加勢
ストックの先に、ついにロリが登場しました。(今書いているストックの方です)。
余談ですが、もう一人ロリっ子が登場します。
まぁ、私としてアレはロリとは言えませんが。 だが最終的にはロリ(笑)になる予定の女の子です。
きっと後で分かる。
「――ハッハハ、野生人を注文した覚えはねぇぞ」
「ハッ! 少しは感謝しろよ、クソ野郎」
ガッハッハ、という快活な笑い声がめいめいと響き渡る。
「それで――どうしてここに?」
「月彦の野郎の指示だァ、少しは感謝しろよォ」
「原始人に感謝する人間って居る?」
「テメェ、もうちょっと誠実になれよッ!」
「後ろ向きに善処してやるよ」
さて、月彦には後で感謝の言葉を送ってやらないとな。
形成は、逆転した。
安吾はそこらのモブとは出来が違う。
能力も、技術も。
しかも彼にはその身を縛る縛りが俺と違って何一つない。
いやー、ちょっと羨ましいな。
「安吾、殺さないでよ」
「あァん? 今更情でも湧き出たのかァ?」
「アッハッハ、単に捕虜にして色々吐かせるだけだよ。 能力的に多分〈プレイヤー〉だ。 持って居る情報は少ないが、やっておくに越したことはないさ」
「……了解」
聞き訳がいい犬で助かる。
俺は俺で仮面を細工をしますか。
まぁ、細工と言ってももう既に終わっているんだどね。
「さて――覚悟はできてるか、魔人族ァ」
「――――」
安吾の瞳に浮かんだ感情は憎悪。
当たり前だよね。
友人が殺されたら、誰だって義憤にその身を委ねるさ。
そう、普通ならね。
「ハハハハ。 普通か」
「――――ッ!」
「あっ、失礼。 この笑みは所謂自嘲だ。 決してあんたを愚弄したわけじゃない」
俺はそうにこやかに釘を刺す。
勝手に勘違いされちゃぁ、ちょっ困るしね。
「じゃあ――続きを始めるとしようか」
「――モ エ ロ」
その言葉が吐き出された刹那、再び燃え盛る業火が世界を埋め尽くす。
俺一人なら無傷じゃ済まされない弾幕だな。
だが――、
「安吾、これを使え」
そう言い、俺は安吾へアイテムボックスから取り出したナックルを投げ渡す。
それを胡乱げな眼差しで受け取る安吾。
「ッ! 毒でも入ってんじゃねェんだよなァ?」
「安心しろ。 お前を暗殺する時はもっと上手く殺すさ」
「確かにな」
「そのナックルは「戒破」。 俺の「戒杖」と同じく、魔法や魔術を反転させるアーティファクトだ。 これならアレも防げるだろ?」
「あァ――十分過ぎる」
炎の弾幕との距離はまさに目と鼻の先。
俺はまるで安吾を肉壁にでもするかのような位置に立つ。
えっ?
本当に肉壁にするかって?
それはイエスでもありノーでもある。
「――オラッオラッオラッ! 〈覇砕拳〉ッッ‼」
そして、隕石の如き威力を持つ拳が乱舞する。
その拳は次々と炎玉を打ち、そして打撃と「戒破」によって反転させられ、術者本人――仮面へと導かれる。
安吾のジョブは「拳闘師」。
文字通り、言葉より先に拳が出てしまう猿にはピッタリのジョブだ。 いや、どちらかと言うと猿じゃなくてゴリラか。
その手数は片手しか使えない俺の比ではない。
殴り、破壊し、砕き、壊し、叩く。
それをひたすら繰り返すことぐらいは幾ら猿でも可能だろう。
ひたすら炎弾を殴り続ける安吾。
その姿は、なんだか、まるで不出来なロボットを連想させるような光景だ。
あれ?
俺、仕事無くね?
ないわー。
色んな意味で。
安吾がちょっと優秀なせいで俺がすること無くなったじゃないか。
まぁ、このまま仮面の魔力が尽きるまで安吾がひたすら殴打を繰り返す光景を満喫するのも悪くはないが、無駄だ。
そろそろ、加勢しますか。
俺が背中に抱えた姫さんを一瞥すると――寝ていた。
こ、こいつ寝ていやがる!
どんだけ図太いんだよ! と戦慄せざるを得ない。
……まぁ、仮にもお嬢様なんだ。
そもそも監禁生活で結構精神も摩擦しているはず。
この激しい戦い――今はひたすら猿が殴り、ひたすら仮面が炎を吐き出すだけだが――によって精神が限界を迎えたのだろう。
なら、今は寝かしといてやるか。
「安吾、姫さんを頼んだぞ」
「何する気だァ、オマエ!」
「取りあえず、この状況を何とかしないとな。 頑張って姫さんを守りながら、この弾幕を防いでくれ。 そう、気合でな」
「……世の中には気合じゃァどうにもならねェこともあるぞォ?」
「あっ、知ってるんだ」
「よし、コロス」
ま、安吾ほど単純作業に適正があるヤツは存在しないだろう。
俺はアイテムボックスからひょうたんを取り出し、そしてそれに魔力を込める。
「――蒼海乱式・〈海宮〉」
俺の言葉と共に激しくひょうたんが爆発した。
そして、空中に水が溢れだし、踊り舞う。
やがて水はアーチのような形状となり、姫さんをまるで壊れ物でも扱うかのように優しく包み込んだ。
これである程度の炎は耐えられるだろう。
余程のことが無い限り、この結界を破壊できないだろうな。
俺のやるべきことは単純明快。
仮面がその「余程のこと」をしでかす前に、倒す。
「そんじゃぁ――行くぞ」
そして、俺は風と化した。




