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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
三章・「眠りの道化師」
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ロリコン認定は、免れない……!


 ちなみに私って現実では寡黙な優等生……っていうことになってます。

 ロリコンなのに。

 どうしようもなくロリをこよなく愛しているのに。

 我ながら何とも業が深い。


 私の趣味嗜好が露見すれば確実に私の社会的な地位は砂上の砂のようにあっという間に崩れ落ちるでしょう。













「――ガバルドッッ‼」


「そんな大きい声出さなくても聞こえるぞ、ジューズ」


 ガバルドは何の合図も送られていなかったのにも関わらず、天才的な直感を遺憾なく発揮し即座に抜刀。

 会議室が揺れる程の踏み込みとともに放たれた一閃は、無造作に振るわれる曲刀を容易に弾き返す。


「おいおい、いきなり物騒だなスズシロ。 それとも罠か?」


「そう剣呑になるなよ、ガバルド」


「……故意ではないのだな?」


「もちろんさ! クソリア充への制裁なんていう醜い私怨なんてどこにもないんだからね!」


「殺すぞ」


 端的に殺意を表明され、震え上がる。


「……ほう、『英雄』レギウルス、か。 思わぬ協力者を呼んだのだな、ニンゲン」


「ニンゲンじゃなくてスズシロ・アキラだ」


 そう訂正しつつ、ガバルドに現状を報告する。


「まあ、とりあえず魔人族陣営の洗脳は終わったぞ」


「洗脳って言った! 今この男ハッキリと洗脳て言った!」


「? ちょっと何言ってるのか分かりません。 頭大丈夫ですか?」


「お前だけには言われたくねぇよ!」


 失礼な。


 さて、そんな雑談はともかく。

 ジューズの暴走に対して即座に対応したメイルは暴れまわる彼女を拘束しつつ心なしか申し訳なさそうな眼差しをガバルドへ向ける。


「身内が申し訳ないのだ」


「お、おう……」


「ん? どうしたガバルド。 まるで幽霊でも見たような顔して。 自分の死相でも垣間見たのか?」


「縁起でもないことを平気で言うな。 ――状況説明を求む」


「俺が真心こめて洗脳しました♡」


「成程。 誰かアキラ以外のヤツ説明してくれ」


「……ニンゲンも気苦労が絶えないのだな」


 途方に暮れるガバルドを心底気の毒そうな眼差しを向けるメイルは、淡々と現状を説明していった。


「洗脳という言葉は違うが、だがあながち間違ってもいないかもなのだ。 色々あって少なくとも私たち四人はこのニンゲンに協力することにした。 疑問は?」


「幾らでも沸くわ」


 呆れ果てた顔でガバルドは俺を一瞥する。


「お前、本当に何をした? 洗脳っていう荒唐無稽なモノがいよいよ現実味を帯びてきたのだが……」


「ガバルドの俺に対するその辛辣な認識酷くない? 泣くよ?」


「勝手に泣け」


 最近どんどん周囲の面々が辛辣になっていく気がするが、気のせいなのだろうか。


「まあ、色々とな。 見ての通り俺もレギウルスも死にかけたが、この通り痛み分けで何とか生きながらえているよ」


「そうか……お前も大したモノだな」


「そうか?」


「ハッ。 謙虚ぶるのは止めろよ。 気色が悪ぃ」


「おーいガバルドさんや、素が出てますよ?」


「出してんのよ」


「まさかこんな形でこのネタに向き合うとは思いもしなかったわ」

 

 そう俺はしみじみと呟いたのだった。
















「――魔王城を襲撃、か。 どうやら疲労で頭が可笑しくなってしまったようだな」


「どうして皆俺のことをそういう認識で見るのかな?」


「自業自得だろ」


 ガバルドに今後のことを報告した第一声がそれであった。


 もう最近言葉を交わす度に罵倒されているのだが、そろそろマゾになってしまうかもしれないレベルである。

 俺の唯一の心のオアシスは沙織だけである。


「お兄ちゃん……その女は、誰?」


「お前は浮気された彼女かっ」


「だ、だってお兄ちゃんのこと好きなんだもん」


「お、おう……」


 流石にちょっと羞恥心があるのか、少し頬を染めながらも堂々と宣言するライムちゃん。

 うん、俺個人としては嬉しいよ?

 でもさぁ――、


「お前……マジっぱねぇわ。 尊敬するわあ」


「スズシロ。 世の名違いを正す騎士であるお前がロリコンなんて、絶対笑われるぞ」


「ひぇ……魔人族の中でもお前ほどロリに好まれたロリコンは初めてだぞ……? マニアが絶叫するだろうなあ……」


「変態っ」


「端的に言ってドン引きなのだ」


 泣いていいかな?


 別にライムちゃんに淫らな感情を抱いたことは一度も無いし、どちらかと言うと恋愛というか親愛の感情が大きい。

 まあつまり、皆様方のロリコンという認識はえらい風評被害なワケで。


「みんな、信じてくれ。 誤解なんだ!」


「「「「「「「ハッ」」」」」」」」」


 皆様方の語弊に目が染みる。


「……ったく、それなりに心配してやったんだが、完全に杞憂だったな」


「あっ。 心配してくれたんだ」


「勘違いするなよ。 お前がどうなろうと知ったこっちゃない。 だが、お前の命運で国の今後が左右するのならば多少の懸念も当然だろ」


「ツンデレ乙~、ちょ、止めて? 止めよ? どうして無言で剣を抜刀しようとしているのかなあ!? み、みんな止めようよ! 俺死んじゃうよ!」


「止めるのだガイアス。 ――床が汚れるだろ!」


「問題そこかよ!」


 どうやら俺の命の価値は床の清潔よりもなお劣るらしい。

 

「まあ、そんなことはさておき。 ――スズシロ、お前は本気で魔王城へ襲撃を決行するつもりなのか?」


「もちろんって言ったら?」


「どうしようもない愚者を見る眼差しになる。 あっ、平常運転か」


 ガバルドは今まで俺をどうしようもない愚者を見るような眼差しで眺めていたたしい。


 最近どんどん罵倒のレパートリーが増えてくるばかりである。

 それはともかく――、


「――大マジさ。 だがもちろん、ただただ愚直に魔王城を制圧するなんていう愚昧な策を考案する程愚かではない」


「ああ。 顔も性格も性根も外見も矜持も頭の中も嗜好も何もかもが最低なお前でも、その点は信用してやる」


「酷い言いようだな。 ――もちろん、策はある」


「――――」


 目を細め、微笑む俺をガバルドは一瞥する。


「ふんっ。 その策の内容にもよるが、俺も乗っかってやるぜ、スズシロ」


「――。 それは頼もしい限りだな」


「ハッ」


 こうして、魔人族の幹部が入り乱れ更には王国が誇る『英雄』、そしてかつての『賢者』、ロクでなしの『騎士』が一堂に会したのだった。



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