対策
ちょっと諸事情あって12時投稿デス。
多分一時くらいには帰れると思います。
「……それで、俺は何をすればいいんだ?」
「細かいことは俺の部下に任せるから、お前が存分に猛威を振るえるのはたった一日だけだ。 やったね、一日天下だよっ!」
「それ絶対良い意味合いじゃねえだろ」
「何を言っているんだい、頭は大丈夫か!?」
「お終いだ……。 キ●ガイという四文字を一瞥した瞬間誰よりも真っ先に思い浮かぶ相手にキ●ガイされた……お終いだあ」
「一度俺の印象についてジックリと話し合おうか」
最近ガバルドを筆頭に俺の扱いが酷くなっている気がする。
「お兄ちゃん、お話し合いは終わった?」
「いや、ちょっとこのオジサンが癇癪を……」
「ちょっと待って欲しい」
「大丈夫、まずは落ち着こうねえ。 うん、後で聞くから今は静かにしてくれいかな?」
「幼児への対応に思えてしまうのは俺の勘違いだろうか。
また一歩心理にを悟ったな。
それまで心底策略なんぞ知らんとばかりに俺たちのやりとりを傍観していたライムちゃんがしびれを切らしたようである。
確かに、俺もライムちゃんと同感である。
どうしてこのような醜悪な存在と同じ空間に滞在していないといけないのだ。
「お前今失礼極まりないこと考えたな」
「よく分かっているじゃない」
「――――(無言で圧縮)」
「俺が全面的に悪かった」
能面かのような真顔で水滴を超常的な技巧で加圧し、弾丸同然と化そうとするガイアスへ俺は恥も外聞もなく首を垂れる。
命、大事(真理)。
現状俺は例外的状況を除いてガイアスに勝てる見込みはたとえどれだけ勝利の女神が微笑んだとしてもないのだ。
それだけ天魔術式を会得した者の実力は隔絶している。
それはそうと、いきなり刃傷沙汰を起こそうとするのはどうなのだろうか。
「それで? 戯言は終わりか?」
「まあ待て。 俺から一つ懸念がある。 分かるな?」
「? 謀反でも憂慮してるのか?」
「いや、そういうワケじゃない。 有り得そうだけど」
「そこは力強く否定しろよ……」
「おいおい……俺は正直な男なんだぜ?」
「時には自分を押し殺した方が有利に進む局面も無数に存在すると思うが……。 まあ、説教の類は不毛か」
「そういうこと」
今更相棒(笑)に人生について説き伏せられようとされても、逆にどう反応すればいいのか途方に暮れてしまう。
この場合俺の構成は早急に諦観した方が得策なのだ。
……そろそろ、本題を切り出すか。
「いやさあ、俺が考案する策だと、お前はこの一か月程度の歳月をこの国で過ごしていないといけないんだよね」
「それがどうしたのか? 家賃なら十分有り余るぞ?」
「そういう問題じゃねえよ」
実をいうとこの男は俺とは独自の生活サイクルを構築しており、彼の収入源は時折気が向いたら巻き起こる奇跡に秘められている。
厳密には、奇跡などではなく魔術だ。
だがしかし、低級魔術程度が大絶賛されるこの世界において、天魔術式を会得した術師は文字通り現人神も同然なのだろう。
ならば奇跡なんていう突飛な発想もあながち間違っていないか。
閑話休題。
まあ、つまること多少なりとも悪目立ちしてしまうものの、ガイアスの家賃関連に関してはさして問題が生じないわけで。
だが、実際のところ問題はそこではないのだ。
「いやさあ――俺、その一か月の間、魔人族に確実に向かうことになるんだよね?」
「な」
「意味、分かった?」
「――――」
心底申し訳なさげに腰を折り頭を下げる俺を「こいつマジか‼」とばかりに目を見開き凝視するガイアス。
しかしながら、これはどう足掻こうが変えようのない既定の事実。
故に、どうしても弊害が生じていってしまう。
「消えるぞ、俺」
「うん、俺の憂慮理解できた?」
「……ああ、否応なしにな」
「それならばよろしい」
「――――」
なんでも魂的にもはや共依存とさえに融合しつつある俺とガイアスどちらか一方がおよそ一万キロ離れると神獣としての魂が瓦解するらしく。
つまること、そもそもこの作戦は前提から破綻していたのだ。
その事実に盛大に顔をしかめるガイアス。
「なんだ、もしや俺を消す気か?」
「だったらこんな面倒な『誓約』結ぶかよ。 それに互いに危害を加えないっていうモンも結んだじゃないか」
「――――」
先刻の交渉により、俺たちは、謀反を防ぐためにライムちゃん経由で『誓約』を結んでいったのだ。
無論、その中には反逆を防止するモノもある。
仮に俺が何の対策もなく衛生にでも征けば確実にガイアスの巻き添えを喰らって狂い死んでしまうだろう。
そう、何の対策もなかった場合、だ。
「……お前のことだ、無策というワケではないだろ?」
「そういう事」
無論、この劣悪な逆境に俺が野蛮な戦闘民族とばかりに無手で挑むほどに愚昧かつ救いようのない自負はない。
もちろん、ちゃんと対策済みである。
俺は傍らに佇むライムちゃんを一瞥する。
「――ライムちゃん」
「承知なのよ」
直後、小さき『賢者』を中心として爆発的に魔力を渦を巻き、やがて溢れ出す魔力が何かをツギハギ形成していく。
――それは、人型であった。
身長は、目測でこそあるがおよそ170センチ程度か。
やがて溢れ出す陽光は収まり、形作る作業が完了していき、そうしてその容貌が晒されることになっていく。
「……うぇっ」
「吐く!? 普通吐く!?」
溢れ出す輝きに目を細めていたガイアスは、その造形を一瞥した瞬間盛大に嘔吐する姿を心外とばかりに咎める。
形成されていった少年の髪色は深く澄んだ深海を思わせる藍色であり、我ながらその容貌はどこまでも整っていた。
それこそ、そこらのアイドルさえも凌駕してしまう程に。
――それは、紛うことなき『俺』スズシロ・アキラの姿形を象った存在だ
「……自意識過剰って見苦しいな」
「どういう意味なのかな、そのコメント!?」
どうしてこの相棒はこんなにも俺に対して辛辣なのか、いつか問い詰めたい所存である。
最近白カネキならぬ白アキラさんが爆誕しそうで、でもプロット上難しくて難儀してします。




