結べばいいんでしょ!?
実を言うとルインさんについての設定って色々不明慮な点が多いのですが、最近になってようやく骨組みが完成しました。
マジでルインさん面倒臭いのだよ……
――泣き喚いくような、そんな光景だ。
「――――」
これで、何もかもがお終い。
名もなき世界に運命なんて洒落たモノを定める神様なんてどこにも存在せずに、ただただ不条理がひしめく。
皆、消えちゃった。
「――――」
きっと、これはどうしようもないくらいに愚かで下らない、吐き捨てるかのように粗雑なエンドロールで。
まだ、何も笑えていないのに、これでお終い。
許せない、許したくない。
幾らそう叫んだところで、神様は微笑んでくれもしなかった。
そして――、
「――■■■■、今度は貴方の番」
「――ぁ」
その機械を彷彿とさせる冷徹な眼差しが■■■■を射抜く。
体がすくんで動けない。
これだけ憎く殺したりない少女が眼前に存在するのにも関わらず、声一つ響かせることのできない自分がもどかしい。
でも、ただ一つ、たった一言。
それだけ言えればもうそれで満足だから。
だから、だから――、
「――ごめんね、ありがと」
「――――」
そして、■■■■のか弱い魂は呑み込まれ――。
「……何だったんだ、アレ」
「さあな。 なんだ、多重人格なのか?」
「あっ。 この世界にもそんな原理があるんだね」
突如として君臨し、そして嵐のように去っていったその少年の背を追いかけることもできずに、俺たちは先刻の現象の考察へと勤しんでいた。
そもそも色々とベールに包まれている情報が多すぎる。
おそらく俺に足りないのは前提条件となる最低限のモノなのだろう。
それすらも明瞭としないこの様が酷くもどかしい。
「天使と言う説は?」
「まあ確かに神々しかったのは認めるがな……なんというか、天使っていうよりかはもっとこう、悲劇に溺れていそうな……」
「語彙力ねぇな」
「悪かったな口達者じゃなくて」
人を嘲るのも大概にしてもらいたい。
この状況下で不用意に考察なんぞ進めたら確実に致命的な勘違いが生じてしまいそうなので、強引ながらも話題を転換する。
「さて、そんなベールに包まれたあの謎の少年はともかく……最優先の議題は、魔王、あんたの処遇だ」
「――。 処遇とは、穏便じゃないね」
「おっと、それに関しては詫びるぞ。 色々と『厄龍』のインパクトが強すぎて思いつかなかったと思うが、お前を取り囲む現状はあんまり変化してないぞ」
「……気が滅入ることを言わないでくれないかい?」
「だが断る!」
「クズだ! 人間の屑クズだ!」
断固として抗議されるが、そんなモノ知ったこっちゃない。
俺としてはさっさと目的を速やかに済ませて王国に帰りたいというのが本音なので、早急に『誓約』を――頭蓋の陥没を確認。
「そろそろ人の頭蓋骨を叩き割ろうとする真似は止めた方が賢明だと思うぞ――『傲慢の英雄』さんよぉ」
「なんでアキラは頭からすんごい流血してるのにそんなに平然としてるの……?」
慣れである。
それはそうと、俺は複雑そうな眼差しでこちらを見据える『傲慢の英雄』ことレギウルスとメイルを一瞥する。
「よおバカップル、もう息災か? さっさと人生の墓場に行っちまえよ、俺がぶっ壊してやるから!」
「お前悪質にも程があるだろ」
「そうなのだそうなのだ」
そんな呆れるように俺を見ないで頂きたい。
一度は生死の境を彷徨ったバカップルコンビであったが、しかしながら俺の指示に従い駆け付けた沙織によって一命はとりとめている。
だがしかし、必然不満が解消されたとかそういうことはなく。
「……言い訳を、聞こうか」
「俺は悪くない。 悪いのは勝手に暗躍する『厄龍』なんだい」
「責任転嫁禁止! というかそういう諸々の事案を考慮した上で策略を企てる者こそ策謀だろうが!」
「謝罪を要求するのだ!」
「知らんぷりーな」
「「――――」」
あれ、どうして俺は倒れ込んで……
「どうしたアキラ!? 何かあったのか!?」
「大丈夫なのだ!?」
「あの……どうして俺の血液が二人の掌に付着しているのですか……?」
「「――――」」
ヤバい、なんか思い出したらいけないやつだこれ。
何故かつい先程自分自身の血でまみれた和服の代用品に着替えたというのに、どうして逆に悪化してしまっているのかを問うのは野暮なのだろうか。
「……記憶消すまでまた殴る?」「人目があるのでそれは後程なのだ」なんていう会話が聞こえる気がするが、きっと幻聴だろう。
「まあ、生きててよかったわ。 沙織が帰ってきたから万が一のことはないと思ったけど、それでもほっとしたぞ」
「うぉぇ」
「ちょ、吐く!? 普通こうも人が素直に感謝の意を示しておいて嘔吐しますか普通!?」
「別にレギは普通なのだ。 ――ただただお前がおぞましい」
「なんだろう、このやるせない気持ちは」
こうも人が時間を割いて窮地から救い出したというのにも関わらず、どうして俺は嫌悪されているのだろう。
人徳か?
それとも性格?
顔?
「全部よ、アキラ」
「……ツッコまないからな。 どうしてお前ら人の思考をなんでもないように解読できるんだよとかそんな野暮なツッコミはしないからな」
どうやらこの世界には存外超人と呼称すうべき人間が多いらしい。
「……どうして君たちはそうもナチュラルに殺し合いを始めるのかな?」
「魔王、気にするな。 いずれ慣れる」
「……あまり、慣れたくない光景だね」
しみじみと呟く魔王のその姿がやけに印象的だった。
「さて、大いに狂ってきた話の流れをもとに戻すぞ」
「……本当に『誓約』は必要なのかい?」
「ライムちゃーん、今すぐこの国に設置した爆薬一斉に引火して♡」
「任されたわっ」
「ちょ!? 分かった、分かりました! 結べばいいんでしょ!? 結べば!」
強情な男である。
俺はライムちゃんに目配せをし合図を表明すると、ふいにそれまでコミカルだった現場が水を打ったかのように静まりかえる。
その最もたる原因は――圧倒的な王者としての風格、そしてその威信を言葉すら発さずに示していく『魔王』だ。
「――今ここに、果てぬ約定を」
「――――」
「我、アンセル・レグルスはスズシロ・アキラ一味及び人族へこれ以上の手出しはしないと誓い、仮にこの誓約が反故されるのならば、このなけなしの命を以て償おう」
「――――」
その姿はどこまでも堂々としており、先刻まで垣間見せた迷いなんて遠く彼方へ投げ捨てられているようだった。
これが、『王』か。
成程――確かに、これは認めざるを得ないな。
「――今一度、怨敵人族と共に跋扈する悪意の象徴『老龍』を討ち果たすことを、この魂を以て誓う!」
――そうして、人族と魔族が手を取り合える時代へまた一歩前進していったのであった。
どうでもいいけど血便でたし。
後で病院にでも行きますか。
О157なんかじゃないといいなーなんて思っていたり




