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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
三章・「眠りの道化師」
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『絶斧』


 感想欲しいですっ(切実)















――それは、踊るかのような剣劇であった。


 美女――メリッサは軽快なステップを刻み、しなやかな筋肉を遺憾なく発揮し、鮮やかな斬撃を放つ。

 しかしながらその優雅さに反して斬撃自体はこの上ない程殺意が上乗せされており、直撃すれば即死は免れない。


(流石に回避するしかないのだ)


 バックステップ、直後鈍痛が。


「――――」


 苦痛が鳴り響く足元を一瞥すると、そこには深々と鋭利な短刀が突き刺さっており、数滴の鮮血が溢れ出す。

 メイルが激痛を覚悟し、突き刺さったナイフを引き抜く。

 苦痛に呻きながら、その切っ先を確認。


「毒は……ないか」


 『龍化』すると嗅覚まで鋭くなるのだが、しかしながらレギウルスが好んで扱うよう劇毒特有の刺激臭は漂ってこない。

 龍の血筋が容易に傷跡を防ぎ、メリッサの反撃は無為に終わる。


「劇毒でも使ったらどうなのだ?」


「あらあら。 敵さんなのに私の事を心配してくれているのですかあ?」


「ハッ。 戯言を。 単純に疑問に思っただけなのだ」


「それを私が答えるとでも、お嬢さん」


「――――」


 直後、ノーモーションで再度投擲。


 短刀の刺突が効果を示さないと理解してもなおこの蛮行。

 否――もしこれが合理性に満ち満ちた行為ならば。

 そう考えなおし、メイルは、素早く龍翼を駆使し虚空を泳ぐかのような鮮やかさを以て泳ぎ渡った。


「あら。 お上手ですね」


「――――」


 軽快に跳躍、そして美女は颯爽と空中という大舞台へ文字通り躍り出る。


 刻一刻と美女がメイルへ迫りくるなか、彼女は特に慌てるまでもなくさりげなく投擲された短刀を迎撃。

 そしてメイルがメリッサの間合いに足を踏み入れた直後――爆炎が吹き荒れる。


「――『龍の吐息』」


「ブレス……厄介ですね」


 本来ならば龍としての威信を示しただけで大抵の相手は戦意を消失させるのが通常であるが、しかしながらこの踊り子は一味違うようである。

 どこかレギウルスと酷似した凄惨な笑みを浮かべ、そして微かに奇怪な形状の片手剣に魔力を込める。


 するといつのまにやら独特の形状の片手剣が僅かに深紅に煌めき――そして、その形状を大きく変動させる。


「――『絶斧』。 大きいですよお」


「下ネタかよっ」



 本当に微小な足場を巧みな足さばきで跳躍し、そしてそのまま猛然と大斧片手にメイルへと接近していく。

 これはあくまでもメイルの直感なのだが、今この踊り子の得物はレギウルスの『紅血刀』に通じるモノがある。


 そしてその憂慮は懸念では終わらなかった。


「――ぶった切る」


「――――」


 刹那、神ですら葬るやもしれぬ爆炎が華奢な美女の手によって余りにも呆気なく一刀両断されていた。

















――有り得ない。


 『龍の吐息』はメイルの虎の子。

 その威力は多大なリスクに比例してレギウルスでさえ深手を負うモノであり、決して容易に迎撃できる品物ではない。

 しかしながらこの女を、その固定概念をこうもあっさりと打ち破ったのだ。


 だがしかし、それでもメイルの平常が崩れることはない。


「ちっ」


「――――」


 爆風に紛れ、メリッサの背後へ潜り込む。


 そしてメイルは努めて冷静に振る舞い、鉄筋ですら容易に切り裂いてしまう鋭利な大爪を容赦なく振るう。

 本来ならば視認さえも不可能な絶刃。

 しかし、メリッサは天才的な直感でそれをいとも容易く大斧を盾にガードする。


「お前、本当に一体何者なのだ……!」


「貴方風に言うのならば、ただの売女ですよ」


「――――」


 そう嫣然と微笑むメリッサは放たれたメイルの大爪を足場にして凄まじいバランス感覚でそれを足場にする。

 跳躍。

 そして一瞬でメイルの首筋を捉える。


「――――」


「お終いですね」


 如何にメイルとはいえ、首筋に、しかもこの女の超越した腕力ならば容易に宙をメイルの頭部が飛び舞うだろう。

 死力を尽くしそれを回避しようとするが、しかしながらメリッサの完璧なタイミングに迎撃が間に合わない。


 メイルにできることは首筋に魔力を集中させることしかできなくて。


「あがっ」


「――。 しぶといですねえ」


 鮮血が宙を舞い、メイルの首筋を深紅に染め上げる。


 しかしながらあと一歩で頸動脈を引き千切ることは叶わなかったらしく、咄嗟の反撃を回避するべくメリッサは後退。

 メイルは激痛とも快楽ともとれる得体の知れない感覚に身を委ねながらも、朦朧とする意識の中しっかりと立つ。


(思考は……少し霞んでいるのだ)


 首筋を抑えながらそうメイルは自己分析をする。


 先刻の一撃によって生じてしまった耐え難い鈍痛に正常な思考が不可能となり、焦点も心なしか狂っている気がする。

 瞼を閉じれば永久に眠りついてしまいそうな、この眠気に従うのもまた一興。

 しかしながら、それはメイルの矜持が決して許容しない。


「――――」


「……流石、『英雄』の花嫁ですかねえ」


「……お前のことは心底いけ好かないのだが、その評価だけは純粋に嬉しいのだ」


 全体的に嫌悪感を誘うメリッサであったが、その正当な意見には珍しく歓喜なんていう感情を感じないわけでもない。

 そんなメイルをまるで母親のように微笑むメリッサ。


「それはそれは、純愛なことで」


 それは皮肉のようにも、揶揄するようにも聞こえた。


 だからこそ、やられっぱなしは性に合わないので中指を立てるかのようにいい笑顔でメイルは啖呵を切る。


「淀んだ愛しか知らないお前から見たら、さぞかし眩しいだろうな」


「あらあら。 そう思っちゃいます?」


「……得体が知れない売女なのだ」


 メイルの精一杯の挑発にもメリッサは耳を貸す様子すら見せずに、逆に妖艶に目を細めてしまう始末である。

 正直メイルのような小娘にはこの握り切った美女の本心を推し量ることができない。


「ありがと。 そして、サヨナラ」


「それはこっちのセリフなのだ」

 

 ――と、啖呵を切ったが。


 しかしながらメイルの思惑は別にある。

 メイルは懐から万が一の時にとレギウルスから渡されたナイフを躊躇することなくメリッサへと投擲し、間髪入れずにブレスを解き放つ。


「それは効かないですよ? ――『絶斧』」


「――――」


 メリッサは巧みな斧捌きで完膚無きままに叩き割り、そしてその術者であるメイルもついでとばかり――、


「なっ――」


――爆炎が晴れると、つい先程までメイルが佇んでいた床には生物という概念が当てはまる存在が誰一人として居座っていなかった。




 真面目な話私って作者ですから読書がどんな風に感じてるのか分からないんですよね。

 やっぱり読書の意見は大切だなあーと(チラッ)、思っちゃうわけなんですよね(チラッ)

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