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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
四章・「カラミーラの約定」
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どうしようかなあ?


 元ネタはゆるふわです

 

 そろそろマッチ売りの少女的なキャラも出してみたくなりました。














――『示念』


 それこそが代々アメリア家に伝わる相伝魔術だ。


 この魔術の概要としては、視界内の存在の至指向性を自在に意のままにしてしまうという中々にチートな品物である。

 例えば、ナイフを視認さえしていえば即座に弾丸のように投擲することが容易となってしまうのだ。


 正直、いささかルシファルス家の『付与魔術』と比較すると地味に思えてしまうだろう。


 だが、それはその魔術を扱う存在が小心者である場合。

 そして今この場で牙を剥く存在は、到底そのような蔑称が似合うような存在などではない。


「――『示念』」


「――――」


 パチンッ。


 ルイーズが指を弾く――それに呼応して、部屋中を構成する家具の一切合切が弾丸が如き勢いで肉薄する。

 押し寄せる家具により形成される弾幕は厚く、全てを避け押し通るのは、現在の俺では到底不可能。


 故に――、


「んじゃ、よろしく」


「後で自害しろよ」


 ――無詠唱で周囲に洪水のような物量の大波を生成していったガイアスは、容易に牙を剥く脅威を一蹴していった。


「それって一緒に心中しようっていう遠回しの愛情表現……!? くっ、このツンデレクソ中年めっ!」


「お前はもうちょっと年配者に気を配れ」


「それ以前に俺顔面がケツの穴みたいなカンジになっているのですが」


「我慢しろ」


 ツンデレクソ中年は青筋を浮かばせながら、無言で俺の顔面をその鉄拳を以て太●の達人とばかりに連打する。

 現在俺は分体故にその耐久値は相当低く、危うくこの醜悪なる中年と共に発狂しながら天界に足を運ぶ羽目になりそうになった。


 寸前でその未来をキャンセルした俺はポーションで最低限の応急処置を手慣れた手並みで終えていく。


「流石酸いも甘いも幼女も小学生も嚙み分けし大人の中の大人! 薄情●%☆・”」


「貴様ァ……! それじゃあ俺がスズシロみたいじゃないか!」


「ねえ、前から気になってたんだけど、俺の名前って蔑称か何かなの?」


「……その、ね? 世の中には、知らなくていい情報だって色々と……」


「待って!? 何その反応!? もう普通に罵倒してよ!」


「へ、変態だっ!」


「オッケー、話をしよう」


「うん、分かったから俺の周囲半径一キロ以内に入るな」


「露骨に避けとる!」


 というか、これはもう虐めとかそういう類の仕打ちなのではないだろうか。


 そんなどうでもいい疑念を抱く俺を、心底呆れたとばかりに己自身の指向性を調節し押し寄せる荒波を回避しながら眉根を顰めて見せる。


「……君たち、状況が分かっているのかな?」


「――? 当然、山だろ?」


「何を言ってるんだい、ガイアス。 露見されにくいように大海の方が最適解じゃないだろうか」


「……えっと、議題は?」


「「スズシロ(クソ中年)の死体をどこに埋めるか」」


「成程、キチガイだ」


「な、なにをっ。 テメェ、このクソ野郎と俺が同類だと、そう言っているのか!?」


「止めろ、俺だって中年と同様なんて心底嫌だよ!?」


 俺たちは踊るように舞い散る幾多ものナイフを身を投げ出して躱し、時には弾くようにして迎撃する。

 無論、お互いいがみ合うことが忘れやしない。

 そんな俺たちを一瞥し、深々と嘆息し、告げる。


――心底、おぞましい事実を


「訂正。 ――両方、頭おかしい」


「「テメェ、このクソ野郎と一緒にするんじゃねぇよ‼」」


「仲良しかっ」


「「殺すぞッ‼」」


「だから仲良しか」


 どうやらこの美老人は『厄龍』に頭をおかしくされてしまったらしい。


















 俺は軽やかに宙を跳躍し、押し寄せる鋭利な刃物の一切合切から逃れようと奮闘しようとし――瞬間、視界が反転する。

 推し量るに、『示念』により強引に俺の周囲の重力の指向性を反対にしてしまったのだろう。

 この魔術、中々……、


「ちっ……こういうこともできるのか……! けしからん! どうせこれで沙織の隠された不可視領域を凝視する魂胆なんだろ!」


「意味が分からん」


 よし、この件が無事に収まってライムちゃんと合流したら『創造魔術』と『付与魔術』で『示念』を習得しよう。

 そう魂に固く誓いながら、俺は重心を巧みに整え、ルシファルス印のブーツにより虚空に足場を生成。


 生じた足場を踏み出し、切迫するナイフの雨あられを回避する。


「くっ、どうしてこんなふざけた連中なのに、そんなに巧みな体捌きができるんだよ……! もう意味が分からない!」


「安心しろ、俺だって俺自身が何を言っているのかこれぽっちも理解できない!」


「お前もかよ!」


「お前ら……今戦いの最中だぞ……?」


「「お前が言うな! お前が!」」


 叫び合う俺たちを、「こいつら何やってんだ……?」とばかりに飽きれたような眼差しを向けるガイアスへ声を張り上げる。

 お前だって盛大に緊張感漂う戦場の雰囲気を粉砕してたじゃん!

 本当に掌返しが早い中年である。


「ああもう! 君たちと一緒の空間に滞在していると頭がおかしなりそうだよ!」


「壊れちゃうなんて……エロ同人誌かよッ!?」


「もうとっとと死んでよ!」


 大量の鋭利な刃物を虚空で加速させ、ジェット機でさえ地を這う亀程度の速力しか感じさせない程に勢いで俺たちへと肉薄する。

 だが――、


「――『ユートピア』」


「くっ……! 無駄に洗練された無駄な技巧だっ」


「全然無駄じゃないと思うけどな」


 ガイアスは虚空に水面の城塞を己を起点として展開し、肉薄する凶器の一切を水塊を触手のように蠢かせ、絡めとる。

 流石にこれだけの物量の方向性に干渉するのは厳しいのか、ルイーズはただただ歯噛みするだけである。


 ならば――、


「よっしゃ、よしガイアス、死なないように始末しろよ」


「――――」


 現在この空間はガイアスが掌握していると形容しても過言ではない。

 今この瞬間ルイーズは俺たちへそびえ立つ巨大な物量の水面により危害を加えることは叶わず、故にこちらが圧倒的に優勢なのは火を見るより明らか。

 さあガイアスさん、やっておしまい!


 だが――返事はない。


「お、おーいガイアスさんやあ、返答はいかに――」


「今ここでどうしようかな、って言ったらお前はどうする?」


「――ミキサー」


「オッケー、やってやろうじゃないか」


 チッ……『神獣』百パーセントの健康ジュース、美味だと思ったんだけどなあ。





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