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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
三章・「眠りの道化師」
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鬼? そんな矮小な存在と比べるなんて、失礼な!


 今回は下ネタ多めです


 














「はいあーん」


「あーん」


「…………」


 俺は自らが暇つぶしのために勝手に製造したゼリーモドキをスプーンで掬い、それをライムちゃんの口へ入れる。

 ライムちゃんは上品に口をあけ、ゼリーモドキを咀嚼する。


 どこか背徳的な咀嚼音が響く部屋でガバルドが心底渋い顔で何かを堪えようとし、結局堪え切れずにキレる。


「スズシロ……頼むから独人の前で桃色空間を演出しないでくれ」


「既婚者が何言ってやがるんだよ。 死ぬか? ア”ァ?」


「どうしてお前はそこまで殺意旺盛なんだ……」


 リア充には自分の心臓が拍動していることを心底後悔してしまうような、そんな苦痛を味わうべきなんだよね!

 道徳の授業で誰でも習うだろう。


 しかしこの男はそんなことも知らないとは……

 どうやら残念な程に教養がない『英雄』様であった。


「というかアレは別に結婚したにカウントされていない……」


「でも求愛されたろ」


「…………」


「熱烈に、愛の言葉を囁かれたろ。 『ガバルドくん、やっぱり私はあなたのことが――」


「止めろ! プライバシーという概念を知らないのか!」


「親の腹に捨ててきました」


「今すぐ拾ってこい! というかどうして一語一句アレを朗読できるんだよ!?」


 その紆余曲折を説明するにはかなり長くなるので無視する。

 俺は制作したゼリーモドキをライムちゃんの口に運ぶ。

 その度に鳴り響く淫靡な音に関しの心境は断固として黙秘する。


「ったくよ、どうしてお前みたいな中年がモテて俺は未だ童貞なんだよ」


「お兄ちゃんとなら……いいよ?」


「スズシロ、知ってるか? この国にもロリコンを取り締まる法は幾らでも存在するんだぞ、ロリコン」


「安心しろ、俺が好みなのは高校生くら――もちろん、幼女が好みさ!」


「お兄ちゃん!」


「――――」


 ゼハァゼハァと喘息でも起こしたかのように洗い吐息を吐き出しながらカッターナイフを首元に添えるライムちゃんを牽制する。

 もはやライムちゃんの癇癪への対応は手慣れたモノとなっていた。


 この程度のイレギュラーで俺を打ちのめせると思うな!

 だがこれは俺の社会的な地位を考慮しない場合である。


「お前は本当に凄い漢だよ、スズシロ……!」


「とかいって後ずさるの止めてくれません?」


 余計に傷心してしまうのではないか。


 もはやこの段階に入ると変態紳士という不本意な称号さえも受け入れてしまっている自分がいるのだが。

 ロリコンの異名がなんだ!


 命に代えられるモノなど存在しないのだよ諸君……!

 しかしながらそろそろ自分が似非ロリコンなのか、それとも正真正銘の変態紳士なのか不明瞭なのが少々気になる。

















 さて、閑話休題。


「それで、幹部ピーポーは?」


「今のところ成果なしらしいぞ」


「チッ。 もうちょっと使えると思ったんだけどな……。 気分は立ち読みしてたコンビニがいつのまにやら閉店してた時みたい」


「騎士として立ち読みはどうかと思うのだが……」


「だって俺騎士じゃないし」


 そもそも俺の役割は傭兵に近く、別に誓いとかそういう面倒な過程は経ていないので正式には騎士ではない。

 俺としてはどっちでもいいというのが本音である。


「というかこの世界にも立ち読みっていう概念あったんだ」


「もちろんだ。 『来訪者』たちが伝えた文化の副産物だな。 ちなみに、マンガなる文化を伝達したのも『来訪者』だぞ」


「へえ、漫画まで広まってたんだ」


 今だ起因は不明であるが、何らかの要因が相まってシステムにバグが生じてしまい誤って世界を渡ってしまう『ゲート』現象。

 かくいう俺もそれが原因となってこの世界に来たのだが。


 まあつまり、俺みたいな『来訪者』と呼べれるような奴らも一定数この世界に在籍しているわけで。

 俺が先日悪用した放送器も『来訪者』が浸透させた日本文化の一つである。


「ちなみに、どんな奴が流行ってるの」


「ふむ……。 一番最近のだと――呪術回戦」


「パクリじゃねえか!」


 漢字がちょっと違うだけじゃん!

 というかよくアレをこの王国に広めようとしたなとパクった『来訪者』を畏敬する。

 ま、まあ流石にこんなトチ狂った『来訪者』は小数人。


 俺は一縷の望みをかけ、意を決してガバルドに質問する。


「違うのは?」


「ふむ……俺も本職が忙しいからあんまり見たことはないが……確かに、撲滅の刃とかいう鬼を倒すマンガが流行ってるらしい」


「アウト――!」


 駄目だろ、それは絶対ダメだろ!

 『来訪者』には随分と破天荒な人物が多いようだなと再認識した瞬間であった。

 これ以上聞くと悲しくなるので強引に話題を切り替える。


「『来訪者』たちの頭が痛くなるような痴態はさておき。 疑問なんだけど、どうしてお前帝王ちゃんのことどう思ってるの?」


「ぶほっ」


 唐突な質問に、勢いよく喉を潤していたジュース(カル●スモドキ)を、盛大に噴き出すガバルド。

 白濁色の液体が、盛大にぶちまかれる。


「うわあ……」


「言うな」


 詳しく描写をすると確実に嘔吐してしまいので惨状の詳細は断固として黙秘する。

 

 ライムちゃんの清掃魔術(なんでも有りかよ)で、綺麗さっぱりとなったガバルドは、言葉を濁す。


「……本当に言わないといけないのか?」


「嫌ならいいさ。 白濁の液体にまみれたエロス極まる『英雄』様の絵画が王国に出回るだけさ。 良かったね!」


「お前は鬼か!?」


 失礼な、そんな矮小な生物と一緒にしないで欲しい。

 ガバルドはしばらく視線を彷徨わせ、そしてついに観念したのか心なしか頬を染めながらもハッキリと答える。


「まあ、好きか嫌いかって問われれば――まあ、好みかな」


「ライムちゃん、録音はしてあるね?」


「もちろんっ」


「お前は悪魔か!?」


 やった、『英雄』の初々しい告白映像ゲットだぜ!


「安心しろ。 俺はこの音声を乱用なんてしない。 ただただ不都合なことがあったらこれで黙らせるだけだ」


「人はそれを脅迫と言う」


 平和的交渉と言いなおして欲しい。


「よし、『英雄』様の脅迫材料も手に入れたところだし、今日はもう寝るか」


「ん。 添い寝してあげるわ」


「ロリコン……」


 恨めし気に歯軋りする『英雄』殿の声は徹底無視させてもうらうぞ!



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