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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
四章・「カラミーラの約定」
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整理整頓


 呪術の休載を今更知って、今更ショックを受ける作者













「あー、うん。 どう、順調?」


「お、おいルイーズ! ついにスズシロが白い粉に手を出したんだ……! 幻覚まで……くっ、俺の監督不行き届き責任だっ」


「スズシロ君、差し入れは持っていくからね」


 何故か、本体と『念話』で接続していると、本体の記憶の瓜二つの光景が巻き起こっていってしまっていた。

 俺は渋い顔をしながら気になる要点を指摘する。


「……まずそもそも同盟相手が、平然と薬物に手を出すという見解について自分でもどう思いますかね」


「? だって、スズシロだろ?」


「そうだね……スズシロ君だからね」


 どうやら俺は周囲から度し難い犯罪常習犯と認識させられているらしい。


 その点について、この鉄拳を以て悲しい誤解を正したい所存であるのだが、ふいに俺の脳裏にこれまでの経歴がよぎる。


 王城侵入、及びヴァン家当主殺害


 『賢者』への洗脳行為


 その他、平然とモラルを破砕する行為の数々……


「……何も、言えない」


「出頭の準備は整ったようだな」


 確かに、犯した罪の数すらも忘却してしまう程に必要不可欠とはいえ、犯罪行為に手を染めたのは事実。

 流石にそれを反論するのは憚れるな。


 閑話休題。


「さて、それはさておき」


「露骨な話題転換だな」


「だね」


「それは! ともかくッッ!」


 そろそろ余計な茶々をいれるのは止めて欲しい。ブーメランである。


「……とりあえず、本体が死闘の末に帝王との死闘と言う名のお話合いで帝国との本格的な同盟には成功したぞ」


「ちょっとよく分からないです」


「だろうな」


 かつて王国の重鎮であったルイーズだからこそ、帝国の頑固さは否応なしに理解しているであろう。

 故に、それを信じ切れないのはよく分かる。

 が、実際本体はその不可能を成し遂げてしまったのだ。


 一応は布石として色々と俺が手回しをしていたのだが、順調に行き過ぎてそれらの一切合切が無為になってしまって少々残念である。


「法国と亜人国、それに亜人国――そして、近々魔人国も集うだろう」


「――――」


 それはあくまでも推測。

 

 肝心の部分が運頼みな懸念もあるのだが、それに関しても限りなく可能性が上昇するように手を打ってある。

 本体が魔王を説き伏せるのも時間の問題であろう。

 

「――ようやく、ようやく準備が整った」


「――――」


 これまで根回しには思い出すだけで気が滅入る程に苦労したのだが、それもこれもようやく終幕に向かいつつある。

 

「……その言い回しだと、もう俺たちの用事は済んだのか?」


「疑う?」


「もちろん。 だって、スズシロじゃん」


「――――」


 如何に俺が信頼されているのかたった一言で理解できてしまう明言で、思わず涙目になりそうになる。

 まあ、それはさておき。


「――俺はともかく、お前らの責務はもうほとんど皆無って形容してもいいくらいに片付いたって宣言しておくぞい」


「……そんなこと言って、素知らぬ顔で騙された事件は数えきれないのだが」


「――認知症か」


「殺すぞ」


 実際その膨大な年ならばありえる話である。


 















 そう――もう、既に準備は着実に整いつつある。


 俺の手駒となった王には、本体の準備が整えばその申請を行うように色々と仕込んでるので、もはや後は本体の朗報を待つだけだ。


 ちなみに、余談なのだが本体がこうも魔人国へ長居しているのは諸々の同盟国の準備が整うのを心待ちにしているという側面がある。

 魔人国はそもそも戦時体制だ。

 即座に軍隊を動かすのに造作もないだろう。


 だが、他の国々は事情が異なる。


 彼らも一応とはいえ申し訳程度に常時目を光らせているが、それは緊張感が張り詰めた王国と魔人国程でもない。

 全勢力を用意するには、最低でも一週間は要する。

 その結論故に本体の長期滞在なのだ。


「ったく……こっちの身にもなってみろよ」


 刻限を紙一重にするのはそれなりにリスクが生じてしまう行為であり、故に俺の胃は常に微弱な靴を抱かえてしまうだろう。

 最近白髪も増えてきたな……

 そろそろ年なのかもしれない。


「……で、仮にそれが事実だとして、その間俺たちは何をすればいい?」


「自堕落に怠惰を謳歌してね、この親泣かせ!」


「誰が原因だよ」


 察しが悪いなー。


「……あの、ちょっと疑問があるんですけど」


「――? どうしたの、スピカ君?」


 その残虐ともいえる達観した死生観はともかく、スピカ君の容姿は幼子のそれであり、ついつい口調も温和なモノになってしまう。

 やはり、俺は庇護欲に駆られるタイプに弱いなあ……と自嘲しつつ、俺はちらりと横目で挙手するスピカ君を一瞥する。


「実際のところ、『老龍』との勝算はどれくらいなんですか?」


「あー」


 勝算、ね。

 俺の俺の手札と睨めっこしながらも『老龍』や、ついでに『厄龍』や『亡霊鬼』たちとの勝算を模索したことだってある。


「ぶっちゃけ、五分五分かな。 多分『老龍』は俺とレギウルスが抑えるとして、奴の眷属とかを視野に入れると結構苦戦する可能性しか浮かばないんだよな……」


「――? 普通『老龍』をさっさと殺せばいいじゃないですか」


「普通だったらな」


「――――」


 前回のループである程度『老龍』の魔術について目安はついている。


 それは王国から不許可に漁った資料から裏付けられる事実で、必然俺もそれに適応しながら立ち回らければならない。


「『老龍』を殺すには、確実に眷属を根絶やしにする必然性があるんだよ」


「……成程な」


 龍の力量は存外未知数。

 しかしながらあの状態の俺でも多少苦戦してしまっていたことから、少なくともそこらの有象無象では討伐など不可能であろう。


(……ホント、性悪かよ)


 内心で悪趣味な魔術を創造しやがった戦犯へ中指を立てつつも、嘆息しながら続きを述べる。


「手札も十分優秀だが……それでも、評論は変わらないぞ」


「――――」


 ガイアスも先日参戦の意を表明し、最悪魔人国との交渉が破綻しようがレギウルスは味方につく可能性が高い。

 『傲慢』の力量は存外強大で、おそらく龍程度ならば容易く葬り去れるだろう。

 ホント、あの父親ありてあの息子か。


「――んじゃ、俺は一旦仮眠をとるからお暇させてもらう。 各員、準備を怠ないようにな」


「……まあ、了解だ」


 嘆息し、重苦しい溜息を吐くガイアスへ、俺へ欠伸を噛み殺しながら踵を返していった。

 

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