――フィナーレ
長、すぎた……(ガクッ)
本当は四千文字程度で終わらせるつもりだったのに……ヤバい、八十万文字説が真実味を帯びて……うぼっ
――魔力消費89%
――推し量るに残るタイムリミットは数分
「――――」
たった、数分だ。
今すぐにでも魔晶石を目測できなければ魔王の勝利は夢のまた夢となってしまい、そのまま異形の化け物に喰い尽くされてしまうことになるだろう。
見つけろ、穴が開くほど凝視しろ。
色素が次第に薄まっている箇所。
それを目を見開き見出そうとするが、瞳が映し出した情景はただただ果てしない暗闇であった。
「あっ」
「あhどlshどsんどs♡(笑)(笑)(笑)」
直後、盛大に魔王の骨が軋む。
咄嗟に勢いよく後退し勢いを押し殺したところまでは上出来だったのだが、問題は残量魔力である。
万全の状態ならば不測の事態であろうと迫りくる危機を認識した瞬間に秒さえも億劫に見える速度で魔力を張り巡らせるだろう。
だが、現在魔王の体のあちこちはひしゃげ、更には魔力も相当に疲弊している満身創痍の状態であった。
如何に魔を統べる王であろうと、この状態で筋力を即座に強化するのは到底不可能であることは火を見るより明らか。
故に、結果は必然。
「あべっ」
「djklsんcp@あまっかsんsk失笑」
世界の情景が高速で移り変わる。
もはや即席のクッション代わりにしていた『天呑』さえも満足に発動できず、冗談のように地平線へと一直線に放物線を描く。
それこそ、弾丸を彷彿とさせる勢いで。
更に異常なのは弾丸を平然と並走――どころか追い抜き更なる追撃を加えようとするこの怪物であろう。
だから――、
「――で、『天呑』ッッ‼」
「あべしっ↑」
そして、魔を統べる王が全身全霊で編み出した魔術が猛威を振るう。
その剛脚が魔王へと到達する寸前、音もなく互いの間に介入していった黒の禍星は容易く巨体を呑み込んでいった。
無論、これで追いやれたなどという希望的観測は抱かない。
今は唯、相手の急所を見極めて――、
「――kdんjsp;dんsskjp;あんjsjskjslsんsぁッッッッっぁぁぁぁlsぁsぁぁぁぁぁぁzlさぁlさlslさlッッtt!!!!!」
「――っ! 早いんだよ!」
突如、上空から轟音。
それが魔王の箱庭に木霊した直後、盛大に空間が圧倒的な筋力の前に成す術もな歪み、砕け散っていく。
余りにも強引な脱出手段とその短時間に、冷や汗を流しつつ、残る力を振り絞ってステップを刻む。
寸前、世界を割り響きながら常識外の根源が飛び出してきた。
無論――そのターゲットは満身創痍の魔王。
「――っ」
「あbsjjszj? ksjhslsなsjsjさじゃかsjsぉs!??????」
しかしながら怪物の顎門が大地へ接触する直前に被害が及ぶ範囲を炙り出し、何とか離脱した魔王には何の痛痒にもならない。
が――不意に、耳触りのいい軽快な音が。
――ポキッ
そんな擬音が似合うくらい軽やかに限界を迎えた左足の骨が木っ端微塵となり、必然崩れ落ちる魔王。
もちろん、この絶好の好機を異形が見逃す筈もない。
殺す。
純然たる殺意をその眼光に宿し、狂気の象徴は魔王の元へ。
そして――、
「――見つけた」
「――見つけた」
世界がスローモーションになる。
呼吸すらも億劫になる極度の疲労の中、過ぎ去る秒針が地を這う亀が如き速力にしか思えず噴き出してしまう。
もしや、これが走馬灯というヤツなのだろうか。
そんな益体もない思いを抱いてしまう。
否、もはやなんでもいいのだ。
今この刹那を数億年にも引き延ばすこの栄光の瞬間がいつまでも続いてくれるのならば、なんでもいい。
何度も幾度も数億回も、その歪なシルエットを凝視した。
その度に失望を、焦燥を、絶え間の無い恐怖を存分に味わった。
――だからこそ、徐々に弱まっていくこの煌めきが燦然と輝く陽光のように思えてしまうのだろう。
「――見つけた」
もう一度、確かめるようにその言葉を口ぐさむ。
今ここに、魔王になるべくして生れ落ち、そうして己自身さえも定かではなかった青年は、全身全霊となけなしエネルギーでそれを生み出す。
――それは、万象を吸い寄せる絶大なエネルギーの渦だ。
構築されるこの禍星はこの世界において一種のダブーであり、決してそれが『神』に許容されることはないのだろう。
虚空にうぞを描く『それ』はやがて一切合切がスローモーションになった世界の中でツギハギ形成していく。
――それは、己自身を吐き出し、誰かに教わったことしか実行してこなかった青年が初めて己自身の意思で生み出した処女作かつ最高傑作だ。
『それ』はこの世に産み落とされたことを喝采するかのように禍々しい瘴気を周囲に無作為に放っている。
そういえば、始めて自分で何かを成そうとしたときに真っ先に思いついたのがこれだったと、自分でもどうなんじゃないかなと苦笑する。
――それは、一切合切を永久の箱庭へ追いやる渦だ
誰であろうと、――そう、たとえ敵意の対象が『神』であろうとも吸い寄せるこの渦からは何人たりとも逃れることは叶わないだろう。
魔王が織りなす最大効率かつ最高潮のフィナーレに世界が刮目し、誰もが息を呑む。
そして――、
「――『呑天』ッッ!!!!!」
「あがおkさpsなspんs;lpdcんs;lpdsms」
そして、ついに魔王の指先は異形の頭部――その中枢に君臨する『魔晶石』の輪郭を捉え、そして吞みこむ。
抵抗する強固な鱗だろうが、魔王の最高傑作に敵う筈がない。
――瞬間、確かに異形を構築する魔晶石を本体から切り離すことに成功した。
直後木霊するのは生涯最高潮の怒号だ。
「あはかhそあshそあshそshsぉsんhsぉdspdsぁぁぁlsんs;sぁ;あさlさーhdぁhdぉあ―――――――――――――――――――――――――――――ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁああああああああああああああszxsんldcじぇdjkぉksbslkslkl;s;ks―――――ッッ‼」
「――――」
悲鳴は慟哭へ、慟哭は断末魔へ、断末魔は絶叫へ。
やがて異形の姿は目まぐるしく移り変わっていく。
それこそが、異形がこの淡白な人生に刻める最後の生き足掻いた証明だとばかりに。
「――。 見苦しい」
「――ぁ」
――そのあまりの醜態に嫌気がさし、ついに魔王直々に破裂する火薬と共に引導が渡されていっただった。




