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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
三章・「眠りの道化師」
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退屈な一日を


 ……なんで三人称でも魔王の名が本名ではなく魔王なのか。


 はい、単純に私が忘れっぽいからです! 申し訳がないッ!(土下座)













「――――」


 使命、宿命、落命、厳命、生命。


――知るか、そんなモノ


 今この瞬間、龍は己の魂――否、核となる魔晶石へと一切合切を投げ捨てる思念が触れ合い、そしてまだ見ぬ光景を生み出していく。

 ぐにゃ。

 そんな擬音が似合いそうな程に魔晶石が歪んでいったのだ。


「――――」


 それまで結晶のように正確に規則正しく並んでいた粒子が一斉に曲解していき、やがて禍々しいモノへと変貌を遂げていく。

 魔獣とは己の私欲に忠実だ。

 だがしかし、それでも本能というある種のストッパーは存在していた。


 ――が、今この瞬間、生物としての最低限のモノさえも躊躇することなく投げ捨ててしまっていった。


 そして――、


「がヵっ(笑)。 アハハあああかぁヵぁ。 黙れあるじいいあははか。 侮辱すぅううなのよおおあおおおさ。 うっっぁせぇげななかあああ」


「何だ、これ」


 魔王は唖然と上空から変貌を遂げたその醜悪なる生物を視認し、吐き気さえ差すようなショッキングな光景に当惑する。


 支離滅裂。


 そうとしか言いようがないくらいに意味不明な言葉を饒舌に舌を弾ませ、絶叫とも見て取れる咆哮を轟かせた。

 煩さい、黙れ。

 今この瞬間この龍――否、化け物を突き動かしているのはたったそれだけ。


 そう、化け物である。

 

「あぁぁああさヵっぁぁぁ!???Σ( ̄ロ ̄lll)。 あぇぇん? アッハッハっハッハ八ハッハッハあ あ あ あ あ」


「……何だ、これ」


 龍の怨念が彼自身の魔晶石を歪曲させた時点で常に龍の姿形は変貌を続けており、形容さえも許さぬ造形となっている。

 しかしながら外見はともかく、彼が発するその圧倒的な暴虐を示すかのような威信に身震いしてしまう。


 だが――、


「――面白いッッ」


「アハッ」


 異形?

 強烈な威圧感?

 それがどうした。

 魔王にとって、それは些末な問題であり、否、彼にとってこれは歓迎すべきイレギュラーでもあった。


 愉快愉快、つい先程の何の面白味もない蹂躙されるだけの存在は魔王の無卿を慰めるには余りに事足りない。

 今この瞬間魔王が眼前の存在に無我夢中になれるのならば。

 

――十分過ぎる


「――詫びるよ、蜥蜴。 どうやら私は君を見誤ったようだね」


「うっっぜぜぇぇえええなぁかきこ←。 ごろずぞ♡」


「狂気結構。 ――殺す」


「――ばはやっでででででみろよぉ”◇」


 そうして魔王は、眼下に迫った緊急事態を意に介した様子もなく、力強く跳躍していったのだった。
















「あ”っ、あぁっと」


「――ぁ」


 衝撃。


 尋常ならざる膂力をもって振るわれたその手腕に逃れることもできずに直撃していった魔王は、凄まじい速力で飛翔していく。

 

「させるかっ」


「――――」


 慣性の法則に従い、どこまでも水平に吹き飛んでいく――寸前、魔王の体を暗黒の渦が呑み込んでいく。

 そして――、


「――『絶天』」


「あがまああああああっぁっ”%」


 魔王は荒々しい大地の岩盤に抉られる直後、ありとあらゆる概念を吞みこんでしまう渦が苦sy損となっていった。

 そして魔王は『絶天』によって強制的に弾丸が如き速度で吐きだされ、そのまま異形の化け物のッ懐へ。


「ふむ。 どうやら相当に筋力が強化されているみたいだ。 注意していた方が、きっと得策だろうね」


「あへぇ。、」


 抉り取るような眼光にかじかむ魂を全力で奮い立たせながら、魔王はその大剣を――、


「――ぁ」


「あがはがははははしゃ<゜)))彡」


 瞬時、爆発的に異形の化け物からおぞましい程の熱量を宿した爆炎が溢れ出し、魔王の皮膚を焼き尽くす。

 突然のことで渦の展開が遅れ、すぐさま展開していくがしかしながら多少なりとも炎熱の影響を受けたようで、灰同然と化した筋肉の隙間から骨が露出されている。


「――『天呑』」


 それを確認した魔王は、即座に己自身も渦の中に呑み込んでいった。


「……中々に強敵だね」

 

 そもそも魔王自身が圧倒的すぎるが故に今までほとんど使用することもなかった治癒魔術を行使する。

 淡い陽光が咄嗟に頭部を庇う際に犠牲となっていった左腕を修復しつつ、眼下の強敵へ思いを焦がす。


「どうやら、先刻までの彼とは別物と考えた方がよさそうだね」


 その隔絶した筋力は当然ながら、どうも莫大な火炎の勢いは衰えるばかりか更にその熱量を増大させていっている。

 あの触れただけで骨の芯まで焼き尽くす炎熱。

 おそらくあの異形を討伐するには、この二点の厄介極まりなき要素を解消しなければならなそうだ。


 そう、結論づけていたその時。


――ドンッ


「は」


 意味が、分からない。


 そもそもこの異次元空間は完全に外界からは遮断されたモノであり、魔王の意思以外では干渉はj不可能である。

 不可能、だった。

 轟音が木霊する度に空間の亀裂は悪化していき、ついに――、


「――あ」


「あはぁぁっ”↑↑↑↑↑」


 拳が、突き抜けた。


 原型を留めないその剛腕は何度も何度も執拗に空間の歪を拡大させ――ついに、木っ端みじんにしてしまった。

 いっそのこと悪夢とも形容できるような残虐かつ無慈悲な光景にしり込みし、それでも彼は再起に戦意を絶やさせない。


 そう、今までの自分はどうかしていた。

 退屈を嫌うといいながらも、このように万が一の時は批難できるような都合のいい居場所をつくって。 

 自分から、世界をつまらなくしているではないか。


 そんなの、到底許容できない。


 さあ、今この手でセピア色の日々を彩ろうではないか。


「――飛ばすよ」


「あびぃりあぁかⅢ」


 言語を解さない応答。


 それでも、伝えたい思いはきっと伝わったから。


「――死んで」


「あびががが×」


 全身全霊の一撃が、振り落とされた。



 

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