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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
四章・「カラミーラの約定」
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最終局面


 バレンタイン企画のプロットはだいたい練れました。


 ストックとか、区切りとかもありますので少なくとも七夕には投稿されると思います。はて、バレンタインとは。


 ……ま、まあ大丈夫ですよね! あとたった八か月ですから! 許容範囲内の齟齬です!














 演算、結論、実行。


「――――」


 それらの動作を式神の微弱な神経の刺激により成し遂げ、相手が行動を成す数秒前には回避の準備は整っている。

 今この場において、ヤツへの反撃は無用。

 最も適正なのは、防御や身躱しに徹し、全身全霊でこの五分を生き抜くことである。


「――ッッ」


「――――」


 雷鳴。

 

 無論、魔力因子から暴威の発生を察知していた俺であったのだが、しかしながら相手も曲者であり、一筋縄ではいかない。


「――――」


 爆発的に周囲に殺意が木霊し、それと共に虚空より何の前触れもなく数千もの隕石が俺へと猛然と落下する。

 今回に関してはあえて魔術構築速度を最高潮にしやがったのか、因子を認識した直後に本命がやってくる。


(徐々に適応していっているな……)


 だが、流石『英雄』すらも遅れを取った存在である。


 この弾幕、どれだけ足掻こうが一切合切を回避するのは到底不可能であり、魔術の維持などの観点から『天衣無縫』も不適切。

 雷雨と隕石の雨あられは容易く城塞を抉っていき、俺程度が触れでもしてばおそらく即死してしまうであろうことが伺える。


 ならば――、


「――『流鯨』」


「――――」


 直後、俺を起点し莫大な物量の水塊が鯨を象り、押し寄せる脅威の一切合切を迎撃し、ついでとばかりに魔力因子が霧散する瞬間、式神の頭上で。

 それを確認した俺はすぐさま魔力因子との接続を切り伏せ、それに呼応して頭上より形成していった鯨が四散していった。


 そして、この局面こそ唯一無二の好機――!


「――『氷獄』」


「――――」


 氷獄刀を床へ突き立て、そして俺は微細は魔力操作に四苦八苦しながらも全方位へ絶大な冷気を振りまく。

 それにより多大な水塊を浴びる式神を、尋常ではない質量の氷塊が封印し、微弱ながらも猛攻に隙間が生じる。


 言うまでもなく反撃は無用だ。


 だからこそ、俺はこの隙間を無理矢理こじ開け、そして先刻の激烈な戦闘で浪費した魔力を修復しようと――、


「――――」


「――見え見えだぞ」


 露骨な殺気を放つ帝王の一閃を俺は軽やかに回避しながらも、魔力回復ポーションにより伽藍洞な魔力が回帰する。

 流石に、帝王も数秒前ならばともかく、肝心の式神が行動不能なこの戦局で突っ立っているだけではいられないか。


 だが、俺からしてみればその動作はいささか精彩を欠いているように思えて。


「おいおい……十八番の音速移動はどうしたのかな?」


「――――」


「まあ、十中八九あの式神が多大に関連しているんだろうな。 知らんけど」


「貴君の問いに答える義務は、ない!」


「あっそ」


 そう啖呵を切り、帝王は俺へと猛然と襲い掛かるが、前述の通り式神が顕現している影響だから危惧すべき超速跳躍は鳴りを潜めている。

 剣の冴えは相も変わらずであるが、言ってしまえばその程度。

 『傲慢』と比べてしまえば可愛いものよ。


「――生憎、俺にはお前に構っている暇なんてないんだよ」


「――っ」


 俺は小規模な『氷獄』を発動することにより、秘密裏に周囲へ放った水滴を氷結晶と化せ、短時間ながらも帝王を拘束する。

 無論、このレベルの束縛で永劫動きを封じるなんて到底不可能だって重々承知しているのだが、隙は隙だ。


 この好機を、誰が逃すか。


「あんたが伸びれば、式神も消えるのか?」


「――――」


 大剣で肉薄しようとする帝王であったが、俺は簡易的に構築した術式を発散させ、『蒼穿』を起動。

 初速に限った話でこそあるが、それこそ音速を上回る勢いで射出された弾丸は、容易に彼の得物を弾き飛ばす。


 これで仕込みシリーズでも装備していない限り、帝王は無手と成り下がった。


 ならば、今ここで踏み込み、ガバルドには悪いが死亡するレベルでこそないが、それでも戦闘不能になる致命傷を――、


「――ッッ‼」


「――っ」


 轟く咆哮に瞠目し――刹那、死守すべき主人を救済すべく、氷獄の縛めから解放されし式神が猛威を振るったのだった。
















(チッ……! もう解かれたか!)


 既に時計もないので時間の感覚さえも曖昧になっていったのだが、体感時間的に式神が束縛されていたのはおよそ数十秒か。

 それだけの時刻の間、規格外の象徴ともいえる規格外の存在である式神を拘束できていただけでも御の字か。


「ちっ」


「――――」


 これ以上の帝王の対する深追いは厳禁か。


 そう悟り、忌々し気に舌打ちしつつもすぐさま式神の暴威から逃れるべく、天井へと脚力を強化しながら跳躍する。


「――ッッ‼」


「ったく、もうちょっと静粛にしろよ」


 もしや、己の生命よりもなお優先すべき主が満身創痍の外傷を負う寸前であることを激怒しているのだろうか。

 そういえば、『記憶』にも式神が意思を持っているかのような、そんな様子もちょくちょく見られたな。


 閑話休題。


 その異形の容貌ですら否応なしに理解できる程の憤慨を露わにし、次の瞬間式神は凄まじい速力で俺へと肉薄する。


「おいおい、男のケツを血眼になりながら追い続けるとか、変態かよ」


「――――」


 戯言は虚勢の類であるのだが、どうも不毛にもその挑発の意思は式神にも通達できたようで、莫大な殺気から怒気を露呈させる。

 そうして怒れる式神は、その醜悪なる容貌を盛大に歪ませ、俺へと猛然と接近するが――、


「甘いわい。 ――『蒼刃』」


「――ッ!?」


 秘密裏に構築していた術式を解放し、それと共に虚空に莫大な質量の水塊を出現、刹那でそれを刃に形成していく。

 それと共に、凍結も済ませ、正しい意味で鋭利な刀身と化したその切っ先は、存分に式神へと猛威を振るう。


 つい先程補充した魔術の一切合切を浪費する代償として多大な威力を宿したその刃は、容易に異形の式神を切り刻む。

 それに悶え苦しんでいる間に、俺は安全地帯へ天井を足場にしなやかな筋肉を駆使して飛影していった。


「――――」


(さて……あと何分だ?)


 眼前の脅威の対処に一心不乱になっていたからか、もう既に時間の感覚が狂いだしていたので、その正答を導きだすことはできない。

 だが、それでも体感時間では数時間は死闘を演じた筈だ。

 これならば、そう遠くないうちに式神が己を維持することができずに霧散し、無防備な帝王をリンチすることは容易であろう。


(とりあえず、それまで耐えて――)


 不意に、背筋が冷え切るような、おぞましい悪寒が魂を浸透する。


「――ッッ!?」


 殺気というよりかは生易しく、されどそれより柔らかい品物でもないことは独特のおぞましさが言外に証明している。

 しかしながら先刻とは格段に見違えた『王』の気配に冷や汗を流しながら、頬を引き攣らせる。


「おいおい……流石にこれは初見だぞ」


「当然だ。 なにせ、ガバルドにさえも見せていなかったのだから」


「――――」


 成程、通りで記憶から抜け落ちていた筈だ。


 当初異形としか形容の手段を思いつかない風貌の式神であったが、今現在その姿形を多大なエネルギーにモノを言わせ――そして、蛇と成る。


「さあ――フィナーレだ」


「……狙い下げだな」


 そして――文字通り、最終局面が、始まる。



 

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