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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
一章・「赫炎の魔女」
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蛇足・迷い子











――そして、冒頭へ戻る


「しっかしこの町にこんなに人居たか? もうちょっと少なかった気がするけど……」


「普段は皆、魔人族を討つために訓練に勤しんでいたり、貴重な食料を確保するために農作業に精を出しているんですよ」


「へぇー」


 だからこそ、住民の表情がこんなにも晴れやかなんだな。

 今まで過重労働を強いられてきた分、このような派手な祭典があると興奮するよね。

 この世界の政治家もそこそこ優秀らしい。

 

 もし、このような息抜きが無かった場合どうなるかは明白。

 即ち、反乱である。

 ただえさ厳しい状況なのに、内戦まで起こったらシャレにならないよな。

 まぁこの程度考え付いて当然だが。


「……で、何故手を繋ぐ」


「そこにアキラさんが居るから、ですかね」


「何某登山家みたいなこと言ってんだよ!? こんな光景があのおっさんに見られたら、絶対根掘り葉掘り聞かれるぞ!」


「いいじゃないですか」


「ダメだよ!」


 偶にシルファーが何を考えているのか分からなくなる。

 

「迷わないようにするためですよ。 アキラさんが」


「俺かよっ!」


「自慢じゃないですけど、私は何度も抜け出して王都に入ったことがあるんですよ。 ちゃんと案内できます」


「本当に自慢にもならねぇな」


 何故ドヤ顔する。

 そこは淑女らしく恥じらえよ。

 というかまさかこれが初犯じゃないと!

 どうりで躊躇いなないはずだわ!


 こいつが絶対淑女なんかじゃないことを俺は今更再認識した。


「……ま、それじゃあエスコートしてくれよ姫さん」


「普通は逆ですけどね」


「…………」


 何も言えん。

 だって、だってしょうがないじゃないか!

 反論するように軽く睨むが、シルファーは小動物でも愛でるかのようにニコニコとした笑みを崩さない。


 なんやねん。


(……ま、今日くらい休んでもいいか)


 俺だってここ数日、ずっとソファーで寝たり食ったりを繰り返していただけではないのだ。

 ソファーに寝転がっていたのは単純により集中するため。

 あの繊細な魔力操作は本当に疲れる。

 まぁ、それを言ったら俺本来の魔術はもっとクソ難易度だけどな。


  未だ一か所しか展開できないし。

 まさに不良品である。

 まぁ、そんなわけで俺もそこそこ疲労しているわけよ。

 護衛なんていう任務故の寝不足もその原因の一つだ。


 俺も今日ぐらいは羽目を外しますか。

 決してこれはシルファーとのデート(?)を許容したわけではない。

 断じてないのだ!

 ……俺は次沙織とどんな顔で出会えばいいのやら。


「はぁ……難儀なモンだな」


「あ、串焼きですよアキラさん! 私でも滅多に食べられない串焼きがあんな価格で……! 恐るべし〈天龍祭〉」


「貴族の食卓に串焼きなんていう野蛮なモンが出てきたら幾らあのおっさんでも卒倒するだろ。 というか食ってるのかよ」


 流石波乱万丈を体現した姫さんである。

 その爽やかな表情にはつい先日まであった陰りは見えない。

 どうやら、あの惨劇は忘れられているようだ。

 いや……もしかしてそれすらも受け入れたのかもしれない。

 まぁ、俺としてはどちらも好都合なんだけどね。


 しかし……串焼きか。


 この世界にもこんな文化があるんだな。

 もしや、串焼きを日常的に見ることが可能な日本人――〈プレイヤー〉が運び込んだ技術なのかもしれない。

 

「姫さん、財布持ってるかい? ないなら俺が買うよ」


「さいふ……? それも食べ物の一種なんですか?」


「アッハッハ、世間知らずすぎだろあんた!」


 まさか現実に札束を別の意味で見たことのない奴が実在するとは……!

 そりゃあな!

 普通は執事とかが代わりに支払うよね!

 こんな箱入り令嬢に期待した俺が馬鹿だったわ。


 俺は重いため息を吐きながら懐から財布を取りだし、シルファーに串焼きを渡す。


「あぁ……最高です。 もう串焼きの奴隷になっても悔いはありまれん」


「いや、後悔しろよ」

 

 なんというか……残念系美少女なんていう失礼極まりない単語が脳裏に浮かんでしまった。

 と、突如口元に違和感が。

 というか、


むはむははは(何をする、姫さん)


 俺はシルファーの手によって突っ込まされた串刺しを粗食しながらも当然抗議するが、どこかゴキゲン斜めな表情で逆に反論される。


「今、失礼なこと考えていましたよね?」


「――ッ!」


 エスパーか!?

 エスパーなんだな!?

 俺は戦慄の眼差しをシルファーへと向ける。


「乙女の勘、ですよ」


「乙女って……シルファーの冗談は本当に面白いな」


「ちょうっとどういう意味ですかそれ」


「アハハハ、うけるー」


 乙女?

 この姫さんが?

 世の紳士淑女に土下座してこいと言いたくなる。

 というか、今更だけど俺敬語使わなくていいのだろうか。

 

 俺は今にも再び俺の口内へと香ばしい串焼きを放とうと隙を伺う姫さんを一瞥する。

 うん、使わなくていいね!

 

「さて、残念な姫さんは置いといて、さっさと行くぞ。 俺はこの後も予定がでっぷりと詰まっているんだからな」


「むー。 ニートの癖に」


 ニートは(´・ω・`)とした。


 正確には迷い子要素ないんですけどね。

 それは次の話です

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