呆気な!
オマケです
――そして、指定した座礁同士が互いに共鳴しあう
莫大な魔力と天才的な技巧により構築された幾何学的な魔法陣が浮かび上がり、刹那打ち上げ花火のように飛散していった。
その中途、俺の視界があまりにも鮮やかな手並みによって移り変わり目を見開き、溢れ出す陽光に目を細める。
そして俺は流水が如き手管で展開されたその神業に対し――、
「――呆気な!」
「いや、お前が考えたんだろ」
仰る通りで何も言えない。
あの後俺たちは早急に身支度を済ませ、万全を期した状態で再度あの王城へ足を踏み入れるよう画策したわけだ。
しかしながら、必然問題も生じる。
これ、どうやって侵入するの?と
無論堂々と名乗り出て王城の門を潜り抜ければ騎士たち(中年多し)たちによる熱烈な歓迎が手招いているだろう。
流石に朝っぱらから醜悪な顔面を拝むのはご遠慮したい。
なので――、
「――毎度の如くドラ●もんなライムちゃんの出番なんだよな」
「誰だよ、それ」
「あ、これは広まってないの」
てっきり色々と二次創作(盗作ともいう)によってかの著名な作品も拡散されていると思ったのだが。
「というかパクリは駄目だろ、マジで」
「お兄ちゃんが誰に何を言っているのか分からないのよ」
分かったらいけないのよ。
閑話休題。
俺が王城へ侵入する上で最も憂慮しているのは結界だ。
無論、王城へ散歩でもするかのように気楽に入場できるのならば苦労はしないが、もちろんそんなに甘くはない。
実を言うと王城にも魔王城同じく登録者以外の侵入を阻む忌々しき結界が張られているワケで。
んでその結界は『転移』を筆頭とした魔術の一切合切を無効化するモノ。
誰やねんこんな迷惑なモノ作ったのは。
まあでも――、
「――結界はもう破ってるから問題はないと思ったのだが、こうもあっさり成功しちまうとはな……」
「イイコトじゃないか」
「あ、うんそうだね」
正論である。
ぐうの音も出ない俺を鼻で笑いながら、レギウルスは指示を仰ぐ。
「それで? 俺たちは何をすればいい?」
「とりあえず、王室へ向かうぞ。 バカップルは魔王の護衛をよろしくな」
「な、なあ、何か勘違いしているようだが『まだ』俺たちは付き合って――」
「――キェェェェッ!?? まだ!? こいつこんだけイチャコラしておいてまだなの!? 爆発しろよ!」
「お、落ち着け! 巡回に勘づかれるかもしれないだろ!」
「そ、そうだよアキラ! 一旦落ち着こ?」
「よし、お前を殺す(真顔)」
「冷静になったら殺していいとかそういう意味合いじゃないから!」
ふむ、どうやら最近沙織の情緒が酷く不安定なようだ。
「落ち着け、沙織。 俺はただただ氷のように冷たく、研ぎ澄ました刃を比喩表現抜きでクソ野郎に突き刺すだけだから」
「刃傷沙汰の予告をしないでよ!」
「けっ。 イチャコラしてやがんぜ、傲慢の」
「こいつ、自分がこれだけリア充を嫌ってるのにこいつ自身がリアル充実クソ野郎とかマジで厄介すぎんだろ」
ふむ、今なにか不本意な評論をつけられた気がする。
「……やけに濡れてるな、この廊下」
「気にするだけ無駄だ。 故に気にするな」
「お前がその台詞を吐く時は大抵ロクでもないことを企ている時だろうが。 誰が信用するもんかよ」
「うん、平叙運転すぎて逆に落ち着くわ」
「えっ……? アキラ、もしかしてそういう趣味が……」
「ッッ!? 違う、違うんだ! 確かに沙織になら踏みつけにされても悦楽を感じるかもしれないが、断じてこのクソリア充の罵倒に快感を生じたりしないぞ!」
「うん、大丈夫。 アキラは大丈夫だから」
「あっ、これ理解してもらえなかった時のやつだ」
とりあえずレギウルスを再起不能にしておこう。
「ちょ、アキラ突然能面のような無表情で襲い掛かるなぶべらっ。 止めっあがぁ」
「……君たちは何をやっているのかな?」
「応報と復讐ですが何か」
「せめて、そういうことはもう少し状況が落ち着いてからにしてもらないかな……」
「いや、十分安然の戦況だろうが」
「――――」
現在ライムちゃんを起点として気配遮断をはじめとして隠形系フルセットの魔術が展開されており、そこらの輩に補足されることもないだろう。
だがしかし、これはあくまえ保険である。
なにせ、もう既にこの王城には警備一人さえも通っていないのだから。
「……人、いないね」
「(・∀・)ウン!!、そうだね」
「吐け、アキラ」
「その前にどうして真っ先に誰よりも早く俺を容疑者に認定したのか聞いてもいいかな?」
据わった眼差しで俺を睥睨しつつ、その首筋に鋭利な刃物をつきつけてくる悪党へ断固として抗議する。
するとレギウルスは未だかつてない親愛に満ち足りた表情をしており――、
「おいおい……俺はお前を心底信頼しているだぜ。 ――悪い意味合いでな」
「うん、信用なんてしてもらいたくなかったよ」
「その懸念は杞憂だろ。 何故なら、お前が純粋に背中を預けられることなんて未来永劫ないからな」
「なんか、背後に寄られたらさりげなくナイフ刺されそうだしね」
「同感なのだ」
俺って外道が鬼畜悪党の類なのかな?
「まあそんな雑感はともかく、実際その通りだよ。 俺としては根回しがつがいなくつんで心底安堵してるぞ」
「……殺してないだろうな?」
「――――」
目下の懸念に剣呑に目を鋭くさせるガバルド。
なんで真っ先に始末したとかそういう方向性に向かうのかと問いだしたいが、今回に関しては完全に己の日頃の行いが災いした故に起きた嫌疑。
流石に乱雑にあしらうことはできなかった。
「安心せい。 一応無事だ」
「……本当なんだな?」
「なんなら『誓約』でもするか? 俺としては一向に構わんが」
「――。 いや、いい」
「そうか」
流石にこうも自信満々に断言されるとわざわざ確認はしないのか、それとも罠でも警戒しているのかすげなく断れていった。




