彼は、どこぞのロリコンと同じく記憶喪失体質なのです
↑誰でしょうね、このロリコン
「……面倒臭っ」
「……ん? どうしたの、お兄ちゃん」
「出来損ないの出涸らしからの近況連絡にキレてる最中」
「あー、お兄ちゃんはお兄ちゃんだからね」
「オッケー、一度俺の印象について真摯に話し合おう」
その認識は如何なるモノだろうか。
俺は魔人国の何故かやたらと澄み渡った青空を一瞥しながら、寝っ転がるガバルドを精一杯蹴り上げる。
「ああ、ストレスが……」
「お前、何の罪もない奴を蹴った挙句、アへ顔するような奴の事をどう思う」
「度し難い変態だな! なんなら成敗してやるぞ!」
「成程、4んでくれるのか」
「――?」
ふむ、どうやらガバルドの過ぎ去った年月故に極めて老化が進行してしまった脳内はシンプルに狂っていたようだ。
「ガバルド、認知症を治すならいい名医を紹介できるぞ」
「顔面に大剣が突き刺さってる芸術品って、ちょっとアートだと思わないか、クソガキ」
「ふむ、余談なのだがその顔面の素材はどうやって調達するんだい?」
「――――」
何故この男は能面のような真顔で俺を凝視しているのだろうか。
「……というか、本当にお兄ちゃんどうしたの?」
「いやね、ちょっと分身体の方で色々と面倒なことになって、今からその折り合いをつけようっていう魂胆」
「さ、流石にこの中年の前ではちょっと……。 でも、お兄ちゃんが望むのなら……」
「君は何を言っているのかな?」
「流石っすわスズシロさん、尊敬しますわ」
「君はミキサーという概念を知っているかい?」
その身を以て学習させてあげよう。
とりあえず、現代に君臨するドラ●もんこと妹の存在は必要不可欠なので、同行は決定済みである。
ガバルドに関しては肝心のキーパーソンなので、強制的に同行決定だ。
というわけで――、
「ライムちゃん、『転移』頼めない?」
「どこ?」
「うーん。 ――じゃ、帝国で」
「ちょ待っ」
帝国には愛しの誰かさんが滞在しているからなのか、必死に俺の厚意を無下にしようとするが、今更遅い。
俺は慈母が如き笑顔で告げる。
「――強く生きてくれ」
「殺すッ! お前絶対殺してやるッッ! 絶対、絶対だ!」
「ライムちゃん、こういう人をツンデレって言うんだよ。 二次元ではあざといキャラなんだけど、三次元になるとただのメンヘラに成り果てちゃうから、ライムちゃんもこの中年を反面教師にするといい」
「了解よ」
「お前、生きて帰れると思うなよ――ッッ‼」
嫌な、事件だったね。
「――『転移』」
そして、ライムちゃんの詠唱に呼応し、虚空に大規模な魔法陣が展開されたかと思うと、次の瞬間には眼前の光景が大幅に移り変わっていた。
一瞬の浮遊感。
数秒程度虚空を滞在した俺たちは――直後、重力に付き従い無情にも冷たい床へと叩きつけられてしまう。
「痛っ、ちょっとライムちゃん、地味に座標ズレちゃったん」
「――――」
眼下、見上げてみるとそこには青年と見紛うかのような、それでいて端麗な容姿の青年が玉座に君臨していた。
そう、玉座である。
この帝国において、それは極めて重要な意味を持ち合わせる。
その青年が発するのは天空の神々さえも恐れをなすかのような圧倒的な威厳と、溢れんばかりの才気である。
――『帝王』
そう、呼ばれる存在がジッと冷徹な眼差しで俺たちを見下ろしていた。
「あ、うん」
何と無しに周囲を見渡してみると、そこには唐突な乱入に驚きつつも、侵入者を逃すつもりはさらさらないのか一斉に剣を構える護衛たちの姿が。
更に恐ろしいのは彼ら一人一人が魔王軍幹部と互角以上の力量であるということ。
成程――流石は実力至上主義を掲げし大国、即ち帝国。
幾らレギウルスのような存在であろうと、これだけの包囲陣を突破するのは相当な労力を要するである。
なので――、
「――スミマセン、人違いです」
と、俺は、何事もなかったかのように、ライムちゃんとガバルドを引きずり、帝城の外側へと――、
――ザッ(無言で詰め寄る傭兵)
――プルプル(恐る恐る背後を振り返り、帝王さんと目が合う俺)
――ドサッ(絶望的な状況に崩れ落ちる俺)
うん、死んだわ。
……母様クソ親父、その他諸々の顔も知らねえご先祖様、見ておりますか?
貴方たちが健やかであれと願い育てられた息子は――、
「オラッ、さっさと吐けこのクソ野郎ッ」
「というか、一体全体どんな手段で侵入しやがった、さっさと答えねぇと細切れにすんぞコラァッ‼」
「帝城へ無断で立ち入るなど、一体全体どんな了見だ、ア”ァ?」
――貴方たちの息子は、今現在仁義なき質問という名の拷問を受けております。
「ちょっと待って! 違う、故意じゃないんだ! 俺は適当にそこら辺に転移して、それから侵入しようと――」
「結局侵入する心算じゃねえか!」
「確かに!」
「納得するのかよ!?」
「何だこの茶番……」
何故か拘束されていないガバルドが心底呆れたように嘆息するのを見計らって、それまで荒々しい口調を披露していた荒くれものの一人が問いかける。
「――本日は、どのような御用で、ガバルド様」
「あんたら態度の急落が露骨すぎるでしょ! 言っとくけど、ガバルドだって加担したんだからな!」
「いえ――テメェとガバルドは別格なんだよ。 分を弁えろ、クソ野郎」
「態度! 態度ッッ‼」
尋問官、お前そういうヤツだったんだな……。
まあ、ガバルドが何故こうも優遇されておいて、俺は冷遇されているのかの由縁はある程度理解できるがな。
だがしかし! である。
「おいガバルド、お前からも何か言ってやれよ!」
「了解だ。 ――おいチェク、罵倒が足りないぞ!」
「違う、そうじゃない」
「テメェ、何息吸ってんだよ! テメェみたいなゴミ虫、吐息する権利さえも皆無なんだよ、クソがッ!」
「4ねと?」
というか、何便乗してるんだよこの男。
と、それまで俺たちの茶番を傍観していた帝王が、どこか高いハスキーボイスで問いかける。
「――それで、貴様らは何用でこのような凶行に?」
「えっと……えぇっと……うぅーーんっと……」
「お前絶対楽しんでるだろうが!」
なんだったけ。
まふまふさんの女体化の放送、多分もう十回以上見てます。
だって、幼女だもの。




