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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
四章・「カラミーラの約定」
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魔水晶


 ユニクロ呪術とコラボとしてて草


 













――それは、目が焼けき切れてしまうような美少年であった。


 蒼穹の無邪気ば瞳に魅入られた者は誰しも例外なく振り返って恥も外聞もなく凝視してしまうそうな、そんな美貌の持ち主だ。

 だが彼を纏う雰囲気はまるで老人のようにどこまでも冷静沈着であり、まさに酸いも甘いも嚙み分けたサラリーマンさながらである。


 俺はそんな美少年――否、美老人へ声をかけた。


「――どうも、ルイーズさん。 二か月ぶりですね」


「――――」


 美少年――ルイーズ・アメリアは愕然と突如として保有する屋敷に押しかけて来た俺という異分子を心底驚嘆したように目を見開く。

 しかし、基本的に周囲の空気を読解する技術に欠如するガイアスは、淡々と俺を横目に問いかける。


「――お前が、『厄龍』の配下か?」


「――。 何を、言っているのかい」


「おいおい……それはもう火葬した死体への心臓マッサージ並みに無理がある苦し紛れな言い訳だな」


「ハッ」


「――――」


 飄々と口笛を吹く俺を、唖然とした表情でルイーズは凝視し――、


「何を言っているのか、分からない」


「あれれぇ? 分からないワケないじゃないですかあルイーズさん」


「――。 そもそも、私と君は初対面だと思うがな」


「そうですよ? 貴方にとってはね」


「――?」


 不可解な物言いに首を傾げるが、無論どこぞの無造作に人の記憶を閲覧できる相棒でもない限りその真意を推し量ることは到底不可能。


「それじゃあ懇切丁寧に説明してやろう。 俺はあれから部下をつかってお前ら側近の行動を逐一監視していたんだよ」


「……有り得ない。 他ならばともかく、私の周囲は盗聴を防止する魔術が――」


「――『千里耳』」


「――?」


「造語だ、造語。 どこぞの『賢者』さんが0からイメージした魔術のこと」


「――――」


 ようやく突飛な衝撃から現世に回帰していったルイーズであったが、更に俺の物言いに困惑することとなる。

 だが、その戸惑いも今この瞬間だけ。


「この魔術はな、付与された者の集音能力を最大限にまで高めるんだよ。 それこそ吐息さえも爆音に聞こえる程に」


「――っ!? そんな魔術、聞いたことも――」


「生憎、ウチの妹のお得意は誰も想像だにしないことを平然と実行する行動力と、それを実行できるだけの魔術だよ」


「――――」


 ちなみに、盗聴防止に貼ってあったであろう魔術も妹オリジナル魔術『千里耳』の前には無力である。

 敵に回すと中々に面倒な『賢者』様であるが、しかしながらこうして身内として迎え入れるとそれこそドラ●もんばかりの躍進を見せるな。

 

 それはそうと――、


「――で、話を戻すぞ。 俺の部下が調査した結果、一週目と異なる行動を行ったのはお前と、どこぞの鬱騎士ぐらいだ」


「……どういう意味なのかな?」


「面倒だからそこら辺の事情の説明は割愛させてもらうぞ」


「――――」


 ちなみに、余談ではあるが初期のループの時は月彦の微弱な召喚獣を利用してその言動を監視していたりもした。

 だが流石に月彦一人だと脳の限度を遥かに超越してしまうので、大至急俺が召喚魔術を習得して作業を間に合わせた次第である。

 

 幸い、時間は腐る程あった。


 それをわざわざ無為にする必要性は、皆無である。


「まあ、ちょっと不審な行動をしたくらいで手先扱いはいけないよな。 俺だってそんな阿呆なことはしない」


「なら――」


「まあ待て。 そう急かすな」

 

 無論、どうしても前回の周との差異が生じるのは『賢者』という存在の埋め合わせが必然となるため仕方がないことだ。

 俺とてその程度を弁えないわけがない。

 ただただ、不審人物の候補にチェックしただけで。


 ならばどうやってルイーズ・アメリアこそが邪知の根源、即ち『厄龍』の手先だと断言できてしまうのか。


 その答えは心底単純明快である。


「――ジャックした」


「は?」
















 ジャック。

 

 確か制圧とかそういう意味合いをもった英単語であり、現代日本において度々耳にする単語でもある。

 そして肝心の議題は、俺が一体全体何を制したのか。

 俺はにやりと薄い笑みを浮かべながら、ある声音を口にする。


「――『ルイン様、手段に関しては不明ですが、看破されたようです』……こんな塩梅なのカナあ?」


「なっ」


 唐突に反響するその高音に目を見開くルイーズであったが、その由縁はただただ意味不明な発言をされたからではないであろう。

 それを俺は察知しながら、己の耳朶を指さす。


「俺がジャックしたのは『耳』――というか、思念により発せられる『念話』の概要なんだよ」


「――ぁ」


 そう憎たらし気に嘲笑する俺に、ようやく付与されたその魔術を悟るルイーズ。


 無論、『制念』を俺へ付与したのは現代異世界におけるドラ●もんだ。


 俺はあの子を拝む勢いで懇願し、すぐに快諾したライムちゃんはそれこそ吐息を漏らすかのようにこの世にまた一つ、魔術を産み落とす。

 そうして生誕した魔術こそが『制念』であり、そしてこれを付与された者は周囲を飛び舞う思念を理解し、また制御することが可能だ。


 確かに、多少なりとも不審な行動をした程度で濡れ衣を着せるのはあまりにも横暴がすぎるであろう。

 だからこそ――俺が狙ったのは定期連絡が行われるこの瞬間。


 なんでも、ライムちゃん――もとい、メィリの記憶を漁ると、ルインは一ケ月おきに経過報告の義務を配下に課しているらしい。

 無論、多忙なルイン自身が降臨することは有り得ない。

 そこで編み出された手段こそが『念話』である。


 これならばどこまでも通じるし、幾ら盗聴されていようが何も気負うこともなく連絡が可能となる。

 なにせ、念話を乗っ取る魔術なんて前代未聞だからな。

 そんな魔術を研究するよりかは、より高火力の魔術を作り出すことに血眼になる方が余程有意義である。


 というわけで、


「――とりあえず、ルインとのリンクは切ってくれない?」


「――――」


 俺がタクトのように指をしなやかに振るうと同時に、それまで無音で、だが確かに発せられた平淡な声音が停止する。


「さて、そろそろ観念することをお勧めする所存ですよ」


「……君たちが何を言っているのか、分からないね」


「なんならこの魔水晶で否応なしに証明しましょうか?」


「――――」


 俺は手元の魔水晶に視線を転じる。


 これは酷く一般的かつ、唯一量産がなされてあるアーティファクト、魔水晶。

 それに付与された魔術は、『使用した魔術の看破、またはその者の能力を数値化する魔術』である。

 即ち、今この魔水晶には『念話』の魔術が使用されたことを示されているわけで。


「さあ――チェックメイトだぞ、ルイーズさん」





 

 最近、私はロリコンとしての認識が薄れていっている気がします。


 

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