――好き
正直に話しましょう。
この告白シーン――完全に、アドリブです。
書いてから「もうちょっとサイドストーリ挟み込みたかったなあ。 というかやらなくちゃ」と奮闘しましたが、まさかの割り込み投稿の仕方が分からないという珍事。
……今度からもう少し機械オンチを克服していきたいと思います。
もしかしたら七章が終わるタイミング、または九章でそこら辺の閑話が書かれるかもしれません。 でもね……私ご存じの通り記憶喪失体質なんですよね……
果たしてその時に私は覚えているのか……!
多分忘れるでしょう (・∀・)b
「――――」
「――――」
いつのまにやら晴々とした晴天は鳴りを潜め、どこか鬱屈とした空気が醸し出されている気がする。
それはおそらくこの異常事態のせいだろうなと推測しながらも、メイルはその華奢な腕で巨体を抱えながら疾駆する。
「おいメイル、ちょっと揺れ減らして……おぇ」
「ちょ、どうして吐きそうなのだ!?」
「俺、実は船酔い酷いんだよなー」
青色を通り越して真っ白な顔色のレギウルスは心底気持ち悪そうに呻いた。
本来ならばこの程度の揺れレギウルスにとって振動ですらないのだが、『獣化』により魂魄が弱体化された今は話が別。
小刻みに揺れるたびにレギウルスの内臓へダメージが。
いつ消化物を吐き出しても可笑しくはない状況の中、メイルが不意に呟いた。
「レギ、お前はヨセルのことどう思うのだ?」
「――――」
唐突に投げ入れられたその問いに瞠目するレギウルスを置き去りにして、メイルは神妙な顔つきで語る。
「私は――憎い。 同胞を殺めようとするヨセルが」
「――――」
「何より――ヨセルの胸を苛む劣等感に気が付けなかった私自身が、どうしようもなく我慢ならないのだ」
「お前……」
不意に、かつての思い出が飽和する。
あの時はよかった、だなんていう月並みにありふれた感傷に浸るレギウルスへ、再度メイルは告げる。
「私は、もう一度ヨセルの馬鹿と笑い合いたいなぁ」
「――――」
そう寂しげに微笑むメイルの横顔はどこまでも儚く。
まるで、今にも消えてしまいそうなそんな静謐さが宿った瞳で、レギウルスを射抜く。
「――でも、それはもう叶わないのだ」
「……そう、だな」
これが魔王からの密命で、レギウルスたちにも知らされていない極秘任務――なんていう可能性は荒唐無稽か。
そんなどうしようもない願望より、より確かな可能性――反逆というヨセルが選んだ選択肢の方がまだ信憑性はある。
もし、ヨセルの謀反が魔人族に露呈すれば彼の家族を含めて皆殺しにされ、血祭が沸き上がるだろう。
そうなる前に――、
「――そうなる前に、私がヨセルを殺す」
「――――」
そう、宣言した。
「――――」
それが、魔人族として――一人の友人としての揺るぎようのない決意と覚悟だと、ありありと理解できてしまった。
「レギは、止める? それとも幻滅した?」
「……軽蔑も、止めもしねぇよ。 ただただ、理解が追いついていないだけだ」
「――――」
レギウルス・メイカという人間はどこまでも他人の心情に興味がなかった。
誰かの顔色を伺って生きるその姿が、酷く醜悪に見えてしまった。
だからこそ、レギウルス・メイカは「奴」のように自分の安然なんていう下らない目的で自分を押し殺すことは絶対にない。
ただただ、本心を口に出す。
故にレギウルスは他人の心の揺らめきには人一倍鈍感で――そんなどうしようもない理由で、一人の友人を傷つけてしまったのだ。
本当に、その姿は許し難い程『傲慢』で。
どうして、自分はこうも愚かなのか――、
「――ん!」
「――!? ???」
刹那、頭蓋に鈍痛。
慌てて目を見開くと、そこには拗ねたように頬を膨らむ幼馴染――メイルの姿があった。
「別に、誰もレギに変われとは言っていないのだ」
「――――」
「間違ったのなら謝ればいい。 ただそれがのことなのに、レギは重く考えすぎなのだ。 もっと、自分らしく、いつも通りに笑うのだ」
「その結果、お前が傷ついたらどうする?」
「――――」
爆発する。
これまで考えもしなかった激情が火山でも噴火するように無尽蔵に溢れ出し、レギウルスは獣のように吠える。
「お前だけじゃない! ヨセルも、他の奴らだって! 俺のせいで傷ついて、人生を狂わせたんだ! あいつだって――!?」
「はぁ。 自意識過剰も甚だしのだ」
叫び出すレギウルスの頭髪を、メイルの決して優しくないチョップが痛烈な音を響かせ、猛威を振るう。
悶絶するレギウルスを、メイルは呆れたような眼差しを向けて言い放った。
「そんなの今更なのだ。 もうレギの無意識のナイフなんかに傷つくほど軟な可愛らしい魂、生憎持ち合わせていないのだ」
「――――」
「というか逆に今更レギウルスが真面目になってもね。 逆にドン引きして二度とお近づきになりたくないのだ」
「お前……」
まさかの真人間全否定。
そんな横暴なメイルの主張に頬を引き攣らすレギウルスへ、何故か少し頬を染めながら言葉が紡がれる。
「――それに、私は今のレギウルスが好きなのだ。 今更変わっても、困る」
「――――」
「ちょ、どうして顔を真っ赤にする!? 告白みたいなのではないか!」
「お前、お前……!」
レギウルスも『英雄』である以前に一人の男。
故にこのような愛の告白を受ければ普通に照れるし頬を耳の先まで真っ赤にする。
その誤解――厳密には、というかまず間違いなく誤解でもなんでもないのだが――に瞠目しメイルは――もう開き直ることにした。
「お前……俺の事好きなの?」
「ああそうだ! もうどうしようもなくレギの事が大好きなのだ! 何か文句でもあるのだ!?」
「い、いやないんだが……」
茹でた林檎のように顔を真っ赤にし乙女のように顔を背けるレギウルスへ、男顔負けの熱烈な告白を繰り出し、その退路を塞ぐ。
「レギの荒々しいところも、その唯我独尊ぶりも全部大好きなのだ! レギウルスが自分で嫌ってるトコロも、愛しているのだ!」
「ちょ、落ち着――」
「だから! もうちょっと自分に自信をもって! いつも通り、私の大好きなレギのままでいて欲しいのだ!」
「――――」
先程まではその苛烈な独白に顔を真っ赤にしていたが、しかしメイルのその吐露を聞いてしまうと神妙な顔になってしまう。
そして――ようやく、自分がどれ程下らないことに苦悩し葛藤していたのか理解できた。
「あぁ――下らねぇな」
「――――」
「確かに、今更他人の顔色伺うようなクソ野郎に成り果てるのなら、誰かを傷つけても我を通すのが俺だよな」
「――いい顔、するようになったのだ」
「そうか?」
憑き物が取れたような晴天の如き表情をするレギウルスを、愛おし気にメイルは見つめる。
それはそうと――、
「さっきの告白について詳しく……」
「ちょっ!? そこは掘り返さないで欲しいのだ!」
個人的にはaパートでの辛辣な扱いへの報いってカンジです




