Σ( ̄□ ̄|||)
↑ 久々の顔文字です( ;∀;)
「――――」
えー、現在ただ今俺はかつてない窮地に陥っております。
ええい、こうなってしまったのも何食わぬ顔でスタスタと俺の言葉に従い距離をとるライムちゃんのせいだ!
だがしかし、現実は言い訳する暇さえも与えやしない。
「――で、何があったの?」
「え、えっとね……」
ぐるぐると視線を彷徨わせるが、しかしながらその度に沙織は俺と目を合わせるその姿は至福の一言。
ハッ!
何を俺はこの状況で見惚れているのだろうか。
「あー、まあ、なんやかんやありまして……」
「そのなんやかんやの部分を教えて」
「えっっと……」
「教えて!」
「ひぃい」
不味い、不味いぞ!
このままでは沙織に嫌われてしまうという最悪の可能性が浮上するが、しかしそれ以上に正直に話すと面倒なことになるだろう。
洗脳しましたなんてね?
よし――ここは腸●スタイルである。
「――妹だ」
「……はっ?」
「だーかーら、ライムちゃんは妹なんですう! 何か文句でも!?」
逆ギレして剣幕で有耶無耶にしてしまおうとするが、しかしながら沙織の追及はこの程度ではないようだった。
「なら、どうして言葉を濁したの?」
「いやあーちょっと気が動転しちゃってね」
「……本当? 嘘は言ってないって誓える?」
「もちろんだとも!」
平然と虚言を吐く自分に嫌気がさしてくる頃合いである。
だがしかし、自分を押し殺した甲斐もあってそこらの警察官もビックリな追及もこれで途絶える――、
「じゃあ、あの子とどうやって妹になったの?」
「はぇっ」
なおも続く尋問に口元から解体寸前の家畜のようなうめき声が漏れ出てしまい、更に不信感を上乗せしてしまう。
クソおぉ!
完全に塩対応の沙織に慣れてたから油断してた!
どうしよう、俺は一体全体どうやってこの逆境を乗り越えればいいんだろう。
「まあ、紆余曲折ありましてね」
「その紆余曲折を教えて」
洗脳ですが何か?
そんなこと言うと今まで積み上げてきた好意の一切合切が無駄に終わってしまうので断固として黙秘する所存である。
というか。
「質問を質問で返すようで悪いんだけど、どうして沙織はそんなことを俺に聞くのかな?」
「うぅ……」
意地悪な笑みを浮かべてそう問い返す。
フっハッハ、我逆境乗り越えたり!
沙織はどこぞのバカップル(何故か大男なのに恋愛経験0で初心な英雄は除く)のように開き直ることはできない!
そう――沙織は極度の照れ屋さんなのだ!
故に、沙織はこの難解極まりない問いに答えることができずに、俺は何とかこの局面を乗り越えて――、
「そ、そのぉ……ほら、やっぱり私、アキラのこと好きだから」
瞬間、顔を傍目から見ても容易に判別できるほど真っ赤に染めた沙織の掠れるような声音に、頭が真っ白になってしまったいかのような錯覚に陥ったのは言うまでもない。
へ?
好き?
あんまりにも予想外な内容にかつてないほど脆弱な心のキャパが易々と突破され、必然硬直してしまう。
「――――」
いや……別に心底驚いていることはない。
あの頃の沙織の態度や仕草を考えるのならば赤子でも理解できるだろう容易な事実であるが、俺が驚嘆したのはそこではない。
前述のとおり沙織は極度の照れ屋。
故に俺への好意を口に出すことはなかった。
そして、その逆も然り。
しかしながら、いつしかその拮抗はあの事件(厳密には事件ではないが)によってとっくの昔に崩れ去った筈、
その認識が染み付いており、故にストレートな愛の囁きが予測できないでいたというのが現状である。
とりあえず、
「ああ……もう死んでもいいや」
「? ど、どうしたのアキラ?」
「なんでもない。 なんだか溢れ出す幸福感によって口から臓腑を吐き出しそうなんだけど、なんでもないよ」
「それを果たしてなんでもないって言う?」
解釈の差異だろう。
しばらく予想外の幸福にかつてないほどに安らかな表情をする俺を見た沙織は、「はあ……」と溜息を吐く。
「自分でもお人よしなのは分かってるけど……今回は許してあげる」
「そ、そうか」
別に淫らな行為なんて一度たりとも行っていないが、しかしながら意味不明な謎の罪悪感が込み上げてくる。
「でも、そ、そのえっちなことはやってないんでしょ?」
「もちろん! 俺の初めては沙織が奪っていいよ?」
「ごめん、ちょっと何言ってるのか分からないや」
苦笑する沙織の尊さといったら。
それこそ至福が溢れ出して鼻血でも噴出しないか実に心配である。
と、そんな俺たちに野太い声音が耳朶を打つ。
「おーい、アキラ。 イチャコラしてないでさっさと行くぞ?」
「あ、ああ。 そうだな。 ほら、沙織、行こっ」
「う、うん……」
互いに頬を赤らめながら何故か暗黙の了解の如く自然と手をつなぎながら俺たちをまつレギウルスたちへ向かおうと――殺気!
「――っと」
「チッ。 外したか」
「いや、外したかってね……」
それこそ銃弾すらも上回りそうな速力で加速していったナイフを俺は極自然な仕草で触れ、撫でるかのように軌道を変更させる。
バカめ、この程度の奇襲なんのそのじゃい!
というか何故暗殺しようとしたし。
いや、このような場での犯行は暗殺などではないかと思い直しながら、
「オッケーガバルド、沙織に手を出そうっていうもんなら、生まれたことを後悔させてやんぞ? ア”ァ?」
「――リア充には、万死を。 それが独人の共通願望だ」
「アッハッハ、既婚者が戯れ言を」
「既婚? アレを婚約と捉えるのならばそうなるようだな」
「うっせぇんだよ! 何!? 女の子に無理矢理婚約されたから不幸でした!? 煽ってんのかよ!」
「煽ってんだよッ‼」
「よし、殺す」
日本刀ステンバ~イ。
「――暴力はいけないよ、アキラ」
「……委細承知っすわ」
「やーい、尻に敷かれてんの!」
「それはお互い様だろうが!」
そんな喧騒は、リヴァイアサンの客船に乗るまで永遠と続いて行ったのである。
■
「――――」
男は、静かに王国を見据える。
かつてその王国は魔人国と同規模で繁栄し、その権威は隣国にまで響き渡るほどに成長していったらしい。
そう――つい先程までは。
いつしか王城は盛大に瓦解し、しかしながら街には何の被害も及ば差ないという皮肉としか言いようがない配慮。
そして――男は、ぽつりと、掠れるような声音で呟く。
「――王、貴様の首を頂戴する」
――王国クーデター、開始。
……八十万文字になる予感は、きっと幻の類でしょう。 うん、きっとそうですよね。 本当は五十万文字の段階で最終決戦をスタートしよう!っていうプロットなのに、まだ王国にさえ到達していないのはきっと気のせいですよね! 気のせいですよね!?




