼ毎日一定の分量でシベリア気団に類似する風が吹く。


 それ故に、避暑という概念とはあまりにも無縁なのである。


「くっ……盲点だった」


「ハッ」


 この調子だと、その身分故に快適な生活が保障されていった魔王はもとより、メイルも同様だろうな。

 ならば、俺の希望は奴一人である。


「ガバルド! 騎士食なお前なら……!」


「基本的に全身を氷結させていましたが何か?」


「…………」


 確かに、そうだよな。

 面倒なアーティファクトの類を併用するより、適当に氷結魔術を利用してしまえば心底容易いよな……。


「やっぱり、この世界には水着とか、避暑とか、そういう概念はないんだな……」


「避暑云々はともかく、水着ならあるぞ」


「!?」


 嘘だろ!?

 何故避暑という概念が存在しないというのに水着が……!?

 俺は周囲を見渡してみるが、それを否定する者は誰一人としておらず……。


「マジか……」


 そう、唖然と呟く俺であった。




 ……見切り発車で書き切りましたので、後編がどのタイミングで更新されるかは謎です。


 強く生きます。

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