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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
五章・「モノペウス・ザ・ネーロ」
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  魔術の設定、色々面倒です。


 それはそうと、そらるさんの『踊』、めっちゃBGMとして優秀ですやん。


 












「さて――」


「――――」


 龍艇船にて。


 雲を切り裂く龍艇船の窓から醸し出される情景はどこまでも爽快で、非常に絶景という形容がよく似合う。

 嘆息する俺へ、レギウルスは冷や汗を流しながら懸念していた事項を問う。


「お、おいアキラ、本当に明日、『老龍』は来るのか……?」


「正確には深夜くらいね。 まあ、ほとんど変わらないと思うけど」


「――――」


 現在時刻は早朝。

 本音を言うのならばさっさと今回の作戦の旨を伝えたかったのだが、いかんせん俺もそれなりに多忙の身だ。

 陣の確認とかもあるしな。


 そうしてやむにやまれずずるずる引きずってしまったワケである。


「……マジか」


「そうそう。 まあ、だからこそ色々と策を練っているんだけどね」


「――――」


 押し黙るレギウルスが、俺が事前に配ったその資料を眺める。

 周囲の面々もそれにならって配布した資料をぱらぱらとめくるのを確認しながら、俺はようやく本題に切り出した。


「まず、断定するけど、『老龍』は王国に出没することになる」


「――――」


「ついでにいうとめちゃ強いその眷属も各国に無尽蔵に放たれて、無差別に周囲を蹂躙すると思うよ」


「……どうしてお前がそんなことを、っていう問いかけは不毛だよな」


「それは乙女のヒ・ミ・ツ♡」


「ちょ、レギウルスさん、いきなり駆け出してどうしたんですか!?」


「脳が……脳が……!」


 まるで可愛らしい少女のようなポージングでウィンクした俺の存在を記憶から消し去ってしまいたような剣幕である。

 無論、気のせいであろう。


「さて、逃げ出したガバルドには後で俺の写真集を存分に焼き付けておくとして……」


「おぇっ」


「ああ、想像豊かなガバルドがっ」


「……冥福を祈るので、レギ」


 何故ガバルドはあれ程盛大に口元から嘔吐物を吐き出したのだろうか。

 その不可解な言動に頭上に疑問符を浮かべながら、「まあレギウルスだし……」と納得し、さっさと本題に切り出す。


「……スズシロ、ばら撒かれた眷属の具体的な数は?」


「書いてるでしょ、資料に」


「大丈夫だ、スズシロ。 これはきっと印刷ミスだから」


「現実逃避も程々にね」


 資料に掲載されたその莫大な数に遠い目をするガバルドを窘める。


 というか、ガバルドってつい最近まで心底俺の事毛嫌いしていた筈なのだが……そう思案した直後、すぐさま正答に辿り着く。


「成程――ツンデレか」


「スズシロ、お前には紐なしバンジージャンプを存分に楽しむ栄誉が与えられるぞ」


「そんな、紐なしって……ガバルドさん、あなた変態ね!」


「どうしてその発想に!?」


 何故か妄想豊かな沙織が「あんなことや、こんなことを……」と呟いているようだが……。


「――そういえば俺はメイルを殺さなければならない」


「ええ!?」


 唐突に殺害宣言をされたメイルが瞠目するが、無論その程度で溜飲を下げる程に安っぽい感情を意だいるワケではない。


「お前は、禁忌を、犯した」


「何なのだ!? 私が何をしたというのだ!?」


 エロ知識。


「大丈夫だメイル。 殺しやしない。 俺の全裸写真集を脳裏に焼き付けるだけだ」


「――ッ!(無言で逃走)」


「カップル揃って愛のハネムーン……!」


「沙織、ちょっと黙ろうか」


 これ以上俺に心痛を与えないでくれ。
















「――さて、若干二名、会議室から逃走したワケだが」


「なあ、ここって会議室だよな? 裁判所じゃないよな?」


「いや、俺に聞かれても……」


 ちなみにガバルドは形だけとはいえ一応参加しております。

 適当に紹介してやったのだが、割と溶け込めていてなによりである。


「よかったな、中年」


「今何故罵倒されたし」


 俺はそういう意図を込めて言い放ったワケではないのだが……成程、これが被害妄想という概念なのか。

 

「……ねえアキラ、ほんとにこんな数が出るの?」


「ああ、相違はないぞ。 陣の規模からの目測だがな」


「……陣?」


「ああ、そういうことね」


 と、沙織が俺の物言いに無理解を示す中、一方割と聡明な魔王は言葉の端々から断片的にその真意を悟ったようだ。


「――? どういうこと、魔王さん」


「……なんだか、最近私の本名を誰も言い放っていないように思えるけど……まあ、それはよしとして」


「――――」


 微苦笑に頬を掻きながら、魔王は滔々と語る。


「いや、私の場合逆算して考えただけなんだけど、仮にこんな大群が存在するとして、果たしてそれれらは今の今までどこに潜んでいたんだと思う?」


「あっ」


 ここに至って、ガバルドや沙織もその真意を理解したようで、唖然と目を見開く。


「――異空間が妥当であろう」


「ええ、見解に差異はありませんよ、帝王」


「……できることなら、ちゃんとした本名で呼称してくれないかな」


「ああ、これは失敬。 えっと、名前は……名前は……」


「もういいですっ」


 お互い、魔王と帝王としての名が売れすぎて本名の方が完全に忘却されていってしまっているようだ。


「まあ、フルネーム云々はともかく、御名答だ。 俺は俺で別の方向性でこの結論に辿り着いたのだが……それは置いておくとして」


「御託は良い。 成程、確かにこの数の眷属を召喚するのならば、事前に陣を刻んでおくのが賢明であろう」


「そういうこと」


 基本的に実践で陣なんてちまちま書いてたらその作業は不毛でしかないので、現在ではこの技術はほとんど灰塵に帰している。

 が、しかし。

 アーティファクトの作成などにおいて、この陣という概念は比類なき力を発揮する。


 そもそも陣とは本来魂により刻むはずの魔法陣を、予め鉱石などに刻み、それにより構築する時間を短縮するというモノだ。

 それにも持続性などの用途も存在するのだが……これは後程。

 

 閑話休題。


 ともかく、陣とは多大な詠唱時間を短縮するなどの用途により使用されることが多く、今回もそのパターンであった。


「調べった結果なんだが――陣は既に、この国どころか法国にさえ及ぶ規模で広がっているんだよなあ」


「は?」


 その荒唐無稽な物言いに、「ちょっと何言ってるのか分からない」とばかりに首を傾げ、


「済まない、アキラの声質が汚過ぎてちょっと聞こえなかった」


「オッケー、鼻筋へし折ってやんよ」


 そろそろ真剣になりなさい。

 

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