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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
三章・「眠りの道化師」
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裏切者の処遇


 ジュースはどうなったの!? 

 そう思っていらっしゃいませんか? うん、忘れました(土下座)

 後からつけた設定なのですが、ジューズさんは現在療養中です。 意外と重症だったのだよ。












「――――」


 そう啖呵を切ったメイルを、凪いだ眼差しで魔王は見据える。


 巨大な組織――国を敵に回すには、あまりに滑稽な理由だろう。

 だけど、きっと小さな女の子にとってそれは命なんかよりも大切なモノだろうと、俺でも否応なしに理解できた。

 とりあえず――、


「――ガバルド、火薬は?」


「安心しろ。 この国を吹き飛ばせるだけの上物を用意した」


「流石人族が誇る『英雄』。 用意周到だな」


「なんでお前らはさも当然のように本人の前で殺人プランを笑顔で宣言できるんだよ、逆に天才かっ」


 リア充には死を。

 俺たちロクでもない奴にしかモテない残念な独人連中にとって必然的にそれは共通認識なのである。

 まあ、今の俺はちょっとした例外だがな。


「――アキラ、メッ」


「……い、いやですねえ、これには海より深い事情がありましてね……」


「メッ」


「で、でも……」


「――口答え、するの?」


「俺の名はスズシロ・アキラ、ガンジースタイルを世界へ叫び続ける平和主義者だよ!」


「……尻に敷かれているな」


 呆れるかのような眼差しでガバルドがこちらを眺めている。

 くっ……!かつてない屈辱である。

 だがなあ、それはお互い様だろうと俺はニヤッと不敵な笑みを浮かべながら今まで伏せられていた事実を暴露する。


「おいおい……『おねだり』されて傀儡の如く東奔西走して回るのが日常なガバルドきゅんもよく言うよ!」


「ッッ!? 何故それを!?」


「どうでもいいけど中年の赤面なんて誰得なんだよ」


「レギと同感なのだ」


 恥ずかしい事実が赤裸々になり傍目からみても分かるほど頬を赤く染めるガバルドをレギウルスは吐き気を堪えるかのような顔で目を背ける。

 これに関してはレギウルスに同歩である。


「アッハッハ安心しな、もう既に騎士団の中では既知の情報だから!」


「なにぃ!? いつの間に!? というか今まで我慢していたのだが、どうしてお前はそんなことを知ってるんだよ!?」


「ヒ♡ミ♡ツ」


「うぼっ」


「ちょ、レギ!? 寝るな、死ぬぞなのだ!」


「ちょっとアキラ! 今貴方は人間として最低の行為をしたよ! 土下座して謝って!」


「えっ……? ウインクしただけでどうしてこんな反応に……?」


 解せぬ。

















「――で、結局どうするのさ、魔王サンよ」


「――。 どうする、とは?」


 笑いを堪えながらコントさながらの光景を眺めていた傍観者気取りの魔王殿へそう投げやりに問いかける。

 流石に脱線しすぎた。

 そろそろ本題に入らねば。


 そんな危機感に急かされ、俺は率直に問う。


「レギウルスやメイル、ついでにジューズの処遇だよ処遇」


「おや? 君の御執心の仮面はどうして除外されたのかな?」


「決まってるだろ? ――仮にどのような形であれこの子を裁くのならば、この国の存在そのものが消し飛ぶと思えよ」


「――――」


「言っとくが、脅しじゃないからな? ストックした魔力フル発揮すれば疲れるけど割と容易だぞい?」


「……それがブラックジョークであることを切に願うよ」


「さてね」


 目を細めながら心なしか冷や汗を流す魔王殿を睥睨する。


 しかし、突如として頭髪を中心に衝撃がががっ。


「……えっと、俺何か悪い事言いました?」


「全部だよ全部。 私はやったことは反逆という禁忌の所業。 皆から裏切ったのは私自身の意思だよ。 ――だから、それで裁かれても文句はない」


「――――」


 あー、あー、あーーー。

 

 やるせない思いが胸を飽和し、俺は頭を覆いながら「どうぞお好きに。 いやらしいことしたら殺すから」と呟く。


「こんなお兄ちゃんの表情、中々に珍しいわ」


「まあ、気色悪いことは変わりはないが、それなりに稀な現象であることに関しては賛同せざるを得ないな」


「あー、あー、聞こえなーい」


 これほど複雑奇怪な感情に苛まれるのは初めてなのかもしれない。

 何故か沙織がニコニコと微笑ましいモノでも眺めるかのような眼差しをしているその真意は計り知れない。

 ホント、この子は予想外だなとつくづく思う。


 ふと魔王を一瞥してみると、常に冷静沈着な彼らしくもなく目を見開き間抜けな顔を晒して驚嘆をあらわにしていた。


「驚いた……カメン君については色々と素性が知れないからそれなりに警戒していたんだけど、こんな子だったとは……」


「意外だった?」


「驚愕半分、納得半分っていう塩梅だね」


「アハハ……」


 どうやら沙織は潜入任務(ほとんど自主的らしい)を行っている最中も天然で素っ頓狂な行動を起こしていたらしい。

 というか俺からしたらエリートな沙織ってこれぽっちも想像できない。

 あれ……?

 それはそれで……


「アキラ、どうして私をそんな気持ちの悪い顔で眺めるの?」


「ッッ!? そんなに気持ち悪かった」


「あっ、いえやね、ついつい心の奥底から本音が……」


「無意識的に「キッショ」って言われちゃうほど俺って気色悪かったのか……死のっ」


「だ、大丈夫だから! アキラは別に気持ち悪くないし、時々私をジロジロ眺める癖も我慢できるから!」


「がはっ」


 無邪気な罵倒に胃液と共に鮮血が吐き出される。


 それが意図的な悪罵ならばまだ被害は削減できただろう。

 だがこの少女はその手の腹芸をなによりも苦手とする天使の如き美少女……なのだがそれ故に引きおこる弊害も存在する。

 俺の場合は完全に自業自得なのだが。


「……あー、痴話喧嘩は済んだかい、スズシロ君」


「本音を言うと一生沙織と触れあっていたいんだが――安心して、ライムちゃんも一緒だから! だから頭蓋にナイフを突き刺さないでくれないかな?」


「お兄ちゃんがそう言うなら」


「……なあ、スズシロ、お前って本当にニンゲンなのだ? どうして脳を切り刻まれながら平然としている……?」


「いやメイル、世の中にはこんな諺がある。 ――馬鹿は風を引かない」


「おい、それはどういう意味だよ」


 明らかに明確な悪意が介入している気がするのは俺の気のせいではないはず。


 とりあえずバカップルを鉄拳を以て制裁しつつ、俺はちらりと鋭い眼差しで魔王を射抜く。


「――それで、考えはまとまったか?」


「ああ、これ以上ないくらいにね」


――そして、反逆者へ判決が言い渡される。



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