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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
五章・「モノペウス・ザ・ネーロ」
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『龍』の再訪


 縦幅は短いんですけど、根底的な文字数に差異はありませんよ











 


 事の次第は魔人族の総意が決定したあの日にさかのぼる。


 あの日、無数に存在する『管理者』を刺客として放ち、意図は不明だが本人が直々に俺たちを妨害しようと降臨した。

 しかしながらどうも『厄龍』には依然として話し合う余地があり、交渉だってそれなりに容易であったはず。


 しかしながら俺はそれをにべもなく断り、その結果腸を裂かれた。


 これだけ聞くと、相当無様な戦績である。


 だが――問題は、その過程。


――『念話』、という魔術が存在する。


 相手はただひたすらに暴虐の限りをつくす野蛮な愚者などではなく、ちゃんと会話を交わす意思が存在している。

 ならば、それを切って捨てるのは短慮としか言いようがない。

 だが、状況が状況だ。


 何より沙織が同席していた。


 沙織もある程度は事情を精通していており、ほぼ確実に守られるだけのあの交渉を甘んじて受け入れることはないだろう。

 だが、それでも本体の『術式改変』発現などの懸念も多い。

 これ以上の逆境は不要だと、そう判断した。


 それから先は容易。


 ライムちゃん経由で『念話』によりルインとリンク。

 それにより話し合いは後程という旨を伝え、万が一にも沙織に勘繰られないようにとあそこまで盛大に割断されたの。


 まあ、一種の八百長だな。


 そうしてセッティングしていた交渉は、今この瞬間をもって再起する。


「思い込みの激しい彼女をもつと、存外辟易するのかい?」


「普通に可愛い」


「成程、重傷だね」


 何が重症なのかは後で拳を以て問い詰めるとしよう。


 俺は「ふわあ……」と緊張感もなく盛大な欠伸を晒しながら、すっと目を細め佇むルインを一瞥する。


「本題に入る前に、今回の件について口外しないということを死守させる『誓約』を結ばせてもらうぞ」


「ほう? まさかとは思うが、僕なら『誓約』程度の魔術、容易に破棄することもできることを失念していないかい?」


「普通はな?」


「その物言いだと、君の場合は凡庸な術式ではないと?」


「そういうこと」


 実際間違っても居ないの訂正はしない。


「――『花鳥風月』」


「――。 ほう、既にそれを習得していたのかい」


 俺が短く詠唱するのに呼応し、一時的とはいえ俺は自身の『色』により構築された魔術を組み替えていく。

 無制限というワケではない。

 それでも一応実践できる程度の品質は保てる。


「ガイアスから教わったのかい?」


「俺みたいな若者が中年に教えを乞うと思うか? 実際は妹でした!」


「ああ……あの子ね」


「納得したか?」


 そもそも『創造魔術』は『花鳥風月』の究極系とも形容できる品物。

 その点、『創造魔術』の真価を遺憾なく発揮するライムちゃんが『花鳥風月』を会得していない筈がない。

 一週間程度の時間こそ要したものの、一応実戦で扱えるレベルの練度である。


 ちなみに、ガイアスに教わるという選択肢も存在したのだが、奴はデレないツンデレ(ただのツンである)なので、必然的に不可能である。


 本当に難儀な相棒をもったものだ。


「――『誓約』。 ほら、お前もさっさと承諾しろ。 一応言っとくけど、まず情報漏洩を防止するのが最低ラインだからな」


「無論、心得ているよ」


 俺は改変した『天衣無縫』を『誓約』に付与し、それをルインへ押し付けると共に抵抗もなく互いに浸透していった。

 これで互いに口外の危険性を考慮する必要性は払拭されたワケだ。


「安心しろ、盗聴もないぞ。 普通に困るから」


「確かに、そのような存在は居なかったね」


 どうやら、その点は既に物陰に潜んでいた最中に確認していたらしい。


 ちゃっかりした黒幕である。


「さて――始めるか」
















 俺とルインは明確に敵対関係であり、それは周知の事実。


 ぶっちゃけ沙織以外がどうなろうが心底どうでもいいのだが、その矛先が彼女へ向くのならば、話は別。

 そうして明確な敵対者の存在を補足した俺が情報収集に勤しんでいた最中――ついに、奴が動き出したのだ。


 それにより、主要な都市へ多数の大型魔獣を顕現させ、甚大な被害が街へ及んだのは言うまでもない。

 それはいい。

 それ自体は、なんら問題はないのだ。


 だが、あろうことか奴は沙織へ手を出しやがったのだ。


 必然、判決は死刑以外に存在しない。


 しかしながら当時俺は魔術の存在に勘づき、何とかそれを習得しようと躍起になっていた時系列のこと。

 そして、相手は幾重もの世界を統べる黒幕だ。

 そんな強敵に俺が一矢報いることなんて到底不可能だわな。


 結局俺たちは逃走という形で危機から逃れ、そして再起を誓い来るべき災厄へと備えるべく、行動を開始したのだ。


 うん、心底下らないな。


 ちなみに、どうして俺がこんなどうでもいい事情で敵対したルインを親の仇とばかりに憎んでいるのかという点に疑念を抱くやもしれない。

 その理屈は単純明快、あいつがいなければ俺と沙織は仲良くイチャイチャすることができたのに、だ!


 それなのに奴の襲撃により俺たちは分散!


 更に止めとばかりに世界の境界線さえも超えてしまったのだ。


 必然、憤慨の念が募っていくのである。


「――? どうしたんだい、そんなにボクをじっと見て」


「――――」


 その寝ぼけた横顔へ鉄拳をくわえてやりたいというのが本音であるのだが、それを実行するともれなく交渉は決裂。

 こうして俺が寝不足を我慢して馳せ参じた意義がなくなってしまう。

 今は、堪える。


「おいクソ野郎、さっさと詳細を説明しろ。 さもないと頭蓋が消し飛ぶと思え」


「君は何様なのかな?」


「ふんっ」


「ちょっ!? 唐突に殴らないでよ!」


 今は、堪える。


 一応これでも本気とは程遠いモノなので、そこら辺はルインも理解してくれているだろう。

 それはさておき――、


「前もって言っておくが、俺たちに信頼関係なんてモンが存在しない」


「同意するよ。 立場が立場だ」


 互いに敵対者。

 それこそが共通の認識であり、金輪際その見解がひっくり返ることなんて未来永劫存在しないだろう。

 だからこその提案だ。


「だからこそ、今回の交渉は『誓約』を利用させてもらう。 俺印の『誓約』はお前であろうと厳守せざるを得ないからな」


「道理だね」


 信頼は皆無。

 ならば互いに合理性を何よりも重要視する者同士、信望する品物はとっくの昔に決定しているのだ。

 

――『誓約』


 魂レベルで結ばれた約定を死守させる、この世界では実にありふれてしまった魔術の一つでもある。

 これを用いれば、信頼関係もクソもない。

 なにせ歯向かった瞬間魂ごと消去されるのだ。


 そこに回帰の余地は必然存在しない。


「さて、ルイン。 ――今夜は、寝かせないぞ」


「え”っ」


 


 


 関西弁キャラ出したいんですけど、私普通に大分在住ですし、交友関係も皆無ですのでできません!

 

 やってみたらものすごいカチカチした関西人になりますからね。


 

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