茶会の終幕
私ちゃんと復活してますよー?
復帰してますよ?
この世界には多くの不死者が存在する。
吸血鬼然り、神獣然り、「呪い」然り。
そのどれもが尋常ならざる力を持ち、表舞台裏問わず世界中でその手腕を発揮している。
そして今目の前にいる〈黄昏の賢者〉メィリも同じく不死者の一人である。
それ自体はまだ良い。
そういう類の奴は何度も見たことがあるからな。
だが、この賢者、魔力の流れは他と異なっているが、それ以外はほとんど俺達人間と差異はないだろう。
気配からしてもそれが分かる。
魔人族や亜人族など、人ならざる者たちは、それぞれ独特の器官や魔力、そして魔力を持って居る。
「――でも、お前からはそんな気配すらもしないんだよ」
「――――」
「教えてくれ。 一体、何があってお前はそうなったんだ?」
俺はそう真摯に語りかける。
現状、メィリがこの答えを口に出す可能性は限りなく低い。
なんせ、メィリにはなんの利益がないからな。
だから、初めから俺は期待しちゃいない。
でも、もしメィリの口から真実が吐き出されるとしたのなら――、
「――〈黄昏の賢者〉、これが私のこの世界での渾名ですわ」
「――――」
「ですがもう一つ。 私は――かつての〈守護者〉でもあります」
「――――ッ」
俺はその言葉を目を大きく見開く。
流石にこの展開はちょっとばかり予想外だな……!
〈守護者〉。
約四千年前に結成された、厄龍殺しを目的とした組織だ。
そのメンバーにはルインに体を乗っ取られたマツリとやらも連なる。
俺が過去あの図書館で邂逅した眼鏡もその一人だ。
そして、今目の前でこちらを、ジッと見定めるように見据える少女が、己がその一員だと宣言する。
「……理解、できんな。 なら、お前は何故こんな下らない遊戯に加担する? それが、この戦乱こそがルインが導き出した策謀だと、分かっていながらも」
「――――」
「――答えろよ、〈黄昏の賢者〉!」
腹の底から声を引き出すが、メィリはただ俯くばかり。
その口が開かれることは、無かった。
そしてその沈黙こそが何よりも肯定の証である。
「――これが、私が言える限界ですわ」
「あぁ、そうかい。 理解したよ」
俺は苛立ちげに舌打ちをしながら返答する。
この様子だと、明らかに理解した上で犯行に及んでいやがる。
その理由は、まだ俺は知らない。
だが、ただ一つ今回の茶会で分かったことがある。
「――俺は、あんたをいずれ殺すよ」
「それを、私自身が許すとでも?」
「アッハッハ、愚問だな。 お前がどう考えようが何をしようが関係ねぇ。 俺は俺のやり方であんたを滅ぼすさ」
「それが口だけでないことを祈りますね」
「そうかい」
俺はそう言い残すと、身を任せていた椅子から下りる。
「おや、もう帰られるのですか?」
「当ったり前だろうが。 言っとくが、俺が二人っきりになりたいのは沙織だけなんだよ。 お前みたいな不細工となんて、想像しただけで鳥肌が立つぜ?」
あ、冗談で言ったつもりだったけど本当に鳥肌立った。
どうやら本能的に彼女を拒絶しているらしい。
ちょっと不憫に思わなくもない。 思わない。
「――次会う時お前がまだご存命であるといいな」
「それはお互い様ですわね」
「ハッ!」
俺はメィリの戯言を鼻で笑い飛ばし、屋敷へと繋がる豪華な扉へと向かって行き、ドアノブを引き、通り抜けた。
こうして、最初の茶会は終幕を迎えたのである。
「――どうだったかい、〈賢者〉との茶会は」
「いやー、控えめに言って目から至福が零れ落ちそうですねとでも言っておきましょうか。 それと、意外と可愛かったですね」
もちろん、法螺話の類である。
今でもあの賢者を思い出すと吐き気が止まらないし、鳥肌も健在である。
もはや自分がどうして彼女をここまで嫌っているのかすらよくわからなくなってきた。
ただ、それを正直に口に出すほど俺は愚かではない。
「……娘と言うものがありながら、他の異性に鼻の下を長くするのは感心しないね」
何故か何かを警戒するように目を細めるおっさん。
意味が分からぬ。
「ちょっと何言ってるのか分かりませんね」
「ハッハッハ。 そうかい」
こっちはこっちで吐き気がする。
余計な詮索は止めて欲しいと思う。
不意に、俺はある違和感を感じ取った。
(……? 気配? にしてはかなり薄いな)
俺はジッと気配の発生源を括目する。
すると、まるで霧が晴れたかのように彼が姿を現した。
「――確か、レイドとか言ったか?」
「……………然り」
突如として現れたのは何時か見た黒髪の青年だ。
それを横目に、特に驚いた様子もなくおっさんが説明する。
「あぁ、紹介が遅れたね。 彼の名はレイド・ハールス。 私の護衛だ」
「さいですか」
まぁ、娘に護衛置いといて自分だけノーマーク、なんてことはないよね。
しかし、それにしては気配遮断が上手いな。
それこそ本職のアサシンにすらも匹敵するか。
もしや前職は暗殺者か。
「別に彼のことは気にしないでくれ。 彼がここで得た情報を外に漏らす可能性は限りなく少ないよ」
「そうでしょうね」
もしそんな信用すらもなかったら護衛なんて務まらないだろう。
「それじゃあ俺はお暇させてもらいますね。 代わりがいるでしょうが、ちょっと心細いですからね」
「そうかい。 でも、君屋敷の構造把握しているのかい?」
「あっ」
結局レイドに案内してもらうことになりました。




