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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
三章・「眠りの道化師」
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狙い定めて


 今更ですけど、私ってコメディーとシリアスのギャップがスゴイですね














「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ」


 幾度と己へ被弾する度に微かな火花と共に爆炎を吐き出しながら多大な衝撃と共に火薬が弾け飛んでいく。

 その度に襲い来る激烈な痛覚。

 巡る激痛に翻弄され続ける異形へ、更なる追い打ちが。


「――こういう趣向は如何かな?」


「――――」


 異形の巨体を覆い尽くすような影。


 それの出現を察知し、咄嗟に跳躍しようとした瞬間――再度、世界に歪が生じブラックホールのように異形を吸い込んでいく。

 異形はそれから逃れる術を見出すこともできず、そして降り注ぐ大槍の餌食となっていった。


「あがぁっ☻」


「――――」


 落下する大槍は容易に強靭な異形の肉体を血肉を抉りながら穿ち、そして、文字通りその場から釘付けにする。

 間髪入れず、再度爆破。

 今度は身体において最も脆い眼球を無遠慮にも爆風が撫でる。


「~~~~!!!!!」


「――――」


 目が覚める、そんなレベルじゃない。


 今までは異形と化しても滞ることはなかった魔力の巡りによりその強固さを磨きにかけていた鱗が防壁となったからよかった。

 だが、この目玉は紛うことなき生身。

 流石に異形と化そうと、目玉を鱗で覆うことは不可能。


 すると轟く絶叫と共に、それまで異形が蹂躙される様を薄い笑みを浮かべながら傍観していた長身の青年がこちらへ肉薄する。

 死ね。

 ただそれだけの思いを込めえ、未だかつてない爆炎を全身から吐き出す。


「――残念、私の出番はこれで終わりだよ」


「――っ!」


 猛烈な速度で跳躍し、接近する青年の身に赤熱する烈火が触れるその刹那、何の前触れもなくその姿が掻き消える。

 それと共に、下方より絶大な衝撃が。


「あがががががががっ「」


「――――」


 一切予備動作を垣間見せることなく、無音で異形へと忍び寄って万象を吸い寄せる漆黒の渦はもう一つの用途で運用される。

 異形はそれまで眼前に迫りくる青年ばかりに注意を払っていた。

 故に、迫りくる暴虐に気が付かない。


 それは、理性と本能を捨て去ったが故に生じた悲劇である。


「――穿て」


「あばばばばばばッだったたたた【】」


 刹那、質量の塊が異形のおぞましい身体へ接触する。


 鋭利な切っ先は容易に強靭な鱗を触れた途端消し飛ばし、再度臓腑を貫通しながら突き刺さっていった。

 突如として体内に侵入した異物を引き抜こうとする異形であったが、果たして魔王がそのような暇を与えるだろうか。


 仮にそんな隙が生じたとしたら、それは悪辣な罠以外の何物でもないだろう。


 思考を放棄した愚昧なる獣には解せぬ話だが。


「あっがっがっががが&」


「電気ショック療法だよ、お大事にね」


 異形が大槍に触れた瞬間、全神経を狂わすおぞましい程の電力を誇る電流がその摩訶不思議な身体を蝕む。

 爆発的な電流に体がかじかみ、身動きさえも叶わない。 

 そして、浮遊感。


「――ッ!」


「さて――そろそろ止めだよ」


 鋭い眼光が異形を射抜く。


 体がおぞましい電力によって竦む今この瞬間こそが千載一遇の好機であり、それを逃すわけにはいかない。

 足元に多大な魔力を巡らせ、力強く跳躍する。

 刹那、電光石火と化した魔王が異形へと肉薄する。


「――――」


「ががはははっはっはっはsっはっはは■」


 せめてもとと周囲に爆炎を吐き散らすが、渦巻く禍星には無意味。

 そして全てを吞みこまれ、成す術もなくその鋭利な大剣が異形の寝首を掻き、今度こそその息の根を――、














「あがぁっ♡」


「――――」


 それは、悪意に満ち満り濁り切った声音だった。


 首筋を両断したはずの異形は、それでもなお嘲弄するように目を細め、突如飛び散った肉片が逆再生でもするかのように再構築される。

 泡立ちながら修復される肉塊に戦慄しつつ、それでも攻勢の手を緩めることは断じてない。


「――消し飛べ」


「――――」


 魔王は虚空からそれこそ原子爆弾さえも霞んでしまいそうな物量の爆薬を取り出し、無作為に再生する異形へ放り投げる。

 そして、宙を踊り舞う火花。

 それが爆弾に到達しか瞬間、世界から音が消え去った。


「――――」


 何も感じない。

 何もかもを感じる。

 そんな意味不明な感慨にも似た感覚を抱きながらそれでも魔王は押し寄せる爆風の処理を忘れることはない。


 莫大な衝撃と共に土煙が腫れていく。


 そして――、


「……流石に、これは無理ゲーだね」


「あbげはじゃはp;あばjかぉあkあはいかあぽあはpdlkfjdps!_?」


「――――」


 魔王は苦笑し、冷や汗を流しながら、眼前の有り得ない光景に目を剥く。


 打撃や裂傷自体はちゃんと効いている。

 ただ単に、それが与える影響があまりにも薄いだけである。

 異形の化け物の頭部を中心に狂い裂いた爆炎は確かに彼を滅ぼしたが、その瞬間から超高速で再生と応報が開始されていた。


(……これ、どうやって倒す?)


 正直なところ、勝算が見当たらない。


 この空間は文字通り魔王の支配領域。

 故にこの場で如何にこの化け物の実力が規格外だとしても彼が滅ぼされることは決してないだろう。

 だが、それは相手も同じこと。


 現状ありとあらゆる重傷を即座に治癒する異形に大して明らかに決定打が欠けており、膠着状態といったところか。


(……そもそも、どうやって再起しているのかな?)


 生物のありとあらゆる行動にはエネルギーが必須となるのは世の定め。

 そもそもこの醜悪な存在が生物などと形容すること自体は憚れるが、それでも吐息している時点でそう認定しよう。

 ならば、この異常な生命力は何を糧として――、


「は?」


「あがはがじゃじゃかはか」


 気づいた。

 気が付いてしまった。

 そもそも魔獣には魔晶石と呼称される核が存在しており、この魔晶石こそが魔獣と魔獣として成立させている最もたる要因。


 その結晶が保有するエネルギーは残念ながら人型生物には利用できないが、計測した限りではそれこそ魔王の魔力量さえも上回るという。

 仮に、その魔晶石を糧にし修復しているのならばある程度は辻褄があるのだろう。


(再生は無限ではない。 かといって魔晶石に蓄えられたエネルギーが底を尽きるのをまっていたら日が暮れるだろう)


 上記の理由により、時間稼ぎという選択肢は封じ込まれる。


 ならば、突破口は唯一無二。


「狙いは魔晶石一択――終わらそう」


「――――」


 そう魔王は掠れるような声音で呟き、再度跳躍していった。



 


 あっ、予告した通り明日の更新は少し早くなると思いますよん

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