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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
五章・「モノペウス・ザ・ネーロ」
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落雷と


 ……間違えて三人称にしてしまいました。


 気にしないでください。


 














――『臨界』。


 本来、『獣宿し』により衝突させる魔力はあくまでも大気中に散らばる幾つもの魔力因子なのである。

 それは多分に反動を考慮したが故だ。


 理屈上、『獣宿し』を任意で行使できる者ならば、容易く内部でも魔力因子衝突を果たすことは容易であろう。

 

 それにより生じる負担を度外視したら、の話であるが。


 レギウルスはその強靭な身体能力故に、たとえ大気中に生じる衝撃であろうが無傷同然で凌ぐことが可能。

 だが、それはあくまでも外部での話。


 最悪――木っ端微塵に砕け散る。


 あれを利用しておいて右腕が健在がアキラがおかしいのである。


 が、レギウルスも今やれっきとした化け物の一員。


 ある程度は耐えることもできるだろう。

 だが、覚醒直後故にそのある程度の天秤はほぼ機能することはなく、必要不可欠な情報は暗闇のッ最中。


――それが、どうした。


「――んなモン、立ち止まる言い訳にもなんねえよ」


「――ッッ」

 

 そんな些事に頓着したところで、一体何を果たせるというのは。


 レギウルス・メイカは『英雄』。


 ならば――それ相応の振る舞いをしなければならないだろう。


「――『臨界』ッッ‼」


「――――」


 強かに踏み込み、直後痛烈な衝撃波がそこらの管をあまりにも呆気なく蹴散らしてしまう。


 その剛腕が強靭な管と接触した瞬間、それこそ爆発でしたのかと見紛いそうな、そんな壮絶な衝撃が拡散される。

 無論、その被害にはレギウルス本人にも及んでいた。


 『臨界』の負担は、言うに及ばず『獣宿し』とは比較にもならない。


 だが――そんなの、知ったことか。


 ただ、前だけを見据えて。

 そして、後先考えず愚直に馬鹿正直に進みゆく。

 

――それこそが、レギウルス・メイカという男の根幹なのだから。


 それを、今更曲げる心算は、無い。


「――ッッ」


「くぅっ……ッッ!」


 少年は管を更に加圧することによりより強度を底上げするが――それでもなお、その剛腕を防ぎきることは叶わない。


 数瞬保っただけでも上出来。

 その剛腕が触れた瞬間、その道中の生涯の一切合切は成す術もなく消え失せ、無慈悲に薙ぎ払われていく。


(――ッ! 不味い‼)


 既に、レギウルスとの距離は無いに等しい。


 あの剛腕を一撃でも喰らってしまえば――それこそ、肉塊さえ残らず消え失せてしまうだろうと確信できる。


 ならば――、


「ほう……」


「悪く思わないでね、お兄さん!」


 依然劣勢。

 現状維持では少年の敗北は既定事項にさえなった。

 そんな逆境で取るべきなのは――無論、逃亡だ。


 恥も、外聞も一切かなぐり捨てる。

 尊厳という概念を完全に忘却し、少年は猛烈な勢いで管を器用にも鞭のようにしならせ、それなりの距離の廃墟の一角に引っ掛ける。


 管を操作し、後は一瞬で――、


「――遅ぇよ」


「――ッッ‼」


 が、その寸前、それまで少年を死守していた管の繭が絶大な威力を宿した殴打により弾け飛んでいった。

 既にレギウルスの右腕は満身創痍。


 あるいは、今にも剥がれてしまいそうな程の傷跡である。


 だが――依然、健在。


 少年は『臨界』を行使しながらもその程度の損害でよく済んだなと悪態を心中で吐きながらも、尚逃走を遂行しようとする。

 

 既に座標の固定は済んだ。


 後は、管の弾性力を極端に上昇させ、さっさと撤退を――、


「逃亡……ハッ。餓鬼らしくねえ手段じゃねえか」


「――ッッ!」


 が、伸びきった管の行く末をその超人的な視力により目視していったレギウルスは、管の残骸を神速の勢いで投擲する。

 無論、その狙いは伸びきった管だ。


「――――」

 

 そして、狙い違わず廃墟へと伸びた管を掻き切ったレギウルスは、たたら踏む少年へと、おおむろに近寄る。


「――っ」


「さてさえ……どうしてくれようかな。なあ?」


 こちらへ歩み寄るレギウルスの手元にはお馴染みの愛刀、即ち『紅血刀』が握られており、それを以て何を為すかは明白。

 退路も防がれ、逃亡も不可能。


 つまること――、


「あー。詰んだ」


「そういうことだ」


 それまでストックしていた管も一切出し尽くし、更に最大硬度の管さえも真面に傷跡の一つや二つさえも刻むことができないときた。


「この化け物め……」


「誉め言葉だぞ、それ」


「それはどうも。じゃあ――殺せ」


「――――」


 その冷え切った死生観がたった一言で否応なしに理解できてしまえるような、そんな冷徹な口調で勧告する少年。

 その瞳に、正常な感情なんて欠片も残っちゃいなかった。


「なあ。その前に、一つ聞いていいか?」


「どうぞ、勝手に。どうせ死ぬんだしね」


「なら、遠慮なく」


 レギウルスは柄に合わない、どこか神妙な表情を浮かべながら、どこかそこに慈愛さえ感じられるような声音で問いかける。


「――どうして、お前がこんなことを?」


「――――」


「別に、なんでもいいぞ。金のためでも、殺人に快楽を抱いてしまうからでもなんでもいい。俺はそんなことに頓着しないからな」


「……ああ、そうかい」


 少年は、先刻までの狂気はどこへやら、大人びた雰囲気で声音を紡ぐ。


「――僕は、誰かの命を刈り取りたかった」


「どうして?」


 憎悪?

 私怨?

 快楽?


 無論、可能性は幾らでも浮かぶ。


 が、少年の回答はレギウルスが予測したような品物ではなく――否、斜め上のモノであった。


「知りたかったんだよ。自分が何者なのか。誰かを殺せば、それが分かる気がした。――どうして、そんな風に思ったのかな。もしかしたら、僕を作った、あの人たちの悪質なプログラムかもしれないねえ」


「――――」


 大前提があまりにも抜け落ちており、故にその真意を推し量ることは叶わない。


 だが、紡がれた声音が決して虚言の類ではないと、そう否応なしに理解することはできた。


 だから――、


「――あっそ」

 

「――――」


 そしてレギウルスは容赦情けなく少年の端麗な容貌へと、痛烈な一撃を存分に浴びせたのだった。
















「あー」


「――――」


 ……どうしてだろうな。


 そう、俺は満身創痍の餓鬼を背負いながらそんな疑念を抱く。


 確かに、俺はこの餓鬼へと遠慮容赦のないインパクトを浴びせたよ。

 だが――それは、致命傷にはなりやしない。


 この餓鬼は存外強靭だ。 

 あの束縛の最中でもなお、満身創痍の傷跡程度で済んだんだから、その耐久はお墨付きであろう。


 無論、それを俺が見逃した筈がない。

 本来ならば餓鬼の首筋を鋭利な『紅血刀』で撫でなければならないし、実際俺もそうしていただろう。


 だけどなあ……。


「まあ、捕虜としては一応有用だからな」


 そう俺は一人勝手に納得しながら、餓鬼をルシファルスのジジイが作りやがった拘束具で雁字搦めにする。

 これはあのルシファルス家が直々の付与したモノ。


 故に、幾らこの餓鬼であろうとも容易く打ち破ることはねえだろうな。


 ちなみに、本来空間魔術が付与されたアーティファクトに人体や、それに類似するモノを格納するのは厳禁だ。 

 そんなことしたら本当に容易く誘拐事件が成立してしまうからな。


 が、アキラの粋な計らいなのは、今現在俺が保有するアーティファクトはその制限に縛られていることはないらしい。


 なんでも、アキラはルシファルス家当主のそれなりに親密な仲だとか。


 そうであるのなら、この対応も納得である。


 本来ならば捕虜である以上、余波でも喰らって折角生かしたのにも関わらず死亡でもされては意味がないからな。

 嘆息しながら俺は餓鬼をアイテムボックスへ収納する。


 こっちはあらかた片付いた。


 故に、今懸念すべきなのは、もっと別のモノである。


「さて……アキラはどうなったか?」


 俺が担ったのはこの餓鬼の始末。


 一応、殺していないとはいえどもそれは叶ったので問題ないし、新手が出現するような気配も今のところ皆無である。

 ならば、今の焦点はアキラの安否――、


「は?」


 そして――天上より降り注ぐ雷鳴がスズシロ・アキラのその御身を貫いていった。

 


ああああああああああああああああああああああああああ‼‼

 データが、データが消えた!

 

 それも、相当重要なシーンが!

 また書き直し!?

 書き直しなんですか!?

 もうやだああああああああああああ!!




 クレヨンしんちゃん、面白いなあー(現実逃避)



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