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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
三章・「眠りの道化師」
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それは社会的な死


 最近ロリ同士の百合はときめくかどうか模索しております


 ちなみに本編とはあんまり関係ないです













「――で、具体的な策は?」


「魔王城を襲撃する」


「成程。 お前がどうしようもない外道ということは理解できた。 さっさと土葬されろやゴラァ!」


「……落ち着くのだ、レギ」


「…………め、メイルが言うなら」


「ぺっ」


「ちょ!? 唾液飛ばすなよ! 汚ねぇじゃん!」


「安心しろ。 俺の唾液は、限りなく神聖かつ、自然と体内で吸収できる。 なにせ体液なのだから」


「そのムカつくドヤ顔は止めろ!」


 何故か作戦を端的に表明すると猛烈な批判を喰らってしまった。

 解せぬ。


 ちなみにそろそろ腹が減ってくる時間帯なので現在俺たちは昼食を摂りながら今後について話し合っている。

 余談だが、魔人族の料理人から出された料理はヘドロさながらであった(ちなみぬレギウルスたち幹部連中の面々は割と真面な料理が出されている)。


 もちろん、致死量を遥かに上回る劇毒が。


 俺はさりげなく料理人からもらった汚物を唾棄すべきリア充へと向けながら、長旅に必要な携帯食料を頬張る。

 

「一応言っとくが、俺は別に脅迫でもして強制的に和平を成り立たせようとしているわけじゃなくて。 そんなことしたら逆に関係悪化するし」


「……じゃあどういう趣旨なのだ?」


「――――」


 静かに、されど鋭く目を細めるメイルがそう問う。


「俺が欲しいのは話し合いの場。 だがしかし、魔族との和平交渉には確実に人間が居座らないと始まらない」


「まあ、だろうな」


「だからこそ、一旦武力で制圧。 それから穏便に話し合いの席についてもらう。 魔王とやらの篭絡はお前らに任せたからな」


「どうして?」


 ぼーと虚空を眺めていたカメンが高い声色でそう問う。

 思わぬ人物からの質問に戸惑いつつ、俺は冷静に答える。


「いや、だって俺みたいな不審者が『悪の組織が――』とか言ったら絶対中二病だなって誤解されるじゃんか」


「確かに」


「まあ、そういうわけでお前には魔王の説得を一任するわ。 困った時は俺が気合と根性で誤魔化から」


「頼りない変革者だな……」


「おいおい、そんなに褒めても何も出てこないぞ?」


「誉めてない」


 釈然としない顔色でレギウルスがそう反論する。


 俺は味のしない携帯食で腹を満たしながらそういえばとばかりに今度は逆にメイルへと質問を投げかける。


「そういえばさ、魔王ってどんな人柄なの?」


「……穏やかではあるが、それでも厳格な雰囲気を崩さない。 アレは本当に凄い人なのだ。 アレが統率者で良かったのだ」


「ほう……そうか」


 そういうヤツが一番篭絡しにくいんだよなーと頭を悩ませる俺は、太腿に居座るライムちゃんが料理に手を付けていないことに気が付いた。


「おーいライムちゃんや。 ご飯食べなくてもいいの?」


「あーんして」


 その一言で会議室の空気が凍り付いた。

















 オッス、オラアキラ!


 早速だけどこの絶望的な状況選択肢を提示してみよう!


 ①「あーん」して社会的に死ぬ

 ②「あーん」せずにライムちゃんが癇癪を起して八つ当たりに幹部連中の大半が死ぬ


「あれ? 詰んでね?」


「アキラ、お前……」


「止めて!? どうして皆そんな軽蔑したような眼差しを俺に向けるのかな!?」


 大袈裟すぎる、と笑う人もいるかもしれないが、実をいうとこの状況は知らず知らずに切迫しているのだ。


 どういうわけかライムちゃんの独占欲はほんとうに恐ろしく、添い寝を断った時点で八つ当たりに屋敷が大破したこともある。

 そんなライムちゃんの「お願い」を断れば、八つ当たりで魔人族幹部が死に、必然これまでの策の一切合切が無為に終わる。


 世の中に『最悪』という概念が該当するモノは腐るほどあるが、俺はもちろん数ある『最悪』の中でも最も被害の少ない選択肢を選ぶ。

 そう――これは苦肉の策なのである。

 別に私利私欲が爆発したワケじゃないし、ロリコンなどでもないのだ。


 だからそんな冷たい眼差しで見ないで欲しい。


「あ、あーん」


「ん」


「――――」


 居た堪れない沈黙に包まれる会議室の中響き渡るライムちゃんのくちゃくちゃという租借音がやけに背徳的であった。

 レギウルスはメイルの太腿に横たわりながらも、畏敬したのうに慄く。


「……俺はきっと一生お前には叶わないな、ロリコン」


「ロリコン、心底おぞましいのだ」


「流石スズシロ……! アタシたちにできないことを平然とやってのける!」


「ロリコン」


「止めてよね!? 俺って人知れずお前たちの安然を死守していたんだからね! 苦肉の策なんだからね!」


「分かってる、分かってる。 性欲故なのだろう?」


「断じて違う!」


 社会的な地位が暴落したのは肌で感じつつ、俺は何とか話の論点をすり替えようとする。


「そういえばレギウルス、お前傷は大丈夫なのか?」


「お前が刻んだがな。 まあ、二日程度療養すれば勝手に回復するさ、ロリコン」


「止めよ? いよいよ女子の視線が冷たくなってきたから」


 どうやら俺の神対応は無為に終わってしまったらしい。

 

 ああ、そういえばまだ言ってなかったか。


「ああ、それと余談なんだけどさ、俺と妹以外にもさ、変革に賛成している奴がいるんだが、紹介してもいいか?」


「……勝手にしろ。 襲撃でもされたら殺すがな」


「そう疑心暗鬼になるなよ。 それじゃあライムちゃん、よろしくね?」


「任されたわ。 ――『転移』」


 そうして何の合図も無く、会議室にその人物が出現する。


 実際は中年と言うべき年齢なのだが二十代後半と説明されても納得できるような優れた容姿を持つ男が詰問する。

 その男の名は――、


「――ガバルドッッ‼」


「――――」


 刹那、一陣の風となったジューズはその瞳に熱烈な愛をこめて、凄まじい速力で片手剣片手に肉薄していった。



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