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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
二章・「アソラルセの剣聖」
156/584

■■■・■■■■


 この後メィリさんの過去話するんですけど……今書いている時点で一万文字超えているんですよね。 それも駆け足で書いたにも関わらず。

 どうしてこうなった。











――迎撃に必須となる魔術を神業的な直感により刹那で選択、そして反撃の魔術を構築する速度すら尋常ではない。


(流石わ『賢者』といったところか)


 単純な魔術構築速度だけならばガイアスなどの『神獣』の面子すらも上回っているのかもしれないレベル。

 その手腕、驚嘆に値する。

 そしてメィリは猛烈な速度で術を構築、発散した。


「――〈煉獄の地平線〉っ」


「これはこれは……」


 刹那、世界が紅蓮に燃え滾る火炎によって支配された。


 つい先程まで咲き誇っていた数多もの薔薇が一瞬にして灰と化し、刹那で灰すら残さず消滅していく。

 

「数には数ってか……割と気色悪ぃなぁ」


「キミがボクと一つでも共通点があれば、この魂を清めるために心中する所存だよ、スズシロ・アキラ」


「そいつは同意見。 割と気が合うな、何なら一緒に死んでやろうか?」


「戯言を」


「アッハッハ、お前が言うか、それ?」


「――――」


 詭弁なお嬢様口調の仮面を被っていた少女は、不愉快そうに俺を睥睨しながらも着実に高原を地獄絵図へと変貌されていく。

 この光景、地獄だって言われても納得できそうだな。


 俺は破片の温度を一定にし、莫大に熱量からの干渉を拒絶しながらも、現状を冷静に分析している。

 煉獄の範囲は余りに広大。

 魔力を固めればある程度耐えられるだろうが、それにも限度がある。


 まぁ、真面に喰らえば確実に丸焦げコースは確定。

 アッハッハ、いたいけな外見の癖に分不相応な殺意半端ないっすと冷や汗を流し戦慄しながらも次手に打って出る。

 

「――殺到する蜂でも見ている気分だな」


「――――」


「流石にちょっと吐き気がさすグロ光景っすわぁ」


「――――」


 猛然とメィリへ進みいく氷槍は、その進路を阻む紅蓮の炎に臆することなく愚直におぞましい程の物量で殺到する。

 回避不可能の全方位襲撃、だが――、

 

「ふんっ」


「……まぁ、そうなるよなぁ」


 パチンッ、と警戒に指を鳴らした瞬間、燃え滾る炎がメィリの華奢な体を包み込み、迫りくる破片の一切合切を融解、蒸発させていく。

 目には目を、包囲攻撃には包囲魔術ってか。

 

 もちろん、こうなることは予想内。

 俺がこの状況を作り出した真意、それは――、


「流石に、その状態じゃぁ動けないだろ?」


「――――」


 ただひたすらに俺と距離を離す小さき『賢者』メィリ・ブランドに移動の不自由を課すためである。

 この状態、火炎の繭から離脱すればもれなく破片の雨の餌食となるのは自明の理である。

 つまり破片が底を尽きるまでのこの一瞬、この刹那こそ千載一遇の好機!


 俺の意思に従い、微弱な魔力によって形成された透明な足場を踏みしめ、そのまま猛然と業火の繭へと肉薄する。

 メィリが己へ迫る鋭利な刃に気が付く前に、速攻で片付けるぞ。

 蒼の刀身を業火の手前で回転し威力を増幅し――一閃。


「さぁ、いい加減屍を晒――なっ」


「――――」


 刃を振るい、その繭を開いた時、俺は愕然と目を見開いた。


 ありとあらゆる魔術魔法を否定し反転する蒼の刀身が燃え滾る煉獄の繭へ触れた瞬間――業火は、俺の()()へ『反転』していった。

 『反転』する方向性は術師と相場が決まっている。

 ならばメィリの所在地は――、


「アハッ、君って存外阿呆なんだねぇ」


「――――」


「それじゃあね。 二度と再会しないことを祈るよ。 ――『顎門(アギト)』」


「ぁ」


 刹那、俺の背中を溢れ出した顎が噛み千切り、そのまま捕食、呑み込み――、













「アハッ、君って存外阿呆なんだね」


「――お前がな」


 刹那、振り返りさえもせず背後へ容赦なく戒杖刀を振りぬく。

 確かな手ごたえの後、困惑するような戸惑うような声をBGNに俺は虚空に足場を作成、それを踏み締め、回転するように体制を逆転させる。


 そして――拳の内部で魔力と魔力が溢れ出し、莫大なエネルギーを弾き出し爆発的な威力と昇華される。


「――獣宿・『獅子』ッ!」


「あがっ、うげっ」


 響き渡った轟音は生身を殴ったモノとは到底考えられないような、砲弾でも放ったようなモノであった。

 『獣宿』の威力に意識を手放したか、虚空から出現した莫大な質量の溶岩は一瞬で消え去り、灰だらけの高原にメィリが猛然と激突。


 だけに留まらず、耳をつんざく轟音と共に灰色の高原に荒々しいクレーターを刻み込み、血反吐をぶちまけながら撃沈する。

 俺は警戒に着地、そして吐血するメィリの顔面へ容赦なく靴底を舐めさせる。


「ふわぁ。 ちょっと戻ってくる時間帯間違えたな。 今度から反省しよっと」


「何を……」


「毎度言うけど君には関係ないよー。 それはそうとこの状況。 俺としては右腕を振るうだけでお前の喉首を掻けるんだけど、そこら辺コメントは?」


「……体でも求める気かい?」


「ハッ。 俺もそこまで酔狂じゃないさ。 というか体を求める気かいって、自意識過剰も甚だしっすねぇ」


「――――」


「そう睨むな。 それにさぁ、俺は脅迫なんて物騒なことをするつもりはないし、さっさと健在な姫さんの顔を拝んでやりたい」


「……?」


 この状況、優位なのはまず間違いなくメィリの顔面を踏みつけにするこの俺。

 そんな状況でむざむざ彼女を殺すのはあまりに勿体なく、少しでも賢いモノならば彼女を利用するのが最善策と気が付くはず。

 もちろん俺もそれは考えた。

 

 だがしかし、仮に彼女を利用したとしても必然的に監督的存在である『厄龍』さんがもれなくついてくるんだよなー。

 こればかりは本当に厄介。

 戦力欲しさにスパイを懐に入れるのはあまりに本末転倒。


 ならば――。


「……ボクを殺す気かい?」


「いいや? 俺にも俺なりのプランがあるんでねぇ。 それによるとお前は別に死ぬ必要性もないし、というか死んでほしくない」


「なら――」


「でもさぁ、少し勘違いしてない?」


 メィリの言葉を遮り、指先に莫大な魔力を込めると、そこから暗黒に満ち満ちた漆黒の球体が溢れ出していた。

 眼前に広がる光景に戦慄するメィリへ、畳みかけるようのニヤリと薄く嗤う俺は掌の魔力を解放していった。


「俺はさぁ、確かに脅迫しないっていったよ。 でもさぁ――問答無用に君を消さないとは一言も言っていないよ?」


「ッッ!?」


 愕然と目を剥き、喚き抵抗しようとするメィリの胴体を足蹴にしながら、俺は万象を否定するワードを淡々と紡ぎ――、


「それじゃあ、世界から、自分にすらも忘れ去られてしまう気分を存分に味わうといいさ。 ――【天衣無縫】」


「――ぁ」


――刹那、■■■・■■■■は世界から消え去っていった。



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