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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
三章・「眠りの道化師」
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天空の大空


 うん、システムの概要ががらりと変動しました!


 実を言うとこれまでシステムがどうして作られ、そして維持されているのか明確な理由を見いだせていなかったんですよね。 ですが七章序盤に生まれた『円卓』のおかげで何とか納得のできる理由を見つけることができました!


 ついでに『神』についての定義や、また八章のボスについて色々設定が増量したりもしましたが、それはまた別の話です。













「ふわあー。 眠っ」


 本日は休日なのである。


 最近忘れがちなのだが、この俺もれっきりとした学生である。

 親の意向としてそれ相応の成績を叩き出さなくちゃいけないので昨日は散々寝る間も惜しんで勉学に勤しんださ。

 ちなみに、余談であるが俺は左程徹夜を苦にしない類の人間である。


 それにここ一月この生活に慣れてきたので苦痛には感じない。

 

 メイルの目測によると今日から明くらいに魔人族領に辿り着けるらしい。

 

 だからこそ、昨日は今日を無為にする分存分に研鑽を積んでいたのだ。

 眠気で朦朧とする意識を叩き起こし、無駄に重厚なヘルメット型VRギアーを被り、電子の世界へ足を踏み入れる。

 

「――――」


「ぅんっ」


「ああ、そういえばライムちゃん寝てたんだっけ」


 スヤスヤと吐息を刻む幼気な少女の寝顔を拝むその姿は生粋の変態紳士――ハッ、どうして俺は自分で自分を貶している!?

 簡素な、それでいてどこか気品が伺える上品なパジャマを着崩したその寝顔はまるで神が創造した最高傑作の如き魅力を醸し出している。


 まさかついに心の奥底でライムちゃんのことを……!


――正解だよ、ゴミ屑


――ボクを淑女? キミも冗談が上手いな


――ふむ。 物分かりの良いゴミで助かる


「…………」


 うん、ないわ!


 劣情とかそういう下卑たる下心なんて一ミクロたりともないわい!

 元が元だったわけでとてもじゃないが恋愛対象には思えず、そしてそもそも俺には心に決めた少女が居る筈。


 これまで『賢者(笑)』が吐き散らしていった罵詈雑言を思い出してみると、下半身のふくらみも当然萎える。


 心なしか晴れやかな表情で着替え、上着を羽織り扉を抜ける。


 ふと、周囲を彷徨っていると、何と無しに早朝の壮大な大空を眺めていたい気分となり、何ら躊躇うことなく実行する。

 どこまでも続いていそうな規模の階段を突き抜け、大空が一望できる高台への扉をくぐると、そこには俺以外の先客が。

 

「――昨晩はお楽しみで」


「アッハッハ」


 もう既に手遅れであることを悟り、いっそ開き追って快活に笑う俺を先客――メイルはどこか蔑んだ眼差しで眺めていた。


















 

「それで、何しに来たのだ? もしやその有り余る劣情を私へ――!」


 後ずさるメイルへ俺は冷静にその短慮を訂正する。


「安心しろ。 俺にその気はない」


「ま、マニアと同じ類であったか……!」


 どこか愕然とした表情をするメイルだったが、そういえばとばかりに詰問してきた俺へ問いかける。


「お前、どうしてあんな狂人を好んでいるのだ?」


「……狂人とは随分と辛辣だな」


「だって実際狂ってるじゃん」


「……その節は申し訳ない」


「ふむ、やはりお前と奴を比べると癪ではあるがお前の方が数倍親しみやすいな」


「アレを比較対象にされてたった数倍か……ちょっとショック」


「勝手に傷心していろ」


 この点だけは辛辣であるメイルである。

 

 しかしながらその関係も初期の頃、特に最初のループの時と比べると相当に改善されていると思う。

 

「しかし、本当に疑問なのだが、あの狂人のどこが良い? アレはあきらかに狂い果てているなのだ」


「――利用価値、かな」


「外道の発想なのだ」


「おやおや、その言葉は俺にとっちゃあ十分誉め言葉だぞ?」


「甚だ不本意なのだ」


 当初のあの険悪な関係を考えると利害が一致しているからとはいえ、こうして冗談が通じている時点で凄いんだよね。

 というか、今更だけどメイルの妹に対しての評価が俺すらも霞んで見える程辛辣な件について議論した。


 まあ、気持ちは分かる。


 あの狂気の沙汰としか思えないような惨状、アレをこの目でしかと拝見してしまった身としては当然の反応である。

 更に今回は俺ではなくカメンという同胞が死んでこそいないがそれでも脅迫まがいの行為をしでかしたのだ。


 これで俺までが限りなく性悪だったら確実にこの共闘は空中分解する光景が目に浮かぶ。

 

「それで、後どれくらいで着きそう?」


「早くて今日、どれだけ遅れようとも明日には魔人国へ足を踏み入れることができそうなのだ」


「へえ」


「なんだ、その淡白な返答は」


「いやなあ、もうちょっとちょっかいかけてくるんじゃないかなーって思っていた身としては拍子抜けしている訳」


「ちょっかい?」


「『亡霊鬼』だよ『亡霊鬼』。 アレは害獣の類だ。 シモベたちを束ねる『亡霊鬼』の魔術は改造。 使いようによっては軍隊だって容易に作れるからさあ、面倒な俺たちを多数の捨て駒を犠牲にしても滅ぼすんじゃないかってね」


「まあ、それも一理あるな」


 ある程度の行動は読めるが、思考パターンに関してはそもそも対話したことすらないので未だ不明。

 いや、一応会話自体はしたことあるな。

 まあアレを会話とカウントするのかは甚だ疑問なのだが。


 閑話休題。


 まあそんなわけで予測不可能、とは言わないものの行動パターンが読みづらい『亡霊鬼』へと色々と対策をしていたのだが、それもここまでくると無為に終わりそうである。


「一応言っておくが警戒を怠るなよ?」


「もちろんなのだ」


 メイルはこれでも参謀兼幹部なんていう珍しい役職の魔族だ。


 そこら辺の警戒は俺に言われるまでもなく行っているのだろう。

 俺からはこれ以上述べる文句も無いので、悠々と天空を舞うリヴァイアサンの上から広がる壮大な景色を眺める。

 メイルもそんな俺にならって大空を俯瞰する。


 数分間、穏やかに過ぎ去る秒針を噛み締めていたその時。


――不意に、城塞が雨雲の隙間に垣間見えた気がした。


「――! おい、メイル」


「間違いないのだ!」


 俺の短い指摘にメイルは律儀にも返答する。


 そびえたつ城塞は不動という二文字が実に似合う重厚なモノで、たとえ大砲であっても破砕は不可能だろうと容易に察することができる。

 その砦の内部からは無数の蠢く気配が感じ取らる。

 そう、この大地こそ俺たちが想い馳せた地――、


「――魔人国ッ!」

 

 こうして俺は、通算二度魔人国に足を踏み入れる羽目となったのだった。





 最近アニメにあどけない幼女が出現しなくて困る

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