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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
四章・「カラミーラの約定」
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人徳ねぇ!














 意識は混迷し、世界が暗転し白熱したりとやたら忙しない。


 微睡む意識が正常な思考回路を妨げ、普段の飄々と胡乱気な姿からは考えられないようなあどけない寝顔を見せる。

 しかしながら明らかに意識が掻き消えているのにも関わらず、その体制は万全を期しておりたとえいつ襲撃があろうとも即座に対応できるだろう。


 そんな合理と幼気が混在した彼を――、


「――『雷導』」


「あばばばばばばばばばばばっっ」


 突如、骨の芯にまで反響するような電柱が浸透する。


 微睡んでいた意識がたった一瞬にして完全に復帰を遂げ、俺は目を見開きながらあまりも乱暴な起こし方に断固として異議を唱える。


「ちょっと、いきなりビリビリはないんじゃないのかな!?」


「だって、お兄ちゃんがやれっていったんじゃん」


「そうだったねそうでしたね!」


 まさかの自業自得。


 ヤケクソ気味に騒ぎ立てる俺。

 過去の己に悔恨しつつ、俺は未だ痺れる体を屈折しながら寝間着にその華奢な身を包む少女――ライムちゃんを一瞥する。

 余談なのだが、その身長差故に見下ろすような形になっている。


「……今、何時?」


「炎天の七刻よ」


「今更だけどこの国の単位、もう本当に厨二だよね」


「同感よ」


 どうも誰が広めたかどうかは定かではないが、この世界の秒針が示す単位はかなり『イタイ』ネーミングとなっている。

 どうせなら古き良き日本式でも良かったのに。

 というかアレ確か世界共通だっけ。


 まあ、そんな雑感はともかく。


「どれくらい進んだ?」


「もう着いたわよ。 案外リヴァイアサンもやるわね」


「え? もう?」


 淡々とした返答に微かに目を見開く。


 俺の予測だと早くとも今日の正午程度であったが、嬉しい形でその未来予想が外れる。

 なんでも予想以上にリヴァイアサンにとっての宿敵である南風が吹いておらず、空気抵抗が最小限に抑えられただからとか。

 流石に俺もこの世界の詳しい法則までは分からぬ。


 ちなみに、余談なのだがどうして俺がこの期に及んでログアウトしていないのかは、単純にする必要がないから。

 今日は安らぎの休日。

 我が忌々しき両親は歓喜するべきことに多忙の身だ。


 今更俺が顔を見せなくとも左程心配はしないだろうし、そんなことであの冷徹仮面が慌てふためいたらそれはそれでショックである。


 どうもライムちゃん曰く朝の三時頃には既に王国の上空に到着し、今現在は準備が整うまで上空でとどまっているらしい。

 というか――、


「……なあ、疑問なんだけどどうしてもうとっくの昔に目的地に辿り着いたのなら、どうして俺誰にも起こされなかったの?」


「人望じゃない?」


 ……泣きそう。

















 とりあえず異世界産の繊維をふんだん(というか100%である)に利用してパジャマから普段着に着替え、エントランスへ。

 するとそこには既にレギウルスや魔王といった面々が得物を片手に集まっており、和やかに談笑していやがった。


「――さて、言い訳を聞こうじゃないか」


「誰もお前の汚部屋に入りたくなからだろうが。 穢れる」


「……(無言で号泣)」


 そろそろ仲間に対してもっと親身になって欲しいと思わなくもない。


 真顔で泣き崩れる俺を「なんだこいつ……」的な見ちゃいけないモノでも見てしまったかのような眼差しでガバルドが眺める。

 無論、心底不本意である。


「お前、泣くときくらい頬崩せよ……」


「寝起き故に表情筋死んでんだよ。 それで、もう大体終わっているとはいえもちろん準備は順調だよな?」


「……結局、お前が何を画策しているのか聞けずじまいだったな」


「それはヒ・ミ・ツぶべらっ」


「魔王、ゴキブリを征伐したぞ」


「英雄君、それはゴキブリに対して失礼極まりないよ。 彼のおぞましさはこの世に溢れるありとあらゆる言語で飾ろうとも形容できないのだよ」


「成程。 ゴキブリには済まないことをした」


「何!? 魔王アンタ俺のこと身勝手にも恨んでるの!?」


「何を。 私は案外君のことを気にいっているんだよ」


「それがこの態度!?」


 なんだろう、もうあの頃の純粋無垢で可愛らしい魔王はもう遠く彼方、夢のまた夢となってしまったのだろうか。


「今なにか不本意極まりない形容をされた気がする」


「気にするな」


 俺としては、どうしてこんなにもこの世界の住民は勘が冴え渡っているのが心底不思議でならない。


「……さて、そろそろ茶番は終いにすんぞ。 確かに緊張を揉み解したい気持ちは分からなくもないけどな」


「ち、チンパンジーがそんな気配りを……!」


「あのゴリラが!? 有り得ない、きっと偽物だっ」


「嘘なのだ、嘘だと言ってくれ劣等哺乳類! ……ハッ、もしかして『厄龍』とかいう得体の知れない奴なのかもしれないのだ!」


 この後滅茶苦茶殴られた。


「戯れ言はともかく――で、アキラ。 本当にお前がいう策略は機能しているんだろうな?」


「俺の相棒(笑)が虚偽報告をしていな限りはな」


「ハッ」


 まあ、その事象相棒も容易に真実か否か証明できてしまうので上記の可能性はほとんど眉唾話なのだが。


「それじゃあなんで俺たちに武装させるんだよ」


「君俺のこと疑いすぎね」


「なんせ信頼なんていう洒落た言葉とは誰よりも程遠いからな」


 どうやらまだ俺の采配故に戦士したことを根に持っているようだ。


 チンパンジーは、器が小さい(しみじみと)。


「まあ、本当に念には念をっていう意図しかねえよ。 魔王城の一幕を思い出してみ? あの全身レインボータイツ並みの不審者が再度出現する可能性だって無きにしも非ずだろ?」


「例えが酷いっ」


 だって事実なのだのも。


「察している奴も多いのかもしれないが、もう既に俺たちの戦いは佳境に差し掛かっている。 この重要な局面でアホやらかすわけにはいかんだろ?」


「……それは一理あるな」


 一夜明け『老龍』王都襲撃まで最大でもたった二日しか刻限がないのだ。


 しかしながら案外首尾よく魔人族の方は何とかなったし、同時進行中の作戦も芳しくないことはない。

 だがしかし、どんなに優勢な状況だってたった一つの慢心が致命的となってしまうことこそ世の真理である。


 警戒は、して損はない。


「そんなこんやで各員常に周囲に目を光らせろ。 何か不審な点があったら遠慮なく報告しろよ? じゃなきゃ殺す」


「了解した」


 決戦前に念を押す。


 そして――、


「――それじゃあ、王城クーデター初めまSWО(シヨウ)


 


色々とストックが有り余っているので、多分五時中くらいにはもう一話更新できると思いますよ

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