表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
一章・「赫炎の魔女」
28/584

誓約


 最近、真に可愛い女の子を描こうと悪戦苦闘しています。

 模範的な乙女が今一番欲しい……!

 










「――無い、とは?」


 反射的に俺はそう質問した。


「そのままの意味だ。 極秘書庫。 大図書館。 その他諸々の情報源と成り得るモノを探したが――どこにもなかったのだ。 唯一見つかったのは大々的な誇張が成された戯言集だ。 当然、あんモノ、参考にならん」


「……それはそれは」


 随分と、顔色が悪いと思ったがそれが理由か。


 だが、本当にそんなことあり得るのだろうか?

 『英雄』の存在は大きい。

 なんせかつての「四血家最強」、ガルディールス家の当主及び血筋の奴全員を皆殺しにし、王の寝首を擦り落としたのだ。


 必然、その存在は大々的に広まっている。

 そんな『英雄』殺しの報告書が、無い?

 それはとてもじゃないが、あり得ないのではないのだろうか?

 

 いや、一つだけそれが成立する可能性が存在する。

 それは――、


「――スズシロ。 貴様も私と同じ考えか」


「まぁね。 流石に、ここまでヒントがあったならな」


 ルシファルス家襲撃事件。

 そして筒抜けな作戦。 

 極めつけはこの情報隠蔽。


 つまること――、


「内通者、もしくは上の指示、か」


「正解だ」


 しかも、もしそれが本当だったとしたらかなり大変なことになるぞ?

 極秘書庫やそこらの市民図書館にすらも『英雄』の記述が存在しない。

 果たしてそれをそこらの国民が成せられるだろうか?

 

 隠蔽と情報漏洩が同一犯ではない可能性も否めないが、やはりその可能性は低いだろう。

 だが、問題は内通者の存在だけではない。

 その内通者が国を牛耳るだけの権力を誇っているという事実そのものが非常に重要かつ厄介なのだ。


 しかし、現在ガバルドは多忙を極めている。

 当然、調査なんてする時間もない。

 だからこそ、時間が余る程ある俺を選んだってわけか。


「……全く、アンタも難儀なモンだな」


「そこまで理解できるなら話は早い。 スズシロ、貴様に頼みたいのはその内通者の確定だ。 ある程度の権威は譲り渡す。 これを使えばそこらの貴族は簡単に牛耳ることができるだろう」


 そう言いながらガバルドは俺にネックレスを投げ渡した。

 波のような七角形の中心には杭のような鉄棒が撃ち込まれた、かなり斬新なスタイルのネックレスである。


「……おいおい、まだ受けるとは言ってねぇぞ」


「ほう。 受けないのか?」


「――――」


 チッ。

 こいつ、全部分かっていやがるんじゃないかという疑惑が浮上する。

 まぁ、どちらにせよ接触したい人物はかなりいるからな……

 このペンダントを使った方が都合が良いのは事実だろう。


「俺が虚言を吐く可能性は考慮しないの?」


「分かって言っているだろう。 これは『誓約』。 そう簡単に破れる品物ではない」


「まぁ、そうだよな」


「……? 『誓約』? 何の話ですか、先輩?」


「自分で考えろ」


 ただえさえ色々と混乱しているんだ。

 脳への負担これ以上増やさないで欲しいという意味で正義の拳骨を喰らわす。

 

「先輩……後で話が」


「御免。 俺日本語ちょっと分からないんだ。 ちょっとシャラップ(永遠に)フォー・エバァ―(黙れ)


「……死んでください」


 後輩の怨嗟の視線なんて無視だ。

 俺は机に脚を思いっきり乗っけながら、ガバルドを見つめる。


「――受けてやるよ、そのクエスト」


「ほう。 いいのか? 正直無理難題を要求するかと思ったが……」


「残念なことにそいつは杞憂だよ。 俺はどこぞのかぐや姫みたいに理不尽な欲求はしねぇよ。 そのかわり、この紋章は好きに使わせてもらうぜ?」


「あぁ。 その程度、安い対価だ」


 これで契約成立、か。

 この世界の性質上、誓約を破ると何らかの災いが降ってくるだろう。

 つまり、俺がこの契約を破ることは絶対にできないわけだ。

 

「さてはて……面倒なことになったな」


 姫さん救出劇が終わった途端これよ。

 俺はどこぞのラノベ主人公かよ。

 なんならハーレム寄越せよ、全員沙織だったら最高だな。


 俺は椅子から降りながらこう告げる。


「んじゃ、俺は早速調査を開始するぜ。 これが終わるまでは養ってくれよ?」


「無論、だ。 困るのは私だからな」


「そいつは重畳。 それじゃあ、俺は行くぜ?」


 と、ガバルドたちへ踵を返そうとしたその時。


「――失礼します」


「――――ッ」


 突如としてやってきたのは一人の執事だった。

 髪の色素は年ゆえ白が入り混じっており、だがそれでもその眼光は戦士さながらの鋭さを周囲に放っている。

 俺もそこそこお世話になった執事だ。


 勝手にセバスチャンと呼んでいる。

 ちなみに、本名はちゃんと別にあるらしい。

 だが、一体全体どうしてセバスチャンがこんなところに?

 その疑問は即座に解決させられる。


「――ルシファルス家から伝達が」


「――ほう」


 ガバルドは鋭利なその目を細くする。


(……ルシファルス家、ね)


 何かと縁がある四血家の一族の名を俺は復唱する。

 そして、セバスチャンは不動の姿勢のまま言い放った。



「――スズシロ様。 貴方様へ、護衛依頼が来ております」



「ほぇ?」


 思わず変な声が出てしまった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ