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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
五章・「モノペウス・ザ・ネーロ」
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激怒と


 主人公にムカつくと思います。


 私も事実キレかけました。 

 ですが、後に「ああ……そういうことね」と納得するように仕掛けておりますので、そこら辺は安心してくださいな。













――どうして、あの日のアキラの笑みが機械仕掛けに思えたのか。


 それは、今も分からない。


 だが――これだけは分かる。


「――――」


「なっ」


 岩盤を砕き、四方八方へ散弾のように飛散してしまう程に勢いで跳躍する俺を見て、動揺する腐食龍。

 俺が狙い定めたのは、無防備な腐食龍の寝首――じゃない。


 正直なところ、そんなのは些事だ。


 今固執すべきは――、


「おりゃあああああああッッ‼」


「はっ?」


――明白に我を忘れている大馬鹿野郎の目を覚ますことである。


 俺は勢いを減衰させないように、踏み込みを省略し、正真正銘ジェットのように加速し――凄惨な笑みを浮かべるアキラの頬筋を盛大に鉄拳でぶち抜く。


 手加減なんて皆無。

 今更匙加減なんてモノに固執しちゃあ、どこにそれは響きやしない。

 だから、妥協も、まして躊躇もない全身全霊の一撃を叩き込む。


「ぐふっ」


「シャオラ―――‼」


 ついでとばかりにその憎たらしい頭部をサッカーボールに見立て、なんら躊躇うこともなく蹴り上げる。


 流石にアキラも身内からこれほどまでのい容赦情けのない攻撃を受けるとは想定していなかったのか、絶句していた。

 そして、数瞬かけて状況を噛み砕き、


「――裏切るつもりか、レギウルス」


「――――」


「マジなら忠言してやんぞ。――死ぬぞ、お前」


「だろうな」


 『誓約』は既に確約済み。

 今更になって反旗を翻すのならば、俺に下るのは、万死に値する贖罪であろう。

 だから――、


「――だからって引くつもりもねえし、引かねえよ」


「……どうしてっ」


 心底当惑したかのように問いかけるアキラへと、俺は誰かさんをリスペクストし、如実に中指を立て、声を張り上げる。


「――いい加減、目ェ覚ませや、クソ餓鬼‼」


「ぁ――」


 俺の凄まじい気迫にさしもアキラであろうとも身じろぎ一つできないらしく、目を剥きながらその真意を――、


「お前がそんなに取り乱しているってことは、十中八九、沙織が起因なんだろうよ」


「そこまで分かってんなら、どうして――」


「――んなの、決まってるだろうがッッ‼」


「――――」


 その凄まじい剣幕に押し黙るアキラの胸倉を俺は無遠慮に掴み、どれだけの難聴であろうとも否応なしに聞き逃さないように、吠える。


「沙織の元にはメイルも、お前の妹だって居る‼ メイルはともかく、妹くらいは信用しろよ! 家族なんだろ!?」


「そんなの、ただの綺麗事、」


「ア”ァ? 綺麗事で何が悪い!?」


「――――」


 所詮、俺はおぞましい程に命を刈り取っていった殺人鬼。

 そんな俺が吐き出す綺麗事なんて、何の意味も持たないのかもしれないだろうな。

 だが――、


「――家族に肩を預ける。こんな至極当然なことに、疑念が沸くのかよ、お前は!」


「――。当たり前だろうが」


「――――」


 極限にまで感情を押し殺し、それ故にその魂に宿る思いは、どこまでも露骨で、いじらしく――。、


「誰かを信頼する? ――んなの、幻想だ」


「――――」


「俺は、沙織以外の誰にも肩を預けない。誰も信じられない、自分さえも無条件に肩を預けることのできない成り損ないに、誰かを信じろって?」


「――――」


 アキラは乱雑に胸倉を掴み取っていた手首をはねのけ、そのまま俺の天地を柔道の要領でひっくり返す。

 何とか受け身をとるものの、いつしかアキラはこちらへ背中を向けており。」


「――今更、お前ら人間が、俺に寄り添うな」


 














――それは、紛うことなき拒絶の一言。


 それ以上もそれ以下でもない。


 簡単な話だ。

 

(……慢心か)


 どうやら俺は、あの能天気なアキラの内側に潜むそのドス黒い闇を抱えているということを、真に理解できていなかったようだ。

 別に、ただただ阿呆な人物だなんて思っていなかった。


 あの瞳。

 あの、深淵を思わせる瞳を持ち合わせる奴が、そりゃあ生半可な葛藤を抱いている筈がないもんなあ。


 いや、違う。


 もう、とっくの昔に葛藤だなんていうレベルを超越している。


 既に、アキラの中では回答が導き出されているのだ。

 奴は、それを正答を信じて疑うこともなく、あの真っ白な少女にだけ縋り、それ以外の『人間』を拒絶しているのだろう。


 それも、それは根本的なモノときた。


 並大抵の声音では――否、どんな言葉であろうとも、あいつの魂の芯にこの想いが木霊することは、決してないのだ。

 

 ならば――、


「シャオラ―――ァ!!」


「!?」


 音もなく、しなやかな猫のように起き上がり、右腕だけを『獣化』し、その阿呆な頬筋へ、強烈なパンチを繰り出す。

 

 地響きが鳴る程の勢いで放たれていった一撃は、流石のアキラであろうとも響いたらしく、脳震盪により失神することはないが、歩行するその脚は覚束ない。

 

 そりゃあそうさ。

 魔人族最強の男、『傲慢の英雄』が放つその剛腕が、そこらの有象無象と比較できるような品物である筈がねえよなあ。


「……どういう心算だ」


「どうもこうもねえよ。――アキラ、あんときの延長戦だ」


 無論、今になって『紅血刀』なんていう物騒な品物を扱う程の愚行をこの聡明なる俺が成すはずがない。

 あくまでも、併用するのはこの鍛え抜かれた拳たった一つ。


 もちろん、こんな生身の拳よりも、ルシファルス家当主により新たに改良された鋭利な深紅の刀身の方が、まだ有用だろう。

 

 だが――これで、良い。


 アキラには、きっとこれが一番効く。


 構える俺を一瞥し、アキラは盛大に眉を顰め、ちらりと周囲を見渡した。


「今がどんな状況なのか、履き違えたワケじゃねえんだよな?」


「当たり前だろうが」


「――――」


 龍たちの意図は知らんが、何故かこの茶番を至極穏便に傍観している。


 呑気だとは苛立ってくるが、だが、今は都合が良い。


 アキラは龍たちの意向を確認し、再度こちらを向き直って――その瞳に、怜悧な感情を宿らせていった。


「理解できないな」


「――――」


 アキラはこちらを見習い、愛刀を納刀、これにより名実ともにお互い大バカ者の証明たる無手状態となった。

 アキラの口元に浮かぶのは――、


「ああ、本当に理解できない。――お前程度が、俺に勝てるとでも?」


「ッッ」


 衝撃。


 胃液が喉を文字通り焦がし、絶大な衝撃はやがて激痛と化し、全身を駆け巡る。


 その練度、既に一か月前の決闘の際とは、明らかに別格。


 成程。

 確かに、アキラがこれほどまでに傲慢のなり、奢るのも納得できる。

 その力量は、明らかに俺を上回っていやがる。


 それこそ、なんなら数十秒で片が付いてしまいそうである。

 だが――、


「――んな下らねえモンを、今更言い訳にする所存は、ねえよ‼」


「――来い」


 そう高らかに宣言し、良い笑顔で中指を立てる。


 そして――死闘が、始まる。


 ちなみに、龍たちは、「勝手に仲間割れしてくれるなら助かります」精神で適当に死んだらいいなあ……と見守っております。

 無論、隙あらば殺そうとしますがね。


 アハハハハ少年も同様です。

 

 ……↑この名前は、どうなんでしょうね。

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