――堕ちる
大分県見れるアニメ少なッ!
回避は、不可能。
音速どころか光さえも超越するその速力をその目に焼き付けたのならば、その結論に至るのが至極当然だろう。
反撃を捨て去り、迎撃・回避を最優先。
そうでなければ――死ぬ。
「――――」
「くっ……!」
アイテムボックスから取り出した代わりの鉄刀を急所――心臓へ添えた直後、腕が吹き飛んだのではないかと錯覚してしまう程の衝撃が。
「ッッ!!」
「――――」
慣性に従い、ジェット機でさえ地を這う亀程度の速度にしか思えない超速で吹き飛んでいく俺を、レギウルスの眼光は逃さない。
この鉄刀は特殊な素材と魔術が付与されており、衝撃への耐性は一線を画すはずだが、今の一撃で軋みやがった。
衝撃に耐えうることは可能。
だが到底、それがいつまでも続くとは思えなかった。
「――ッッ!」
「あぁん!? 武術は健在かよ!?」
地を這うような姿勢で地面から靴底を離し、そのまま左腕を視点として台風のように回転していく。
その武術は理性を保っていた頃と遜色なく、故に回避は困難。
流水の如き自然さで払われた蹴撃が俺の肩を砕く。
「あぁがっっ」
「――――」
目玉でも刳り貫かれたようなおぞましい激痛と共に、リヴァイアサンの岩肌へと隕石のように激突する。
だが、その苦痛に呻く暇は、無い。
「くっ」
「――――」
横薙ぎ一閃、更に左腕に万力の腕力で握られた紅血刀がまるで演舞のような鮮やかな軌道で襲い掛かってくる。
咄嗟に起き上がり、今度は受け、ではなく流すような姿勢で猛攻を凌いだ。
今回は対処法が良かったのか吹き飛ばされることはなく、だが刃が交差するたびに手首が軋んでいく。
一撃一撃が鉄球のように重く、故にその常軌を逸した衝撃の一切合切を防ぎきることは、不可能――、
「――ッッ」
「――――」
右足首に、激痛。
それは自覚した直後、左足からおびただしい量の出血が――起きなかった。
何故なら、流す鮮血など、とうの昔に『吸血鬼』の鋭利な牙によって吸い尽くされてしまったのだから。
そしてその分、『異能』により浪費したレギウルスの生命力が加算される。
「そういうことかっ」
「――――」
無言は肯定の証か。
ようやく、明らかにレギウルスに情を抱いているメイルが『獣化』に慌てなかった理由がようやく理解できた。
『紅血刀』。
それが人肌へ侵入すればたちまち回る血液を吸収し、それを糧にレギウルスの深手は時間でも巻き戻したように無傷に戻る。
成程、それぞれ単体ならば左程効力を発揮しないが、それらが合わさりあうことによって最大限の結果を叩き出していやがる。
『獣化』で溢れ出した生命力を、こいつはストックした血液で治癒したんだ!
だからこそ、メイルの瞳に焦燥が宿らなかったのだ。
なにせ、獣のように暴れまわるだけで勝手に重傷が治癒されちまうんだから、この程度焦燥には値しないのだろう。
ならば――、
「ガイアス――いい加減、そろそろ見せ場作れよッッ!」
「――――」
刹那、超至近距離で構築した魔術が猛威を振るった。
「――蒼海乱式・『蒼穿』」
「――ッッ」
練り上げていた魔力で限界まで加圧した水――否、弾丸がガイアスの脳天を穿つ。
脳漿が無作為にぶちまけれれ、やがて力尽きたようにレギウルスは崩れ落ちて――、
「――なわけねぇだろうがぁ!」
「なっ――」
微かな、それこそ埃程度の理性を垣間見せたレギウルスは、次の瞬間尋常ではない腕力でインパクトを放つ。
それは余りに唐突すぎて、確実に仕留めたとしか思えないような状況も相まって多少とはいえ油断していた俺が防げるわけがない。
故に、結果は必然。
「ぐぁっ」
「ハッ」
ようやく多少は理性を見せたレギウルスは、それでも開き切った瞳孔で俺を射抜き――そして、その姿がブレる。
どこだ、どこに移動した。
音速さえも軽々と上回る速力を持ち合わせているレギウルスという相手に眼球など不要な品物であった。
必要なのは天才的な直感と気配察知技術。
瞑目し、周囲の気配に神経を研ぎ澄まして探る。
俺は今まで培ってきたソレらを余すことなく駆使し――直後、気配を捉えた。
感覚を研ぎ澄まし――迫りくる殺気を察知した瞬間、銀閃が煌めいた。
「ハァァッ!」
「ハッ」
皆目し、嘲笑するかのような吐息と眼前に広がる光景を瞠目する。
俺が鉄刀で断絶したモノ――それは何の変哲もないただのナイフであった。
瞬時に騙れたことを理解する。
必死に右足を軸に回転するが、負傷した左足では、速力がとてもじゃないが足りていないのは明白。
そして、宙を鮮血が舞う。
「――ッッ」
「――――」
心臓へと突き出された刺突を咄嗟にその標的を肋骨へと変更させる。
骨折、程度のレベルではない。
その深紅の刀身に触れた瞬間、風圧で周囲の骨が悲鳴を上げ、砕ける。
それと同時に内臓や血液が破裂し、発狂しそうになるほどの激痛が感覚神経を通して中枢神経へと拡散される。
その苦痛はさしも俺でも絶叫せざるを得ずに、そして同時に『傲慢の英雄』にとって致命的な隙が生じる。
回避は……この傷と激痛で、不可能。
「ハァァッ‼」
「――――」
その剛腕が胴体へと触れられる瞬間――一瞬でレギウルスの姿が遠くなる。
数秒後、俺はようやくジェット機のように俺は人力によって大空へと吹き飛ばされたことを漠然と理解した。
その勢いは加速するばかりで減衰という概念を知らずに、花火のように打ちあがった俺を燃え上がる。
大気摩擦、まさかこれを味わうこととなるとはと感慨深くなる。
不意に、浮遊感。
刹那、隕石のように俺はリヴァイアサンへと堕ちていった。
「あっ、死んだな」
そう認識した瞬間――『色』を見た。




