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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
二章・「アソラルセの剣聖」
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帰路


 ストックが心もとないですぅ。

 それはそれとして、まふまふさんの音楽聴いてたら結構作業が捗りました。 まふまふさんは全てを解決する、自明の理だよね!











 王国への帰路は特にこれといったトラブルもなく進んでいった。


「レイドさんや、ちょっと気になったんですけど、あんたさんってどんな交友関係築いているの? 気になるわー」


「……………………何故、それを述べる必要がある?」


「俺が暇だから!」


「……………………下らん」


「おいおい、ノリが悪けりゃモテないぞい? ほら、もうちょっとテンション高くヒャッハーって生きようぜ?」


「……………………下らん」


 帰路へ続く道のりには何の障害もイレギュラーもなく平穏そのもの。

 俺たちの身体能力は、割と常人離れしているので、オリンピック選手顔負けの速力で疾走している。

 その時速はジェット機もかくやという勢いだろう。


 平穏が続けば、当然ながら退屈になる。

 

 特に俺は飽きっぽい性格なので変わり映えのない景色に飽き飽きし、退屈しのぎにレイドへ会話を試みたが結果はこれだ。

 ちくせぅ、巨人の英雄さえも欺いたこの詭弁でさえレイドが心を開くことはないのか、と歯噛みする。


 ヤバい。

 冗談抜きに退屈が限界を迎え、ストレスと化する。

 ガス抜きにとレイドへ更なる対話を求めるが――、

 

「ほらぁ、遠慮せずにもうあらいざけ喋っちまえよ。 俺たちの中だろ?」


「……………………一か月程度の付き合いだが」


「そういうこと言われると俺の豆腐メンタルが傷ついちゃうぞ! だが安心しろ。 太●の達人ならぬナンパの達人な俺は知り合って三秒の相手を親友と呼称する野郎だ。 一か月も付き合いがあれば十分だぜ!」


「……………………下らん」


 このように、結果はあまり芳しくはない。

 そもそもレイドは敬愛し、忠誠を誓う主ヴィルストにさえも本心を語らないのだ。

 ただ単に与えらえた命令に忠実に従う機械仕掛けの人形のようなモノ。

 ちょっとシンパシーを感じないまでもない。


 さて、そろそろ少しは建設的な話をするか。


「質問なのだが、後どんくらいで着きそう?」


「……………………既に三十キロは疾走した。 俺の方向感覚が正しければ、このまま進めば後数十分で防壁に到着するだろう」


「ご報告ありがとー。 感謝感謝」


「――――」


 レイドは基本的に理にかなっていない言葉にはまったく答えるようなことはないが、逆説的にいえば建設的な話ならばちゃんと応答もする。

 だがそれだと面白味がないわけで。

 必然、暇になる。


 ――――。


「――なぁレイド。 お前は姫さん……シルファーの状態を知ってるか?」


「……………………主は悲しんでおられた」


「だろうな。 あの娘に溺愛するおっさんなら当然だろ。 俺が聞きたいのはさぁ、一体全体どうやったらその状態異常が解除されるかだ。 仮にも騎士団最強のお前だ。 何かしらの情報は知っているのだろう」


「――――」


 即断即決が信条のレイドにしては珍しく一瞬目を泳がせると、いつのも無表情にどこか沈痛な響きを混ぜ、告げる。


「――知らない」


「―――――」
















「……………………そもそも、記憶喪失なんていう状況自体がレアケース中のレアケース。 故に対策もなければ治癒方法も研究されていないし、存在もしない」


「――。 そうか」


「……………………随分と、沈痛そうな顔をするようになったな」


「そんなに俺が姫さんの身を案じるのが不思議か?」


 自分で思っていたよりも声は刺々しく、どこか敵意が見え隠れていた。

 その反応に何故か少し嬉しそうな顔をするレイドは、淡々と告げる。


「……………………あぁ」


「――――」


「……………………一か月前。 お前が初めて我が主の屋敷に辿り着いた時のことを、覚えているだろうか」


「――。 もちろん、覚えているさ」


 思えば、あれが俺とレイドの初対面だったな。

 今でこそ慣れたが防犯対策のためか屋敷は複雑奇怪な地形をしており、許されたモノでしたその部屋に辿り着けない仕様となっている。

 そこで途方にくれた俺を姫さんの部屋に案内したのが何を隠そうこのレイドだ。


 それから色々と交流もあったが、レイドの印象は依然として「真面目そう」どまりである。


「……………………あの時お前は、姫君のことをモルモットとしか見ていなかった」


「――。 何故」


「……………………目を見れば、分かる。 何の策謀に姫君を利用するかは知らん。 だがお前は姫君を見ているようで見ていなかった」


「――認めるさ。 俺にとっちゃあ姫さんはその程度」


「――――」


「軽蔑する?」


 皮肉そうな笑みを浮かべ、そう問う俺。

 レイドはどこか複雑そうな眼差しで俺を見詰める。


「――確かに、お前がお前のままだったら侮蔑していた」


「――。 どういう意味だ?」


 それではまるで、今は違うとでも言っているようなものじゃないか。

 胡乱気な眼差しをレイドへ向けると、レイドは真摯に答える。


「……………………人は、変わっていく。 誰しも、俺も、お前も。 お前は当初こそ姫君をモルモットとしか見ていなかったが、いつのまにかそれも変わっていって。 今では、ちゃんと見ているではないか」


「――――」


「……………………姫君を、姫君として見ているのならば俺に文句もないし軽蔑もしない。 それが騎士としての当然の姿勢だ」


「――そうか」


 

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