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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
三章・「眠りの道化師」
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「我」貫き通せ


 執筆している最中p丸様の「描いてみた」動画をいつのまにか鑑賞してて気が付いたら三十分たっていました

 テヘッ!














 そんなこんやで来る脅威――『老龍』へと備えるために、俺たちは動き出していた。


「へー、なんか昔見たアニメを彷彿とさせる光景だな」


「あっ、アキラってアニメ見てたんだ」


「まあ、こう見えてオタクだからな」


「ふーん」


 俺たちがスタスタと足音を木霊させているのは薄暗い魔王城の廊下の片隅である。

 沙織は仄かな炎を展開し懐中電灯代わりにしながら、暗闇に閉ざされていった廊下を照らしていく。

 

「やれやれ。 本当に君たちは緊張感が皆無だね」


「気負い過ぎるよりかはマシだろうが。 それとも魔王様は俺がガチガチに緊張して舌噛んでる姿が見たいわけ?」


「うん」


「あっ、否定しないんだ」


 どうやら存外魔人族には変わり者が多いらしい。

 そんな、どうでもいい考察をしながら、俺はちらりと、背後を追随していく長身の青年を一瞥する。

 無論、魔王である。


「慣れてください魔王様。 これが奴のマイペースです」


「……ここまでくると逆に尊敬するね」


「そういう生態系なんだよ」


「……レギ、本人が容認したといえ、魔王様にタメ口はちょっと止めないか? もうちょっとこう、品性行為を……」


「そういうモノだと慣れてくれ」


「別にいいよメイル君。 チンパンジーに話せって言っても不毛なだけでしょ?」


「確かに、なのだ」


「成程、お前らが日頃俺のことをどう思っているのかよーく分かったよ」


 魔人族陣営はそれなりに活気があるようである。


 無意味に緊張ばかりするよりは幾分かはマシか。


 今回、バカップル以外の幹部連中には戦争の準備を任せ、俺たちは人族と同盟を結ぼうと、王国へと向おうとしているのだ。

 ちなみに、もはやレギュラーメンバーとなってしまったガバルドとライムちゃんも健在なのである。


「今中年の方が優先された気がしたわ」


「気のせいだと思うよ」


 ナチュラルに思考を覗かないで欲しい。


 ライムちゃんは誰かさんの狼藉によって記憶を失っており、故に忠誠心とかも全くないので平叙運転である。

 まあかつての『賢者』であろうおとも忠誠心なんて欠片も無いと思うが。

 しかしながら、おっさんは少々様子が異なるようである。


「はあ……」


「おいおい、らしくない溜息なんて吐いてどうした? 下痢か? 便秘か? うんこか?」


「なんでお前はそうもうんちを関連づけたくなるんだよ……」


「どうしてって、だってお前の印象う――」


「それ以上言わせるかァ‼」


 顔面があばばばばば。


 血反吐を撒き散らす俺をもう既に慣れた様子の沙織が適当に展開した魔法によって生じた陽光が包み込む。

 ああ……俺の数少ない幸福。

















 実をいうと、ガバルドっていう男はかつての傍若無人な振る舞いからは想像もできないが、割と愛国心が強いのである。


「まあ、憂慮するのも無理はないと思うぞ」


「――――」


 何気に数十年務めてきた王国への忠誠心は募っている。

 確かに王国の政治はライムちゃんの代人者のせいで俺の性根のように腐り切っているが、だがそれでも故郷。

 それを愛さないのは中々に難易度が高いだろう。


 故に、剣を捧げた王へ己が信ずる正義のために牙を剥くのはさぞかし苦痛であり、憂慮すべきことなのだろう。

 だが――、


「まあガバルド、どうせどう葛藤しようとも選んだ選択肢が正しいなんて限らないから、自分が正いと思ったことを貫き続けろよ」


「――っ」


「あっ、一応言っとくけど裏切ったら殺すから♡」


「……本当に、不器用なヤツだな」


「不当な評価だっ」


 ガバルドが複雑そうに俺を一瞥し、そして「あー、面倒草っ」と呟いて大きな欠伸を噛み殺すこともなく晒す。

 完全ではないとはいえ吹っ切れたかな。

 こいつの存在はそれなりに重要なので行幸である。


「へえ……意外といいこと言うじゃんアキラ」


 揶揄するかのように囁く沙織。


「おいおい、もしかして年中俺が素っ頓狂な言動ばかりなのかと思ったか?」


「うん」


「……それはそれで酷くない?」


「まあ、アキラは昔からそういう人だったからもう慣れたんだけどね」


「――――」


 朗らかにはにかむ沙織の姿はどこまでも眩しくて。


 だから――、


「――ムラムラするわー」


「ん? 何か言った?」


「いいや、必然の事実を再認識しただけ?」


「――お兄ちゃん?」


「安心して! ライムちゃんにもムラムラしてるから!」


「安心できないでしょ」


「そ、それは嬉しいわ。 でもそういうことは外では……」


 照れているのか微かに折れ方目を背けるライムちゃん。

 俺はその姿に愕然としていた。


(う、嘘だろ……?)


 それが最善であったとはいえ、俺は『天衣無縫』や謎に芽生えた魔術(?)を併用してライムちゃんをヤンデレかさせた。

 だからこそ、このライムちゃんの純情な反応により一層驚嘆してしまうのだ。


 有り得ない!

 あのライムちゃんが!

 まるでごく普通の女の子のように照れるその姿はどこからどう見ても淑女そのものであり、必然彼女を蝕む闇など感じられない。


「オマエハダレダ?」


「お兄ちゃんのライムわよ」


「アキラ……ちょっとお話しよ?」


「あのー、俺としては手を握られるのは役得以外の何物でもないのですが、なんだかやたらと握力が強いような……ちょ!? 砕けちゃう! 手首完膚無きままに粉々になっちゃうよ!」


「誰が筋骨隆々なのかな?」


「言ってない! そんなこと言ってない!」


 どうして痛覚という機能をオフにしたのに明らかに魂に干渉したとしか思えないような激痛が溢れ出すのだろう。

 俺は一旦ライムちゃんに目配せして離れてもらい、沙織に釈明しようと奮闘する。


「い、言い訳をさせて欲しいんだ」


「……言い訳? 浮気夫が毎度毎度するヤツ?」


「浮気夫って……」


 浮気という概念は交際を前提としているので飛び跳ねたくなるほど嬉しいが、同時に悪寒が全身を駆け抜ける。

 

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