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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
三章・「眠りの道化師」
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疲労困憊


 ルマのかいりきベアさんバージョンのMV、ツインテールがねじれすぎて存在に一年越しにようやく気が付きました。

 そうしてみるとニーソも納得ですね。










 ■


 そして、世界が『蒼』に染まっていく。


 波打つ世界は、容易くそこらの有象無象を押し流し、たちの悪い冗談のように吹き飛ばしていった。

 

「――――」


――そうして、王城は制圧されていったのだった


 


 ■




「――――」


 豪勢な椅子で王なんていう身分にそぐわないくらいだらけている魔王を一瞥しながら「お疲れ様」と労わる。

 魔王は俺を恨めし気に睥睨しながら、投げやりに確認する。


「――それで、蘇えらせることはできたのかな?」


「無論さ。 まあ、厳密には蘇っていう表現はちょっとそぐわないと思うんだけど」


「そうか」


 俺の訂正を気に留めず、魔王は深々と嘆息。


 ふむ、もう半ば確信しているが俺もちょっとばかり確認するか。

 心配性は参謀にとって欠点などではなく長所だとそう評したのは一体誰であったか。

 俺は深々と吐息する魔王へおざなりに問う。


「一応聞くけど、魔王俺の名前覚えてる?」


「……そういえば、名前聞いていなかったね。 本当に今更だね」


「うーん、とりあえず社会人として再教育してこい」


 うん、杞憂だったようだ。


 というか名前ぐらい聞けよ。

 それを聞く暇さえもない程に多忙だったからか、それともただ単におぞましい物体の名称を記憶するなんぞ無意味を割り切ったか。

 前者であることを切に願う。


「不安だったらそれこそその目で確認すればいいじゃんか」


「安心するといい。 私は君を信じて大火が起きたという事実が君の言葉通りなのか諜報部隊に百人体制で監視させたから」


「はて、信頼とは」


 まあ、それならば杞憂だろう。


 確かに俺自身が直々に確認したわけではないが、しかしながら確俺の『天衣無縫』の効力はお墨付き。

 魔王と重なっていたにしろ、その効力を発揮できなかったわけではないのだろう。

 

「ライムちゃん、様子は?」


「魔人族たちの一切合切が異常に土気に溢れているわよ。 それこそ今にも暴動でも起きそうな有様だわ」


「……流石洗脳魔術。 その効力は筋金入りだな」


「ちょっと待って!? 洗脳使ったの!?」


「テヘッ♡」


「ガバルド君、死体は山が良いだろうか」


「いや……どうせなら飢えた魚たちの餌になってせいぜい小さな善行を積むのはあいつにとって本望だろう。 始末は海にしよう」


「君たちは何を前提に話しているのかな?」


 それじゃあまるで死体の処理場所を思案しているようじゃないか。

 アッハッハ、正義の象徴である『英雄』たちがそんな非道極まりないおそろしいことなんてしないよね。

 しない……よね。


「スズシロ、今からでも入れる保険があるそうだが是非ともお勧めするぞ。 ――これからも¥俺たちの役に立ってくれ」


「スズシロ君、疲れているみたいだからコーヒーでも飲んだら? 安心して、香りを嗅いだだけで即死する劇毒なんて淹れてないから」


「冗談だよね!? 冗談だよな!?」


 慈母を彷彿とさせる朗らかな笑顔で、俺でさえ一瞥しただけで魂が警鐘を鳴らすようなコーヒーで無理矢理喉を潤そうとする魔王。

 ガバルドは何やら書類に朱印を押している。


 きっとその書面は直視してはいけないモノなのだろうと何故かなんの根拠もなく信じられてしまう。

 そう、きっとこれはブラックジョーク。

 思いやりに溢れた聖人たちがそんなこと、するはずがないじゃないか!


 だから頼む。


「保険金……借金……返済」


「はーい、スズシロ君あーんしようね」


「――お兄ちゃん、また浮気した」


 神よ、この悪夢を醒ましておくれ。
















 何とか乱心する刺客(仲間だったナニカ)を紙一重のところで撃退し、荒ぶるライムちゃんを宥める。

 ようやく得られた安然を甘んじて享受しつつ、俺は会議場に揃った面々を一瞥する。


「――何見下ろしてんだよ、アキラ」


「ぺっ」


「ちょっ!? 唾吐くなよ!? 穢れるだろ‼」


 俺はマナーもモラルも一切合切投げ捨てて異常に互いの距離感が近いバカップルこと『傲慢の英雄』レギウルスとメイルへ唾を吐きかける。

 というかそれが大切な仲間に対しての態度なのだろうか。

 もうちょっと誠意を見せて欲しい。


「――アキラ、品性を疑われる行為はメっ」


「そうだわ。 お兄ちゃんを侮辱したんだから万死すら霞む罰を与えないと」


「君たちは本当に極端だな」


 何故か俺の膝の上という定位置に着席するライムちゃんを恨めし気に睥睨する沙織がそう苦言をこぼす。

 妹の戯言は無視だ。

 この妹が発する言葉を一々聞いていると気が狂う。


 スルーこそが最善策なのである。


「――――」


 現在会議場に集まっているのは、レギウルスやメイルといった幹部連中、そして俺や沙織含める一応人族陣営(多分)。

 更には心なしか厳粛な雰囲気を醸し出す魔王陛下というラインナップである。


「……騒がしいね」


「胃痛はいつかし慣れるのと同じ要領だぞ」


「できることなら慣れたくないね、この光景」


 中年たちが何かを語り合っているが断固として無視する。

 このままでは毎度の如く不毛なコントが再来してしまうのではないかという危機意識に陥り、何とかそれを打破するために手を打つ。

 比喩的にも、物理的にも。


「はーい皆様落ち着いて。 君達もうちょっと緊張感をもとうか?」


「ほう。 真の恐怖とは如何なるものかを身を以て知りたいか、スズシロ」


「君たちの選択肢に俺を殴るというモノ以外存在しないのかな?」


「アハハ、確かにそんなの有り得ないよな。 ――だって、殴る程度じゃああんまりにも優し過ぎるから」


 何故、ガバルドは剣を研ぎながらそんなことを述べているのかを問うのはおそらく無粋なのだろう。


「話が進まないな。 ――それで魔王、確認できたか?」


「もちろんだよ。 確かに先日誰かさんが起こした放火騒ぎは初めから無かったことに改変されてたよ」


「それは行幸」


 もちろん俺も放送室から出た後この目で確認したのだが、屁理屈をこねられるのでないかとちょっと懸念していたのも事実。 

 だがどうやらそれは杞憂だったようである。

 そして魔王の焦点は国の回帰から、別のモノにあてられていた。


「――さて、時にだが」


「――――」


「私には少々疑問でね。 ――どうして、『傲慢の英雄』が私たちを裏切ったのかが」


「――――」

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