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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
五章・「モノペウス・ザ・ネーロ」
375/584

――化け物と、成り損ない












――理解不可能


 何故、己の胸元から鋭利な切っ先が突き出ている。

 何故、口元からこれほどまでに鮮烈な血飛沫の味が染み付く。

 何故、痛烈な激痛が――、


「――そんなの、知らんのだッ!」


「――ッッ」


――それが、どうした。


 その程度のモノに頓着していられる程にメイルは暇ではない。


 まして、傍らに守るべき親友が居るのだ。

 ならば、殊更だ。


「――死ぬがいい」


「――――」

 

 位置からして、刺客はメイルの背後。


 ならば、後は言うまでもない。


 即座にメイルは己の手先を龍爪へと豹変させ、振り返るようにして背後へ鮮烈な斬撃を振り放った。

 相手がメイルの死を確信した直後の、この奇襲。


 本来ならば回避など到底不可能――が、その鋭利な爪先が捉えたのは、ただただ空虚な虚空だけである。


「チッ! 取り逃がしたのだ!」


「め、メイル……っ!」


 突如として重傷を負った親友の身を狼狽しながらも案じるその姿に「あのニンゲンに是非ともこの天使を見習ってほしいのだ」と心中で呟きながら、気丈な笑みを浮かべる。


「大丈夫」


「でも――」


「――この程度、慣れてる。それより治癒魔法、頼めるのだ?」


「――――」


 たった一言から垣間見えてしまうメイルという少女の壮絶な生きざまに目を剥きながらも、沙織は懸命に治癒魔法を構築する。

 無論、それを襲撃者が許容する筈もなく。


「――敵対者の眼前で、余所見か?」


「余裕というルビが必要なのだ」


 背後――と見せかけて沙織を障壁として死角を蠢くその襲撃者に対し、メイルは冷ややかな声音を投げかける。

 気配察知など、戦士として生きる上ならば必要不可欠な技能である。


 無論、メイルがその程度の技巧を持ち合わせていない筈もなく、沙織を庇うかのような立ち位置で斬撃を受け止める。


 と、それと同時にようやく精緻かつ繊細な術式が完成する。


「――『慈雨』」


「――。助かるのだ」


 メイルを淡い陽光が覆ったと認知した瞬間、素性の知れない襲撃者により深々と刻まれた傷跡が修復する。

 それを確認しつつ、メイルは後退した襲撃者へと声を張り上げた。


「――貴様、この期に及んで異種族どおしのいがみ合いか?」


「……ああ、そういう可能性も、一理ありますねえ」


「――――」


 メイルは魔人族、だけに留まることはなく、それこそ数えきれないほどの人族たちの命運を奪い尽くしてきた。

 だからこそ、その親族などに怨恨を買うことが非常に多いのである。

 

 だからこそ、メイルの対応は冷淡そのもの。


 そもそもの話、メイルは殺害の有無については一種の線引きをしている。


 それは、戦士として戦場へ足を踏み入れているか、否か。

 メイルとてどこぞのキ〇ガイのような外道ではないので、流石に一般人を他殺することは決してない。


 その代わりといってはなんだが、戦士や騎士ともいえる、『死ぬ覚悟』をした輩への容赦は一切存在しない。

 先史覚悟をしてこの戦場へ降り立っているのならば、なんら躊躇なく殺すことができるのだ。


 メイルが殺害するのは戦士のみ。


 つまり、死ぬ決意をした者たちだけだ。


 そんな彼らの死に義憤を抱いているのならば――思わず、失笑してしまうだろう。


 が、どうやら今回ばかりはメイルの推測は的を射ていなかったようだ。


「……どういう意味なのだ」


「そのまんまですよ。私は、別に貴女が魔人族だから殺すんじゃない。――貴女が、貴女だから、殺して奪い尽くすんですよ」


「――。意味が、分からんのだ」


「でしょうね。結構、結構」


「――――」


 ローブの隙間から垣間見えるニタニタとした笑みは醜悪そのものであり、思わず盛大に顔をしめてしまうメイル。

 そんな彼女に頓着することもなく、襲撃者は懐から鋭利なナイフを取り出し――、


「――今度は、避けれますか?」


「――――」


 直後――襲撃者の輪郭が、ブレた。
















「――ッッ」


 形容ではなく、正真正銘の神速。

 

 しかも、特殊な魔術の気配が一切感じれなかったことから、信じがたいが純粋な脚力であの速力を成立させているのだろう。

 

(ホントに、何なのだ!)


 得体の知れない刺客に冷や汗を流しながらも、メイルは奇襲を警戒し、


「――はい、捕まえた」


「――ぇ」


 戸惑いの声音は、メイル――ではない。


 それよりもなお澄み渡った声色で――、


「お前ぇ……っ!」


「そうそう。その顔ですよ」


 襲撃者が狙い定めたのは、怨敵らしいメイル――ではなく、ひそかに大魔法の術式を構築する沙織であった。

 唐突に矛先が向き、目を剥く沙織の首筋へ、襲撃者はナイフを添える。


「――動けば、殺します」


「――――」


 成程、実に分かりやすく、稚拙な脅迫である。


 しかしながら憎たらしいことにその脅迫は十二分にメイルへと機能してしまい、思わず声が荒ぶる。

 無論、襲撃者はそんなメイルの様子にさも満悦そうに笑みを浮かべ、


「お分かりですか? あなたの立場」


「……仮に要求に従ったとして、沙織を解放するとは限らないのだ」


「いえいえ。『誓約』をお忘れですか?」


「――――」


 確かに、それならば確実性はある。

 だが、沙織の解放を引き換えに襲撃者が如何なることを要求するか――、


「一体、どういう趣旨が望ましいですかね? 私としては、貴女が泣き喚く醜悪な様を見せつけ貰ったらそれで十分なんですがね」


「――――」


 醜悪な嘲笑を浮かぶ襲撃者への嫌悪感を隠しもせず睥睨するが、しかしながら彼は殊更にさも愉快げに目を細めるだけで。

 そして襲撃者は、名案とばかりに口ずさむ。


「そうですね。この機会に、貴女を屈服させて、それから――」


 なおも戯言を吐き散らそうとした瞬間、









――そして彼は、殺意の神髄をありありと理解する。







「ぁっ、あ」


 まるで、うわごとのように呻く。


 体が、強張って動けない。

 神速という形容さえも生温い速力を成立させていた脚さえも竦み、真面に歩行することさえも叶わない。


(死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!!)


 全身から滝のように汗が流れ落ち、滴るそれにより強かに握っていたナイフさえも取りこぼしてしまった。

 だが、それも致し方ない。


 なにせ、それはこの場に存在する生物の一切合切を味わっている感覚なのだから。


――ハ ナ セ


「ひっ、ひぃっ!」


「きゃっ」


 体の隅々を駆け巡る壮絶な恐怖に侵され、不意に脳裏に響く声音に歯向かうことなんて、できやしなかった。






 エ〇同人だあ!

 ついに器用値にも、エ〇同人的展開が到来しました! やったね!


 ちなみに、私はエロには興味津々ですが、実際に作中にその要素を加えるのは相当に苦手です。

 パンチラ程度で羞恥心で悶絶する点から推して知るべし、です。

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