三度目のカミングアウト
P丸様のアルバム買いました!
個人的にはメンタルチェンンソーがお好みです!
「――支離滅裂、極まりない」
「――――」
窮地へ追い詰められたルイーズが放った辛辣な声音が、これであった。
「そもそも、念話をする程度魔術師ならば必須のスキルであろう? もしや、それが特異なモノだと履き違えているのかな?」
「うわあ……毒舌だねえ」
「お前にとっては日常だろ。 もっと興奮しろよ」
「それしたら俺救いようのない変態になるからね!?」
「安心しろ。 ――お前は、もう既にロリコンだ。 なにせ、小学生程度の用事と添い寝したんだからな」
「俺の社会的地位死滅したああああああッ」
「君……」
「止めてくださいよルイーズさん! 年甲斐もなく泣き喚きますよ!?」
「至って平常運転だろうが」
「あ……うん、そうだね」
「あっ、納得するの」
事実なんだもの。
ふむ……だが、どうやらこの美少年(ジジイショッタとも呼称する)は、強情にも『厄龍』への関与を否定するようだ。
だが、それでも一つ、揺るぎようのない証拠が存在する。
「おいおい……俺がジャックした時ちゃんとどこぞの性悪龍の声音が聞こえたような気がしましたけどお?」
「それを、どうやって証明する?」
「確かにっ」
「納得するのか、お前!?」
「……申し訳、ない」
「よし、今から俺たち縁を切ろう。 絶交だ」
「普通そういう台詞ってそんな満面の笑顔でいいますかねえ!?」
自分でもそういう風に演じている自覚はあるのだが、しかしながら自己評価よりも存外うざかったらしい。
この溢れる水滴な一体全体何なのだろうか。
無論、あくまでもこれは俺なりの悪質なジョークである。
このような展開を予想しておき、ちゃんとその打開策は考慮済みである。
「――なら、『誓約』を提示してくださいよ」
「――――」
「容易ですよね? なんせ、お前は裏切っていないからこそこうして五体満足で立っていられるんですから」
「――――」
俺の問いかけに依然として口を噤むルイーズ。
その露骨な反応から俺は己保険が問題なく機能することを悟った。
――人間は、素知らぬ顔で大切だった他人を裏切る。
それを誰よりも理解している人族、そして魔人族の王は『誓約』なんていう最も確かなる手段で部下たちを雁字搦めにしたのだ。
その内容は直接的な謀反行為はもちろん、故意でも情報漏洩は万死に値するとばかりにその代償はとてつもなく多大な。
なにせ、理性はそのまま己という存在がどうしようもないくらいに狂っていく様を脳裏に焼き付けられるのだ。
おそらく、これに勝る拷問なのこの世に存在しないと思うな。
故に見せしめとして反逆者たちが狂い死ぬあの光景を見せつけられた人族の重鎮たちが反逆を起こすことは有り得ない。
ある例外を除いて。
「――例えば、『天衣無縫』」
「は?」
意味不明な単語に瞠目するルイーズ。
そしてその表情は、次の瞬間盛大に歪むこととなった。
「――例えば、管理者権限による例外的な『誓約』の破棄」
「――っ」
『厄龍』ルインはご存じの通りこの世界を支配するシステム――『神威システム』を掌握している。
ならば『誓約』の破棄程度、本当に片手間で片付く問題なのだろう。
仮に、ルインがこれを利用してルイーズへ接近したのだとしたら。
というか実際もうそれは事実と成り果ててしまっている。
垣間見える『賢者』の記憶では、『誓約』に関してのある程度の対応が示されていた。
おそらく、その手段はこの四血族とて例外ではないはず。
故に――、
「――『誓約』の提示を」
「――――」
「この魔水晶は特別性でしてね。 対象に付与された魔術までも、了承さえ得れれば容易に読み取ることができるんですよ」
「――――」
「あなたの了承を以て、あなたの身の潔白が証明されるんですよ! さあ、早く首を縦に振ってください! 無実なら。 何らやましいことが欠片も存在していないのならば、躊躇さえも不要ですよね?」
これこそが瀬戸際。
この局面を演出するために、わざわざ苦心してこんな高純度の魔水晶をあらかたの装備を売り払って取り寄せたのだ。
今ここでその猛威が振るわれなければどうするのだろうか。
そして、ルイーズは、選ぶ。
「――ぶっ飛べ」
――眼前の不埒者を始末するという物騒な選択肢を。
刹那、莫大な魔力に従い、重力その他諸々の物理法則が強引にねじ伏せられ、まだ見ぬモノへと変貌を遂げ、俺たちへと猛威を振るった。
「クッソ、指向性操作かっ」
「ふむ……中々に珍しい魔術だな」
俺は本体が保険にと残しておいた最低限の身体能力を最大効率で発揮し、何とか振るわれる猛威から逃れ、華麗に受け身をとる。
流石にライムちゃんでも本体同様の戦力を俺へと注ぐことは魔力上不可能。
ならば、この背負うハンデを研ぎ澄ました技巧でねじ伏せるのみ。
「……フォローは頼むぞ、ガイアス」
「俺に死ねと?」
「なんてことをっ」
どうして俺の手助けをすることがガイアスの死亡案件へ関連してしまうのだろうか、心底不思議である。
それはそうと――、
「本性を現した黒幕ってカンジだけど、生憎その展開は都合二度見たことあるんだよなー。 デジャブ」
「……今ここで私の居場所をこのような形で奪われるわけにはいかない。 今ここで君たちを始末した方が合理的だね」
「オッケー、話をしよう」
「お前もうちょっと格好よくしろよ」
だって暴力だよ?
暴力・ダメ・ゼッタイ。
「違法薬物とか使って誰かさんを洗脳した外道がなんか言ってるぞ」
「気にするな」
「無理がある」
気にしたら負けよ。
まあ、それはともかく――、
「――――」
直後、予備動作皆無のタイミングでこの部屋を飾り立てていた壺がジェット機さながらの速力で俺の頭蓋をかち割ろうと飛翔する。
一応これでもそこらの一般人程度は容易く蹴散らせる程度の身体能力は譲渡されているので、寸前のところで回避。
俺は飛び舞う殺意に冷や汗を流しながら洗練された動作で受け身をとり、薄い笑みを浮かべるルイーズを見据えながら悪態を吐く。
「おいおい……中々に物騒ですね」
「この程度、まだ常識の範囲だよ」
「うん、そうだね」
「あっ、納得するんだ」
どこぞの神獣に比べたらこの程度の魔術、逆に可愛げがある。
「――んじゃ、相棒(笑)。 その証明をヨロシク」
「ハッ」
そして、『四血族』の相伝魔術さえも霞んでしまう大いなる魔術が盛大に猛威を振るっていった。




